「ザリガニヘドロ団+愛知エンターティナーズ」は、2001年頃にテレビ番組『笑う犬の冒険』のコントから生まれた「はっぱ隊」の「YATTA!」を12名で再現した。なぜ今「YATTA!」なのかというと、ニコニコ動画では過去に「YATTA!」が流行したことがあるから。つまり「YATTA!」もニコニコ動画ユーザーにとっては共有知識なのだ。それにしたって「YATTA!」はダンスなのか? という疑問を持つ人もいるかもしれないが、ニコニコ動画では本格的なダンスだけが「踊ってみた」ではない。曲に合わせて体を動かし、見る人を楽しませることができたなら、それはもう立派な「踊ってみた」なのである。このジャンルとしての懐の広さが、「踊ってみた」がここまで拡大した最大の理由だろう。
カルチャーが成熟すると、そこにはコミュニティが生まれ、"人気者"が登場する。「踊ってみた」カテゴリにおいてもそれは例外ではなく、一人で何十万、何百万再生を叩きだす人気ダンサーが何人も存在する。
単に客を呼ぶだけなら、ダンマスの出演者はそうした人気者でそろえてしまえばいい。しかし、ドワンゴはあえてその方向に進まず、「ダンマス3」から新人発掘の方向へと舵を切った。「ダンマス4」でもそれは変わらず、動画でエントリーを募る「ダンマスご新規枠」を設けている。「ダンマス」というイベントを単なる人気者のライブイベントにするのではなく、ユーザーとの距離を縮めることで「踊ってみた」カルチャーそのものを盛り上げる意図があるのだろう。
事実、会場から帰宅する観客の中には「次は自分があのステージに立つ!」と友人に向けて宣言していた人もいた。また、今回「ダンマス4」のステージに立った人の中には、前回の「ダンマス」で客席にいたという人もいた。
有名でなくても、途方もない再生数を持たなくても、動画を投稿して見る人を楽しませることができればステージに立つ側になれる――「見る側」と「見られる側」の距離感の近さが、「ダンマス」というイベントを、ひいては「踊ってみた」カルチャー全体を支えているのだ。
人気ダンスユニット「DANCEROID」の「愛川こずえ」は8月いっぱいで卒業。今後はソロでの活動を行っていく |
ダンマスで見る「DANCEROID」のステージはこれがラスト。「愛川こずえ」はアンコールで、長く一緒に活動してきた「DANCEROID」オリジナルメンバー「いとくとら」と一緒に「トゥインクル×トゥインクル」を踊った |
今回の「ダンマス4」でも数々の新人が発掘され、注目を集めていた。彼らの中から「踊ってみた」の次のスターが何人も登場することだろう。成熟しつつある「踊ってみた」ブームが今後どのような展開を見せるのか、次回「ニコニコダンスマスター5」にも期待したい。
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