主に広告業界で活躍する写真家 斎藤巧一郎氏。カメラ雑誌での執筆や専門学校講師なども務めている

神奈川県 パシフィコ横浜にて開催されたカメラと撮影機器のイベント『CP+』にて、写真家 斎藤巧一郎氏のセミナー「ストックフォト、写真コミュニティーで人気の作品とは?」が行われた。セミナーでは、ストックフォトの概念、いま売れている写真、写真の楽しみ方など、ストックフォトに関する様々な事柄が紹介された。

そもそも、ストックフォトとはなにか?

ストックフォトとは、撮影した写真の販売を代行してくれるサービスのこと。売り上げから一定の手数料が引かれるが、売れた分だけ撮影者の収益となる。元々は「レンタルポジ」と呼ばれ、約40年前から存在しているそうだ。現在は日本でも60社くらいのストックフォトサービスがあるとのこと。ストックフォトの世界市場は2,000億円規模で、日本はそのなかの200億円を占めているとのこと。斎藤氏は「僕の友人は香港が返還される直前に、香港の祭りの写真を20枚くらい撮影してきた。その写真は誰も撮っていなかったので、ストックフォトで販売したら合計1,200万円くらいになった」と成功者の例を挙げた。

このように、少ない枚数の写真が爆発的に売れるという例もあり、トレジャーハンターのような生活を送る人も登場したという。ヘリコプターをチャーターして、あまり人が行かないような場所を空撮し、その写真を販売すると、簡単に2,000万円も収益を上げられるようなケースもあったという。

しかし、時代は変わり、いまはストックフォトよりも敷居の低い「マイクロストックフォト」と呼ばれるサービスが登場し、近年人気を博している。

セミナーでは「ゲッティ イメージズ」も紹介された

ストックフォトとマイクロストックフォトの違いとは?

ストックフォトとマイクロストックフォトの最大の違いは「写真のサイズと価格」。ストックフォトの場合は35mmフィルムはほとんどなく、中盤以上の大きなフィルムを中心に販売されている。当然価格も高く、新聞の一面で使うと20~30万円かかる場合もあるという。しかしマイクロストックフォトはWebで使用されることが多いため、少し高性能なデジカメであれば誰でも撮影でき、価格も個人で買える値段に設定されている。ちなみに、日本の「PIXTA」の場合は価格も、525円(Sサイズ)から5,250円(XLサイズ)。仮にXLサイズと同等のフィルムをストックフォトから購入すると、2~3万円はかかるそうだ。

企業はストックフォト、個人はマイクロストックフォト

ストックフォトとマイクロストックフォトの価格がここまで開いていると、ストックフォトのユーザーが減ってしまうのではないだろうか。この疑問に対する斎藤氏の答えは「NO」だ。ストックフォトというのは、「写真と同時に安全な権利を買うこと」だと斎藤氏は語る。ストックフォトを扱う企業では、貸し出した写真の使用履歴をしっかり残しており、この写真が過去どのように使われたのかをいつでも確認できる。そのため、企業がパンフレットを作る際、その写真が過去に競合他社に使われたかどうかも確認可能なのだ。これ以外にも、ストックフォトには高い価格分の利点も多くあるため、企業はマイクロストックフォトよりもストックフォトサービスを好んで利用しているというのが現状だ。

ストックフォトが企業に好まれる理由。トラブルが起こると企業の信頼が落ちてしまうからだ

レポート後編では、ストッフォトで大切な権利に関する話や、良く売れるストックフォトについて紹介していきたい。