2012年10月に創立50周年を迎える竜の子プロダクション(以下タツノコプロ)は、50周年記念作品としてオリジナルビデオアニメ(OVA)『一発必中!! デバンダー』を制作。その注目作が、全国のケーブルTVやスカパー!などで視聴可能なCS放送局「キッズステーション」にて9月に放送される。

タツノコプロ50周年記念作品『一発必中!! デバンダー』は、キッズステーションにて9月放送予定

タツノコプロ往年の作品世界観として親しまれた「正義の主人公と悪の敵役との対決」をメインに、『ヤッターマン』などでお馴染みのコミカルなギャグメカと、CGを駆使した敵側ロボットの対決が描かれる『一発必中!! デバンダー』は、創業期からタツノコプロを支え育ててきた笹川ひろし氏と、『科学忍者隊ガッチャマン』や『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』などのメカデザインを手掛けてきた大河原邦男氏がタッグを組んだ期待作となっている。

『一発必中!! デバンダー』の監督を務めた笹川ひろし氏(左)とメカデザインを手掛けた大河原邦男氏(右)

そこで今回は、笹川氏と大河原氏が語った『一発必中!! デバンダー』およびタツノコプロの50年を紹介しよう。

笹川ひろし氏と大河原邦男氏が語る『一発必中!! デバンダー』

――今回、50周年記念企画として『一発必中!! デバンダー』を制作するにいたった経緯を教えてください

笹川ひろし氏「50周年というのは、まあ自然に来るものなんですけど、せっかくだから何か記念になる作品を作ろうということになりまして。それならば、これまで数々のタツノコ作品を支えてくれた大河原さんなどのお力を借りて、タツノコらしい、ギャグや持ち味を活かした作品を作ろうというのが発端になっています」

――ヒーロー物というのは最初から構想にあったのですか?

笹川氏「最初の段階だとかなり漠然とした感じでしたが、やはりヒーローが出てくる作品のほうが、当たり前ですけど楽しいだろうと。そういうことを詰めていった結果が『一発必中!! デバンダー』なんですよ。ただ、私自身としては、その過程でキャラクターをまず考えなければいけない。そんな時に、ものすごく大きな角を持った牛を見掛け、調べてみたら本当にいた。身体は普通なんだけど、角だけがものすごく大きい。あ、これはキャラクターになるんじゃないかと」

――それが"キングブル"になったわけですね

笹川氏「最初は顔まで牛にするつもりではなかったんですよ。角だけいただいて、顔は普通の悪人。でも、いつの間にか顔まで牛になっちゃって(笑)。牛は何も悪いことをしていないのに、敵方にしてしまうのは……と思ったんですけど、まあ牛になっちゃったので、相手のヒーローは牧場の少年なんかがいいんじゃないかなって。そのほうが自然でしょ? で、牧場なら馬がいるだろうし、だったら子どもにも人気があるポニーを出そうと。そういう考えをまとめていった結果、主人公は牧場の少年で、妹がいて、愛馬としてポニー。お父さん、お母さんは出てきていませんが、それで大体の敵と味方がそろったわけです」

――ヒーローである主人公よりも敵方のキャラのほうが先に生まれたわけですね

笹川氏「最初に角を見たときにすごいインパクトを感じたので、そこがスタートとなって、そこからいろいろなキャラクターが生まれていった感じです。作り手というものは、何かに寄りかからないと発想が広がっていかないものなんですよ。それで大河原さんにお願いするときには、まず敵の宇宙人が、ものすごく巨大な軍艦のような宇宙船で地球を攻めてきたということにして、とにかくこれまでに見たことがないような宇宙船を描いてください、と」

――それはまたすごいオファーですね

大河原邦男氏「本当ですよ(笑)」

笹川氏「その大きな宇宙船が分離して、一部分が富士山の火口にかぶさってエネルギーを吸い出すんですけど、このあたりは子どもさんが観てもわかりやすいように単純にいこうと。それで、エネルギーを吸い取られた地球はスポンジみたいに縮んでしまうんですけど、まあできるだけ単純でわかりやすくしようという感じで、いろいろな設定を詰めていきました。とにかく初めての世界を描くわけですから、なるべく皆さんが観たことのない世界にしようと思ったんですけど、これが本当に難しくて(笑)」

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