富士通は13日、個人向けPC夏モデルの発表会を開催した。利用スタイルに合わせてタッチ操作とキーボード入力を切り替えられる「ハイブリッドモーション」を実現した「LIFEBOOK TH」シリーズが新たに投入されたほか、社会的要請となっている節電への対応も紹介。また、テレビ機能やスマートフォン連携機能のデモも注目を集めていた。

新ラインナップの「LIFEBOOK TH」

2010年度出荷は前年度を下回るも、この4月は好調

執行役員常務の大谷信雄氏

富士通では東日本大震災の発生から記者会見などを自粛してきたが、この発表会の前日から再開に踏み切ったという。冒頭、挨拶に立った執行役員常務の大谷信雄氏はこの点について、「復旧から復興へということで、企業が元気にならなきゃいけない。ビジネスを活性化していこうということ」と、その理由を説明した。同社ではデスクトップPCを福島県伊達市の工場で生産しており、震災直後は生産がストップしたが、急遽島根県のノートPC生産工場での生産を行い、顧客への影響を最小限にとどめることができたという。その後3月28日には福島の工場も復旧し、現在は通常通り生産を行っている。

2010年度のPC市場状況については、前年比96%の542万台(海外への出荷含む)。震災の影響もあって前年を若干下回ったものの、4月は前年比107%と好調で、「市況全体は明るい兆しがある」と語った。

本日発表の新製品については、「スマートフォンが成長する中、PCは今後どういうことをやっていくか」という方向性を示すものだという。そのポイントとしてはスマートフォンとの連携強化、スレート型の操作性とキーボードの使いやすさの両立、7月に控えたアナログ停波へ向けてのテレビ代替、電力の問題への対処を挙げた。

最後に大谷氏は、同社がPCと携帯電話を"ユビキタスビジネスグループ"という1つのグループで展開していることに言及。「今、日本の企業で携帯電話とPCを1つのグループでやっている企業はほとんどなくなった。我々は、携帯電話とPCは融合されていくと考えている。今後も、1つのグループで両者を手がけている強みを活かし、さらによいサービスを提供していきたい」と語った。

新商品のポイントは「快適、便利」「地デジ」「節電」

執行役員兼パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏

商品の紹介を行ったのは執行役員兼パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏。同氏はまず、富士通がこれまでにも掲げてきたキーワードである「ライフパートナー」というコンセプトを紹介し、そのために重視する点として「Innovation(わくわく感のある商品)」「Human Centric(人にやさしい・役立つ)」「Reliability(安心・安全)」「Green(エコフレンドリー)」の4点を挙げた。そしてそれを受けた夏モデル新商品の3つのポイントとして、「快適、便利」「地デジ」「節電」を紹介した。

FMVで重視する4つのキーワードと、新商品の3つのポイント

「快適、便利」という点については、スマートフォンとの連携機能である「F-LINK」機能、リモコンなしの手のひらのジェスチャーだけでテレビ操作が可能な「ジェスチャーコントロール機能」を紹介。また、新シリーズのスレートPC「LIFEBOOK TH」の"ハイブリッドモーション"によるタッチ操作と文字入力の両立も、快適さ・便利さを高めるものだという。加えて電子書籍サービスの「BooksV」についても、「読みたい本が簡単に見つかる、豊富なコンテンツから選べる」という点から快適・便利を実現するものであるとした。

「快適、便利」を実現するものとして、スマートフォントの連携、ジェスチャー操作、新製品「LIFEBOOK TH」などを紹介

続くキーワードの「地デジ」については、今回のキャッチフレーズは"今度のFMVは見逃さない"だという。これを実現するのは、人感センサーでユーザーが離席したら再生を停止し、席に戻ると再生を再開する「おまかせポーズ機能」。この機能は動画やDVDなどの再生一時停止ができるだけでなく、テレビ視聴中に離席すれば自動的にタイムシフト再生に移行するため、テレビ番組をも見逃さないというもの。このほかのポイントとしては、10倍ダブル録画による長時間録画、パソコン×テレビ×レコーダーのどの機能もハイレベルな新型「ESPRIMO FH」、ワイヤレスTV機能などを紹介した。

