KDDIは4月5日、au携帯電話でのデータ通信時の効率を向上させる新技術「EV-DO Advanced」を導入すると発表した。4月10日から導入を開始し、6月末までに全国で利用可能にする。ユーザー側の設定変更などは不要で、既存端末にも同技術が適用される。KDDIでは、EV-DO Advancedに加え、無線LANの普及も加速させ、より快適なデータ通信を実現していきたい考えだ。

混雑を避けて基地局を選択、実効速度が2倍に

EV-DO Advancedは、au携帯電話が使うCDMA方式の技術で、基地局の混雑緩和のために開発された。携帯電話のデータ通信では、駅や商業施設など、人の多い場所をカバーする基地局に集中し、基地局容量が足りなくなって通信速度が遅くなったり通信ができなくなったりする。通常、携帯電話は最も電波の強い基地局に接続するため、人が多いとそれだけ多くの利用者が基地局に集中する。

EV-DO Advancedの仕組み

これに対してEV-DO Advancedでは、端末が基地局に接続しようと問い合わせを行った段階で、基地局側が混雑具合に応じて近隣の別の基地局に接続するよう指令を出す。特に都心部では、複数の基地局がカバーするエリアが重なり合うように設置されているため、そうした別の基地局に問題なく接続ができる。この結果、混雑した基地局ではなく、すいている基地局を利用できるため、効率よく通信が行えるようになる。収容可能なデータトラフィックは約1.5倍になり、実効速度も平均2倍に向上する、という。重なり合う基地局全てが混雑するような場合はその限りではないが、通常はピンポイントの基地局が混雑するため、そうした場合は効果が大きく、混雑して通信がしにくいような場所で快適な通信が行えるようになる、とされている。

最大のメリットは基地局側の改修だけで対応ができる点で、既存のCDMA 1X WIN対応携帯電話(フィーチャーフォン)、iPhone、Android、Windows Phoneという同社のスマートフォン全てが自動的に恩恵を受けられる。CDMA 1Xエリアを除く全国エリアで6月末までに対応が行われる。

つながりやすい無線LANスポット

KDDIでは、EV-DO Advancedだけでなく、「つながりやすさ」を目指してさまざまな工夫を盛り込んでいる。その1つが無線LANによるトラフィックのオフロードで、家庭向けには無線LANルーターの「HOME SPOT CUBE」をデータ定額契約者には無料配布。すでに「予想通り」(コンシューマ事業企画本部Wi-Fi推進室担当部長 大内良久氏)という35万台を配布しているそうだ。

HOME SPOT CUBE

こちらはauひかりユーザーに配布されるルーター。新機種では、らくらく無線LANスタートボタンを押すことで、au Wi-Fi接続ツールでの接続に対応する

その結果、日中の家庭からの携帯のトラフィックが40%削減でき、無線LANによって固定回線にオフロードできたそうだ。23時台の方が家庭にいる人が多く、通信頻度が高いため、40%以上のオフロード効果があるとみている。

駅や喫茶店など、人が集まる場所での公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」も拡大しており、3月29日時点で10万スポットを突破。海外でも100以上の国と地域で利用可能になっている。HOME SPOT CUBEとau Wi-Fi SPOTの組み合わせで、コンビニや駅、学校・オフィス、飲食店、ショッピング施設、娯楽施設など、「利便性の高い生活動線」(大内氏)を中心に展開を進め、今後もさらにスポットの拡大を続けていく考えだ。

店舗などに設置されるau Wi-Fiの基地局

生活動線上の利便性向上のためにエリアを拡大している

エリアの拡大に加えてつながりやすさも追求しており、4点の対策によって無線LANの品質向上を図っているという。

1つ目は使用する周波数帯で、一般的な公衆無線LANで使われる2.4GHz帯だけでなく、5GHz帯にも対応する。2.4GHz帯は、無線LANだけでなく、電子レンジ、Bluetooth、自動ドア、監視カメラなど、さまざまな無線機器で利用される帯域で、以前から干渉が問題視されてきた。

無線LANスポットの品質向上のための4つの取り組み

5GHz帯の対応によって2種類の帯域が利用でき、干渉も減り、効率が上がる