――『フレンズ もののけ島のナキ』は、山崎貴監督と八木監督の共同監督になっていますが、今作で共同監督という形をとった理由を教えてください

八木監督「まず、この作品の企画を最初に立てたのは山崎で、最初は山崎がロングプロットを作って、脚本を作ってというのを3年ぐらいやっていたんですよ。ただ、山崎は実写の作品を定期的に作っているので、なかなかこちらの作品に本腰を入れられない。アニメを作るとなると、短くても1年から2年、できれば3年以上は欲しいわけで、実際、今回の作品も3年半掛かりましたが(笑)、とにかく、それだけの長い時間、『フレンズ~』のことだけを考えられる人が必要だったんですよ。それで僕に声が掛かって、一緒に作ることになりました」

――そういう意味で、CG監督やアニメーション監督という立場ではなく、共同監督として同じポジショニングになっているわけですね

八木監督「監督としての経験は山崎のほうが10年先輩になりますけど(笑)、同じポジションでやらせてもらいました」

――八木監督としては、本作が初監督作品となるわけですが、監督として誘われたときの感想などはいかがでしたか?

八木監督「山崎に『やる?』って聞かれて、『やるやる』みたいな(笑)。わりと気軽な感じでしたね。とにかく面白そうだったんですよ。最初にロングプロットを見せてもらったときから、作品の最初から最後までずっと関わりたいと思いました」

――監督をしたいという気持ちはずっとあったわけですよね

八木監督「僕が監督を志したのは遅かったんですが、白組で仕事をこなしてきて、だんだんとやりたくなったんです」

――監督という立場を経験してみてわかった苦労はありますか?

八木監督「たとえば、若い頃はCGを作るにしても担当するのは1カットだけだったりするわけですが、経験を積むことによって、1シーンを担当したり、CG部分を全部担当したり、という感じで、少しずつ自分が好きにできる部分が増えてくるわけです。それが監督になると、好きにして良いところだらけで(笑)。本当に楽しかったです」

――苦労よりも楽しい部分のほうが大きかったですか?

八木監督「もちろん、大変な仕事ではあるんですよ。やらなければならないこと、決めなければならないことが本当にたくさんあって、それをどうするか、誰にお願いするか、などいろいろと考えなければならない。結局、映画を作るためにはたくさんの人の力を借りなければならない。みんなの力で1本の作品が出来上がるわけですよ。その過程をずっと見ていられるだけでも面白いのに、その方向性を自分の好きな方に向けて、どんどんと進めることができる。どんなに万人向けといったところで、好みの方向というのは出てくるもの、1カット1カット、アニメーターさんと直接やりとりをしながら作り上げていくのは、本当に楽しかったです。病み付きになりますね(笑)」

――アニメにCGを取り入れる作業はかなり進んでいますが、キャラクターを3DCGで作るアニメは、日本だとまだまだ少数派ですよね

八木監督「CGアニメは、とにかくお金が掛かる。それはなぜかというと、人手が必要になるからなのですが、海外だと300人ぐらいで作ったりしているわけですよ。でも日本だと、そんな人数を使うこともできないし、そもそもそんな大人数の使い方もわからない。といったところから、いかに少ない人数で、コストを削減しつつ、海外の作品に見劣りしない、できれば同等に肩を並べられる作品を作れるか? そこが大きな問題ですね」

――コストの問題は大きいですよね

八木監督「良いものをいかに安く作るか? このあたりは料理と同じで、すごく豪華な、美味しい料理を、高級な素材で提供できるのが一番なんですけど、日本で作る以上、それはやはりムリなんですよ。だったら、安い食材でもこれだけ美味しいものが作れるということを示さなければならない。結局、お客さんの心を動かすことが一番大事なことなので、そこに最大限の力を注いだ感じです」

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