最近、とても人気を集めている金融商品があります。それは「個人向け復興国債」。いったいどんなものなのでしょうか。

資金の使いみちを震災復興に限定

広い範囲に甚大な被害をもたらした東日本大震災。復興のためには多額の費用がかかります。その財源の一部に充てるために、国が発行する個人向けの国債が、「個人向け復興国債」です。

といっても、中身はこれまで発行されてきた個人向け国債とまったく同じです。違うのは、それによって調達した資金の使いみちが、震災からの復興に限定されていることと、復興国債を買った人に、国への資金提供に対する感謝のしるしとして、財務大臣から感謝状が贈られるというおまけがついている点だけです。

つまり、「復興国債」というものが新しくできたのではなく、2012年以降に発行される個人向け国債を「個人向け復興国債」とする、ということなのです。

個人向け復興国債としての1回目となった1月発行分は、前年の12月に購入の募集が行われ、7,454億円の申し込みがありました。これは、その前の回の応募額の約2倍です。やはり、何らかの形で復興に力を貸したいという人が多いことがうかがえます。

個人向け国債とはどんなもの?

国債は、いってみれば「国の借用証」。国債を買うということは、「国にお金を貸す」ということです。国債の発行日から、貸したお金が返ってくる日(償還日)までの期間は決まっていて、それまでの間は発行の時に決められた金利に基づいて半年に1度、利子が支払われます。

国債にはいくつかの種類があります。そのうち、個人向けに額面価格(売買単位)を1万円にしたのが個人向け国債で、償還までの期間によって3タイプあります。いずれも発行から一定期間たったら中途換金ができ、その場合は買った価格で国が買い取ってくれるという仕組みです(ただし、直前2回または4回分の利子相当額が差し引かれます)。取り扱っているのは、銀行や証券会社です。

金貨つきの「応援国債」も

2012年3月からは、「復興応援国債」という新しい個人向け国債も発行されることになりました。これは、期間10年の個人向け国債をベースにしていて、当初3年間は金利を低く固定する代わりに、3年間換金せずに保有していたら、保有残高に応じて「東日本大震災復興事業記念貨幣」というコインがもらえるというものです。

記念コインをもらうには、1,000万円または100万円分、国債を買わなければならないので、かなりハードルは高いのですが、もし買えるとしたら、復興国債と復興応援国債のどちらがおトクでしょうか。金利も金の価格も3年間変わらないとしてシミュレーションしてみましょう。

記念金貨の額面は1万円、銀貨は1,000円ですが、それぞれに含まれる純金と純銀の価格を今の取引相場でみると、金はおよそ6万5,000円、銀はおよそ2,500円になります。一方、3年間で受け取れる復興国債と復興応援国債の利子の差額は、国債を1,000万円買った場合で20万1,000円、100万円だと2万100円(いずれも税引き前)。ですから、記念コインをもらっても、利子の少ない分を埋め合わせることはできないという計算になります。

記念コインが人気化して高値で売れる可能性もないとはいえませんが、復興応援国債は、利子分を復興のために寄付するという気持ちで買うものといえそうです。

(2012年1月19日現在で公表されているデータをもとにしています)

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。