バンドは福岡、ボーカルは東京に──。ニコニコ動画が8日に開催した「ニコニコ大会議2010-2011全国ツアー ~ありがとう100万人~ in 福岡」で、新サービス『ニコ生セッション♪』を使った"音楽の遠隔セッション"が披露された。

「ニコニコ大会議 in 福岡」のひとコマ。Baguettes EnsembleとUmiNekoのセッションなのだが、ちょっと変わった仕組みが使われている

ニコニコ動画で多くの人によってカバーされる「優しい音色」(Dixie Flatline作、例1/例2)。この名曲を、Baguettes Ensembleが演奏し、UmiNekoが歌う。大会議に駆けつけたニコ動ユーザーたちがじっと聴き入っている。ただ、ステージ上にボーカルの姿はない。両者はネット経由でセッションしているのだ。福岡のライブハウス「DRUM LOGOS」からの演奏に合わせ、東京にいるUmiNekoがボーカルを乗せる。ネット経由だからといって、音がずれるような違和感はない。曲が終わると、演奏者本人たちもネットセッションの出来に驚きを見せた。

この遠隔地を結ぶ音楽セッション、ニコ動が同日に発表した新サービス「ニコ生セッション♪」によって実現した。ニコニコ生放送を通じて、生主(放送主)と遠く離れたユーザー同士で楽器演奏やデュエットが楽しめるプレミアム会員限定サービス。司会のやまだひさし曰く「CHAGEとASKAが離れていてもいい」機能だ。セッションの様子をライブ配信することもできる。ニコ動で多くの演奏動画が投稿される「演奏してみた」ではユーザー間のコラボも盛んだが、「ニコ生セッション♪」はまさに待望のサービスといえるだろう。

ニコ生セッション♪」はプレミアム会員限定のサービス。セッション参加時に「NETDUETTO β」が起動するようになっている

「ニコ生セッション♪」は、ヤマハが開発した遠隔拠点間でのリアルタイム演奏を実現するWindows用アプリケーション「NETDUETTO β」を利用したサービスだ。最大4人参加によるセッションが楽しめる。ヤマハが用意するNETDUETTOサーバで拠点間をマッチングし、その後P2Pによる通信を行なう。ユーザーは仮想的なセッションルームで演奏するイメージとなる。NETDUETTOの開発には、同社がルータやカラオケ通信などで培ってきた技術が活かされている。

ツアーに帯同したNETDUETTO開発担当のヤマハ・原貴洋氏は、手軽に利用できるアプリケーションと説明する。「今回の大会議はNTTさんに回線を用意していただき、もっとも良い通信条件でしたが、『ニコ生セッション♪』では一般的な有線ブロードバンド回線とオーディオ・インターフェイスがあれば利用できます」。タイムラグについてはさほど心配ない。演奏データの遅延時間(レイテンシ)は極力短縮する工夫がなされている。「ちょっとは遅延はありますが、今回のシステムでは片道30ミリ秒程度でした。人間の感覚的にはそのくらいの遅延だと(ズレを修正して)合わせられる。(ネット経由でも)だいたい10メートルくらい離れた相手と演奏している、というレベルにはなっています」。音質についても回線状況にはよるものの、CD並みの音質が実現可能となっている。

「NETDUETTO」の構成例(ヤマハHPより)

Baguettes EnsembleとUmiNekoのネットセッションを終えると、司会のやまだひさしは「世界の人とセッションしてみてください!」とアピールした。実際にこのネットセッションを目の当たりにしたユーザーの中には、ニコ動を使った音楽活動に新たな可能性を見出した人も多いのではないだろうか。今後、「ニコ生セッション♪」の活用シーンが増えれば、ニコニコ生放送にとっても魅力的なコンテンツの増加につながるだろう。

なお、NETDUETTOは「ニコ生セッション♪」に限らず、アプリケーション(NETDUETTO β)を導入さえすれば誰でも利用することができる。ヤマハでは今後、30ミリ秒の遅延はプロユースでは万全とはいえないため、専用線による高品質サービスの提供を予定しているほか、ライブイベントやゲーム、カラオケなどへの展開も構想している。現在はWindows版のみだが、Mac OS版も投入する予定だ。

さて、次ページでは、「ニコニコ大会議2010-2011全国ツアー ~ありがとう100万人~ in 福岡」の様子を写真でお伝えしていこう。

写真提供:ニワンゴ