8月18日、土曜日。ディファ有明が熱く燃え上がった。ニコニコ動画「踊ってみた」の祭典「ニコニコダンスマスター4」(以下、ダンマス4)が開催されたのだ。集まったのは、普段ニコニコ動画に動画を投稿している"踊り手"たち153名と、彼らのダンスパフォーマンスを見るために駆けつけた1,700名近くのニコ動ユーザーである。イベントはニコニコ生放送で中継され、視聴者は実に15万人を超えた。

会場となったディファ有明は2,000人近くを収容する大型多目的スペース。「ニコニコダンスマスター2」もここで開催された

同イベントは2010年から開催されており、今回が4回目。出演者は商業系のステージで活躍するプロから、つい最近独学で踊り始めたというド素人までさまざまであり、会社員や小学生など属性もバラバラ。この混沌とした雰囲気が、実にニコニコ動画らしいといえる。 なぜ今、ダンスというジャンルが脚光を浴びているのか。本イベントをレポートしつつ、「踊ってみた」ムーブメントの現状に迫ってみたい。

MCを務めたのは「恭一郎」「秀作(爆笑コメディアンズ)」「ふでぱ」の3人。「秀作」は芸人だが、あとの2人はニコニコ動画ユーザーだ。「ふでぱ」はダンサーとしても参加

スーツに革靴で華麗に舞う「リーマンブラザーズ」

中学生と小学生のコンビ「りりりとあおい」。動画が投稿されるたびに成長する二人を見ていると、気分はまるで親戚のおじさんのよう

思わず二度見してしまう出で立ちの「zombies」

「踊ってみた」の歴史は古く、ニコニコ動画が本格オープンした2007年3月にさかのぼる。当時、再生数1位を誇っていた人気動画「レッツゴー! 陰陽師」のPVを再現した動画「陰陽師を踊ってる人」がニコ麻呂氏によって投稿され、大きな反響を呼んだ。ここから「踊ってみた」というジャンルが生まれ、ダンス動画が次々に投稿されるようになる。

アニメソングや東方Project、ボーカロイドといった幅広いジャンルの楽曲がニコニコ動画に多数投稿されていたことも、ムーブメントを後押しした。重要なのはダンスがうまいか下手かではなく、視聴者を楽しませられるかどうか。アイドル的な可愛らしさも、プロ顔負けの技巧も、奇抜な衣装やネタに走った面白さも、楽しめるなら何でもあり。ニコニコ動画ユーザーの柔軟な姿勢が、動画投稿に対するハードルを下げた。

振り付けさえ覚えれば誰でも参加できる。その気軽さが「踊ってみた」ブームの最大の理由だ

本格派ダンスチーム「4U」の息のあったコンビネーションに歓声が上がる

「ダンマス4」は、そうした「踊ってみた」を現実世界に再現したイベントだ。バラエティに富んだ出演者の顔ぶれは、そのままニコニコ動画における「踊ってみた」の多様性を表している。

けいたん(上)はダンスチーム「R.A.B」の一員としても活躍するダンサー。暴徒は「踊ってみた」以外にも「歌ってみた」や「ゲーム実況プレイ」ジャンルでも動画を投稿するマルチプレーヤー

「光速猫仮面(仮面ライアー217、さっちゃそ、のら)」は普段から本格派ダンサーとして高い人気を得ている

実力派ダンスチームの「にゃんたろProject」と「Team Black Starz」がコラボレーション。サングラスをしていないTeam Black Starzは新鮮だ

初登場ながら堂々としたステージで観客を魅了した「monio」

中でも普段からダンサーとして活躍している「PCF(けいたん、暴徒)」「光速猫仮面(仮面ライアー217、さっちゃそ、のら)」「にゃんたろProject+Team Black Starz」ら本格派ダンスユニットによるパフォーマンスは、まさに圧巻の一言。おそらく彼らのダンスには高度な技術が散りばめられており、そうした知識があればさらに面白く見られるのだろうとも思うが、そうでなくても十分にショウとして楽しめる。この一体感は、楽曲に対する知識を観客が共有しているからこそ生まれるのだ。

インパクト抜群のダンスユニット「METABOROID」

一方で、ニコニコ動画らしいインパクトのあるパフォーマンスも行われ、大歓声を浴びていた。太った男性の踊り手ばかりを集めた「METABOROID」は、人気アニメソング「マジLOVE1000%」を体を揺らしながら全力でダンス。元ネタとのギャップで会場とニコニコ生放送視聴者を爆笑の渦に巻き込んでいた。……続きを読む