カシオでは昨今、プリンター「プリン写ル」やデジタルカメラ「EXILIM」などの製品分野で"アート機能"を強化している。カメラは写真家だけのものではないという持論を展開している私にとって、このクリエイター寄りの発想にはワクワクしてしまいます。カメラを"被写体をただ写すだけの道具"から、"創り出す道具"へ進化させたと言っても過言ではないでしょう。そんな意欲的なカシオが11日にオープンした、デジタル写真を"アート作品"に変換させるネットワークサービス「イメージング スクエア」をいち早く試してみました。

「HDRアート」機能を搭載し、"アート作品"をワンシャッターで作成できるハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR10」

イメージング スクエアは簡単に言うと、撮影した写真をサーバーにアップし、そこで写真を加工してから公開、必要に応じてTシャツやマグカップなどに展開できるバーチャルアトリエのような空間です。なお、今回は「EXILIM」シリーズの「EX-S10」と「EX-ZR10」で撮影した写真を利用しています。

まずアクセスするとホーム画面に入りますが、ここで最初に「画像アップロード」に移動します。ここでハードディスク上のユーザーデータを選択し、アップ処理をします。つまり写真素材以外にもビットマップ系のイラストなどを素材とすることも可能です。

なお、画像を選択しただけではアップロードされませんので、再確認後に「アップロード開始」ボタンをクリック。最大6,500×6,500ピクセル・1枚あたり10MBまでの画像をアップロードできます。

「画像アップロード」画面。ここではハードディスク上のデータを選択する

ハードディスク上の画像を選択した直後の状態。「アップロード開始」により選択した画像がアップされる

アップロードされた画像は適宜「マイアトリエ」にて確認することができます。アップロード後に削除も可能ですし、何度でも追加アップロードができるので気軽にアップロードするとよいでしょう。あとは様々な加工を行うだけです。

「イメージング スクエア」上にアップロードされた画像は「マイアトリエ」にて確認することができる

まず最初に「バーチャルペインター」のコーナーを試すことに。絵画変換プレビューリストから、「油彩」「重厚な油彩」「ゴシック油彩」「野獣派油彩」「水彩」「ガッシュ」「パステル」「色鉛筆」「淡彩点描」「シルクスクリーン」「ドローイング」「エアブラシ」の12のタッチを選ぶことができます。処理は完全オートなので撮影結果に依存しますが、思った以上に面白い効果を期待することができました。なお、デジタル画像処理でのツールの名称はアナログ画材を意識したモノではあっても同じものではありません。イメージ優先で類似したツールを色々と試してみることが大切です。

「バーチャルペインター」に用意した元画像

「バーチャルペインター」での処理結果(野獣系油彩)

次に「HDRアートクラフト」では、EX-ZR10の「HDRアート」機能と同様の加工が強弱調整が可能な状態で処理されます(HDRアートでは複数枚の画像を合成するのに対し、HDRアートクラフトでは1枚の画像から"HDRアート風"の作品を生み出します)。あまりコントラストが強くないフラットで様々な色が写り込んでいる写真ほど綺麗な結果をもたらしてくれます。元になる写真は必要に応じて三脚を使うなどして丁寧に撮影しておくと処理結果も満足のいくモノになります。

「HDRアートクラフト」に用意した元画像

「HDRアートクラフト」での処理結果

最後の「ダイナミックフォト」は輪郭部分をトレースして選択し自動的に切り抜き処理を行ってくれます。この時、細部は拡大処理にて対応すると良いでしょう。コツは、残したい部分と消し撮りたい部分の境界線をまたぐようにペンツールで描くことです。失敗したら「消す」や「一つ戻す」などで対処できますので思い切って処理することをお薦めします。

「ダイナミックフォト」に用意した元画像

「ダイナミックフォト」の処理結果。残したい部分と消し撮りたい部分の中間位置をペンツールで丁寧になぞっていくだけ。拡大処理も可能だ

処理後は任意の背景画像を指定することで合成が完了します。なお、処理結果のデフォルト画像サイズはVGA(640×480ピクセル)となりますが、元画像のサイズで処理することもできます。

「ダイナミックフォト」に用意した元画像

拡大処理と移動ツールで切り取りたい部分と残したい部分の境界線がわかるようにして処理をすると綺麗な結果を得ることができる

残したい部分ギリギリのところを指定すると処理結果が汚くなってしまう ※解説用のイメージで実際に透明設定ができるわけではない

境界線に乗るように描くと処理結果が綺麗になる ※解説用のイメージで実際に透明設定ができるわけではない

また、合成せずに「保存してマイアトリエに戻る」を実行すると切り取った背景部分を透明にしたPNGファイルとして保存されるので、ダウンロード後にPhotoshopなどで利用することが可能です。

切り抜き処理した画像のサイズ設定・合成処理の有無を指定する

どの加工処理も元画像を一切変更せずに複製を自動作成した状態で加工されますので、納得がいくまで何度でもチャレンジすることができます。例えば「HDRアートクラフト」は強弱調整で作成できる3パターン全てを試してみても良いかもしれません。なお、合成処理を行ったイメージは「マイアトリエ」の「ダイナミックフォト」で、合成処理を行わずに切り抜いただけのイメージは「DPキャラクター」にてそれぞれ確認することができます。

「DPキャラクター」にて切り抜き処理した画像を確認することができる

このようにしてイメージング スクエアで写真を加工した後は、作成した"アート作品"や無加工の写真を公開したり、他の人の作品を鑑賞してコメントを書くなど相互間のコミュニケーションが楽しめる「投稿ギャラリー」が用意されています。作った作品は観てもらわないと意味がありません。

投稿ギャラリー「全て」

投稿ギャラリー「絵画変換」

投稿ギャラリー「HDRアート」

投稿ギャラリー「ダイナミックフォト」

投稿ギャラリー「DPキャラクター」

さらに、キャンパスやグッズへのプリントサービス「撮ったアート工房」として、オンライン上で創った作品を実際のキャンパスにプリントできるほか、マグカップやTシャツなどにプリントしてオリジナルグッズを作成することができます。思い出の写真を"絵画風"にして飾ったり、オリジナルグッズをギフトとして活用するなど、撮影した後の写真の新しい楽しみ方を満喫できます。プロ級の作品にチャレンジするというよりも、携帯電話のデコメール的な感覚で楽しいイメージを作り出す新しいコミュニティーとして広がることで新しい写真文化が根付くのではないでしょうか。

今回「イメージング スクエア」で作成した"アート作品"