日本エイサーは19日、都内で記者会見を開催し、実売10万円を切る価格を実現した3D立体視対応ノートPC「AS5745DG-A54E/L」を発表した。登壇した同社代表取締役社長のボブ・セン氏は、3D立体視パソコンの普及の要は"価格"であると強調した上で、「安価な3Dパソコンをユーザーに届けることが我々の使命だ」と、新製品に込めた思いを語った。

日本エイサー代表取締役社長のボブ・セン氏

3D立体視対応ノートPC「AS5745DG-A54E/L」を発表

「AS5745DG-A54E/L」の仕様等については、こちらのニュース記事を参照いただきたい。さて、セン氏は、3Dが大きな話題になっている現状を歓迎しつつも、「新しい技術は常に高価なものになってしまう」と、3Dを楽しむために必要なコストが、まだまだ高すぎることが課題だという認識を示す。そして、常に製品のコストパフォーマンスを重要視してきたエイサーこそが、3Dを魅力的な価格でユーザーに提供する使命を持っているのだとし、今回の「AS5745DG-A54E/L」をアピールした。

ゲスト登壇したNVIDIAのセールスディレクターであるトム・リン氏。「NVIDIAが、日本の市場を革新させる新製品の登場に関与することができ光栄」とコメント。セン氏は「今回の新製品は、エイサーの企業努力だけでは実現し得なかった。これはNVIDIAとの長年の協業の成果」と説明している

続いて、日本エイサーのマーケティングコミュニケーション課 マネージャーである瀬戸和信氏が、本製品の概要を解説した。先ほどのセン氏の説明にもあった通り、3Dを楽しむためのコストの高さ……映画でも、TVでも、パソコンでも、3Dでは従来のコンテンツよりも上乗せのコストがユーザーに要求されている現状が課題だと改めて強調する。「消費者は"3D"と聞くと、まだ限られた一部の人のものという印象があるのではないか」と述べ、「本気で3Dを世の中にひろげるために、消費者のコストのハードルを下げる必要がある」との考えが、今回の製品開発の背景にあったことを説明した。

日本エイサーのマーケティングコミュニケーション課 マネージャーである瀬戸和信氏。AS5745DG-A54E/Lは、「日本で3Dを本気で普及させようとしている我々の思いを伝える製品」と話す

ユーザーが3Dデバイスを購入しない理由の1位は「価格が高いから」だったという同社調査結果も明らかにした

しかし、安いからといって、スペックが劣っているわけでは無いという他社製品との比較もアピール

NVIDIAのマーケティング本部 マーケティングマネージャーである平柳太一氏が登壇し、「AS5745DG-A54E/L」に搭載されたNVIDIA 3D Visionの概要を解説。475タイトルを超えるゲームなど、多くの3Dコンテンツを楽しむことができる

NVIDIAからは、最新の3Dビデオ配信の取り組み(左)や、3D Visionの最新の機能アップデート(右)も発表された

なお、今回の「AS5745DG-A54E/L」は、ハードウェアとしては世界市場を見据えた製品仕様をとっているが、日本国内向けだけの独自仕様として、イーフロンティアのNVIDIA 3D Vision対応3DCGコンテンツ閲覧ブラウザ「Shade 3D ブラウザ」を搭載しているという特徴がある。同ブラウザについては、ゲスト登壇したイーフロンティアの営業統括部 営業グループ マネージャーの坂口秀之氏が、その概要を解説した。

イーフロンティア 営業統括部 営業グループ マネージャーの坂口秀之氏

「Shade 3D ブラウザ」の画面。DLした3Dコンテンツなどを簡単に楽しめる

同氏によれば、インターネット上には既に100万点を超える規模の3Dコンテンツが存在しており、「Google 3Dギャラリー」を検索するだけでも120万点もの3Dコンテンツを見つけることができるという。これらのコンテンツをダウンロードして楽しむことができるのが、このブラウザの利点だ。AS5745DG-A54E/Lの登場は多くの人に3Dを見てもらえる好機であるとしており、パソコンの3Dへの「期待」を「確信」へと変えられる製品であると歓迎した。

「Google 3Dギャラリー」を検索するだけでも120万点もの3Dコンテンツを見つけることができるという

またゲストとして、クリエイタ側の視点から、デジタルマンガ協会の事務局長で、自身も漫画家である立野康一氏が登壇。「立体漫画の歴史は古く、青赤メガネのものなど、1960年代から既に存在していた。漫画を立体で見たいと言うのは漫画世代の悲願。しかし高かった。今回の、この値段であれば誰でも手が出せる」と、本製品への期待を述べた。また、「日本は漫画大国。既存コンテンツを3Dに出来れば強みを出せる。作る側のインスピレーションにもいい効果だし、これからのマンガは3Dが必須だと思っている」と、漫画業界における3D活用で、日本の漫画に新しい展望が開けるのではないかという考えも披露した。

デジタルマンガ協会の事務局長で、自身も漫画家である立野康一氏

デジタルマンガ協会についての説明。著名な漫画家が多数参加している

既存の2D漫画を3D化し、「Shade 3D ブラウザ」で閲覧するデモンストレーション

さらに、最近では映画「THE LAST MESSAGE 海猿」の2D→3D変換を手掛けたことで知られるキュー・テックから、CGIディレクター/S3D監督である三田邦彦氏も登壇。「昔は大規模な専用設備が必要だった3Dのハードルだが、それが年々下がってきて、今年は3Dテレビが家庭に入るまでになった。そして、3D対応のパソコンが登場した。普及価格帯でこれが広がれば、より多くの人に作品を届けることができる」と述べたほか、「映像を作っている立場から言っても、こういった3D対応パソコンが普及すれば、製作環境の向上が期待できる。例えば、ピクサーのような作品を個人が作って、Youtubeに投稿なんてこともあるかもしれない。作り手の人材の裾野が拡がれば、3Dはもっと盛り上がる」とも、本製品への期待の大きさを述べた。

キュー・テックのCGIディレクター/S3D監督である三田邦彦氏。コンテンツの作り手の裾野を拡げるという意味でも、3Dパソコンに期待する