地デジ機能のキャッチフレーズは、"今度のFMVは見逃さない"。加えて、画質や機能の充実ぶりも魅力

そして最後のキーワードである「節電」。これについては、「この夏は、『節電』というのが本当に大きなキーワードになる。社会貢献という意味でも、富士通はこの節電に全力で貢献したい」と言い、その具体的な取り組みとしてFMVが持つさまざまな節電機能を紹介した。

夏の昼間のピーク時間の電力消費を抑えるピークシフトについては、ピークシフト機能を実現するソフトの配布を行うという。また、最新のPCは6年前のPCと比較すると約81%もの電力削減を達成しているというデータも紹介し、買い替えそのものに大きな節電効果があるとした。今回の新製品が搭載している機能としては、非使用時の電力消費を抑制する「ECO SLEEP」機能とゼロワットアダプタ、電力供給をコントロールできる省電力ユーティリティやECOボタンなどを挙げた。

節電については、今回搭載された新機能もさることながら、これまでの取り組みで数年前にくらべてすでに大きな省電力化を達成していることが見逃せない

最後に齋藤氏は、「今回の夏モデルは、かなり特徴のある製品が多くて、紹介しきれない。ぜひ会場内の展示を見ていってほしい」としめくくった。

CMキャラクターは、引き続き唐沢寿明さんと柴咲コウさん。会場では新CMや撮影風景、メッセージ映像などが流された

「きちんとパソコンを提供することが社会貢献にもなる」

質疑応答では、節電機能に関する質問が相次いだ。まず、これまでビジネス向け製品に搭載してきた節電機能を個人向け製品に搭載したことについては、「パソコンが広く普及しているので、その消費の10%でも削減すれば、ピーク時には大きく影響を与えると考えている。そのため、個人向けにも節電の高機能をインプリメントした」と答えた。また、先にマイクロソフトが公開した節電ツールについて問われた際には、「マイクロソフトさんのツールは、ジェネリックに、一般的にWindowsに乗っかるもの。私どものユーティリティは、富士通独自のI/Oや専用部分まできめ細かく制御できるもの。マイクロソフトのツールでカバーできない部分までコントロールできるのが富士通の省電力ユーティリティ」とその位置づけを説明した。

震災の販売への影響を問われると、「正直、わからない」としながらも、「震災後、緊急の出荷要請などもあり、PCは社会インフラのフロントエンドとして役立っていることをあらためて認識した。そういう意味では、われわれがきちんとパソコンを提供することが社会貢献にもなる」とした。

iPadなどとの操作感の比較について問われた際には、「マルチタスクOSであるぶん、動作の軽快さは損なわれる」と認めながら、「ただ、iPadが評価されているのは直感的なインタフェースで使い安いというところにあると認識しているので、OSが重い中で、どうやって使いやすくするかに注力した」と回答。そして「iPadが個人向けのタブレットとして、本当にベストの形なのかというところには疑問を持っているし、議論もしている。教育や販売の現場でもタブレットは使われるし、そういうところではWindowsベースのタブレットが必要。家の中ならばそれに適したものがあるだろう。シチュエーションによって、何が主力になるかは変わってくると思うので、いろいろな形でアプローチしていく」と語った。

「LIFEBOOK TH」やテレビ機能のデモに人気

展示会場のデモンストレーションでは、新シリーズの「LIFEBOOK TH」やジェスチャーコントロールのデモなどに注目が集まっていた。

「LIFEBOOK TH」のスレートPC状態。このときの厚さは17.4mm

これがキーボード使用時の状態

状態の移行中を真横から見るとこんな感じ

キーボードは87キー。キーピッチは約16.2mm、キーストロークは約1.4mm

ジェスチャーコントロール機能のデモ。上部のWebカメラで手の動きを読み取り、映像の停止・再生やチャンネル変更などの操作を行う

「LIFEBOOK AH52/DA」はワイヤレスTV機能を搭載。H.264の転送で高画質に楽しめるのがこの製品ならではのポイントだ

「F-LINK」機能を利用すれば、写真の転送などが簡単に行える。ただ現時点では、対応する端末が少ないのがネック。FMVの側は、この夏モデル新製品はすべて対応している

「LIFEBOOK SH」用の新オプション、モバイルプロジェクター。モバイル・マルチベイに収納可能で邪魔にならない。この写真では投影距離がそれほど長くないが、実際にはもっと遠い位置により大きく投影することも可能だ

■富士通 個人向けPC夏モデル(2011年5月13日発表)
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