冬ですね。冬といえば……そう、恋の季節ですよね!

……5年前の僕だったら「恋の季節」なんて単語を目にしようものなら「いやそんなの自分に関係ねぇし!」と思わず壁を殴ったかもしれませんが、最近はまるで悟りを開いた後のブッダのような澄み切った瞳で街行くカップルを応援できるようになりました。歳を取るってすごいなぁ。

それはともかく、冬はクリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーなど、恋愛関係のイベントが目白押し! ということで今回は、そんな季節にこそ読みたいホットな恋愛漫画を、電子貸本サイト「Renta!」から厳選してご紹介していこうと思います。

ささめきこと

『ささめきこと』(メディアファクトリー刊)

"女の子に恋する女の子たち"の悩みや友情、切ない恋心を描いた「ガールズラブ」コミック。片思いの甘酸っぱい気持ちが繊細に描かれており、老若男女問わず自信を持ってオススメできる作品です。

女子高生の村雨純夏は、友人の同級生・風間汐に片思い中。でもその気持ちは封印したまま、親友として汐との関係を保っています。一方の汐もまた、女の子のことが好きな女の子。でも純夏の気持ちにはまったく気づいておらず、頼れる親友として恋愛相談なんかをしてしまうわけです。

この純夏と汐の関係がもう、たまらなく切なくて、胸を締め付けられるのです。恋人にはなれないから、親友でいる。でも親友はやはり親友であって、恋人ではない。今の関係を壊したくないから、気持ちを伝えることもできない――そんな純夏の姿に、誰しも青春時代を思い出して共感できるはずです。

本作はまた、セリフや表情の一つひとつがどれもものすごくグッとくるものばかり。たとえば第一話で好きな先輩に振られた汐が純夏に「ずっと友達でいてね?」と問いかけ、これに純夏が「……うん」と答えるシーン。また、それに続けて汐が「誰か私の好きになった人が私を好きになってくれればいいだけなのになあ」とつぶやき、それに純夏が心の中で「痛いよ風間」と重ねるシーン。10代の少女の繊細な心情を見事に描き出した台詞回しはもちろん、コマ割り、間の取り方など非常に丁寧に作り込まれており、この場面を見るだけでも作者の力量をうかがい知ることができます。

ここまで書いた感じだと、いったいどんだけ切ない話なんだ! と思われそうですが、基本的にはライトなノリの学園ラブコメディ。ギャグ成分も多めで、主要な登場人物も男の娘あり、百合カップルありとバラエティに富んでいて飽きさせません。

ガールズラブというちょっと変わったジャンルの恋愛漫画ですが、内容は驚くほど正統派。片思いの切なさと甘酸っぱさをもう一度思い出したい大人の方に、特にお薦めです。

煩悩寺

『煩悩寺』(メディアファクトリー刊)

彼氏と別れたばかりのOL・小沢さんと、普通じゃない部屋に住む普通の青年・小山田くん。そんな二人の、ほのぼのした交流と恋愛を描いた心温まるラブストーリー。

ある日、飲んだ帰りの小沢さんがトイレを借りに同じマンションの小山田くんの部屋を訪れたところから物語はスタートします。同棲していた彼氏が出て行ったせいでがらんとしてしまった小沢さんの部屋と対照的に、小山田くんの部屋は「煩悩の限りを尽くす」という兄から送られてくる物であふれた、統一感のカケラもないカオスな空間。「煩悩寺」と名付けられたその部屋になぜか癒された小沢さんは、暇があると小山田くんの元へ通うようになるのでした――。

とにかく登場人物が皆それぞれに魅力的! 内気で恋愛にオクテな小山田くんと、対照的にバリバリ仕事をこなすOLの小沢さんは見ていてほのぼのできるナイスコンビだし、それにたまに出てくる小山田くんの親友・島本もノリは軽いけど気配りのできる良いやつなんです。

そんな魅力的なキャラクターたちがちょっとした日常のドラマを展開する部屋「煩悩寺」がまた何とも言えない味があって、なるほど小沢さんが癒されるのもわかるわ~と納得。小沢さんにとって煩悩寺は、行きつけのバーみたいな存在といえるのかもしれません。また、たまにポンと出てくるアイテムもフラワーロックとかアイスクリームの形をしたオモチャ(名前がわからない)とか、昭和スメル漂う懐かしい物ばかりで懐かしい! ほのぼのとした癒しのラブストーリー、派手さはないけどじわっとしみこんでくる良作です。

むすんでひらいて

『むすんでひらいて』(マックガーデン刊)

オムニバス漫画が好きです。特に恋愛漫画のオムニバスは、一つの作品のドキドキが次の作品へとうまく引き継がれていく感じが大好きです。

「むすんでひらいて」は、高校1年生の古屋広呂と学校一の美人の先輩・朝木日摩裏の甘酸っぱいショートラブストーリーからスタートして、二人の周囲の友人、家族へと次々にバトンタッチしていく恋愛オムニバス。1、2話で完結するエピソードが多く、テンポよく読み進めることができます。たまに過去の主人公のその後が垣間見えるのもオムニバスならではの嬉しい読者サービス。脇役が主人公に、主人公が脇役に、めまぐるしく切り替わりながら思春期の恋愛という大きなテーマを描いていく力作です。

特にオススメなのは2巻の雨宮ありすのエピソード。お金持ちで根暗でプライドが高くてオカルト好きという超個性的な性格は、それまでの主人公よりもはるかにぶっ飛んでおり、そんな彼女がいったいどんなラブストーリーを展開するのかお楽しみに! 回を重ねるごとに物語が厚みを増していくタイプの作品なので、続刊にも期待大ですね。