2008年4月にAtomが登場してからしばらく、同プロセッサはネットブックやネットトップなど低コストPC市場向けと見なされていた。実際ネットブック向けの出荷数は、これまでに7,000万ユニットを超えている。しかし今やネットブックはAtomのターゲット市場の1つに過ぎない。ネットブック向けのNシリーズ、デスクトップ向けDシリーズ、ハンドヘルドやタブレット向けのZシリーズと製品シリーズを拡充しながら幅広いPCソリューションに対応し、さらにCEシリーズで家電にもターゲット市場を広げてきた。その結果、Atomで初めてIntelとの取引を開始した顧客が40%を超えている。PC・サーバ以外の分野にIntelのソリューションを広げているのが現在のAtomである。

組み込み&通信グループ担当ゼネラルマネージャーDoug Davis氏

Intel Developer Forum (IDF) 2010 2日目基調講演で、組み込み&通信グループ担当ゼネラルマネージャーDoug Davis氏は、市場や分野の壁を超えるAtom市場の拡大をデモを交えて説明。スマートTV向けAtomシステムオンチップ(SoC)の新製品、組み込み市場にAtomを浸透させるEシリーズなどを発表した。

Atomファミリーに組み込み市場向けEシリーズが加わった

Davis氏が最初に取り上げた市場は家電。1年前のIDFでIntelは、インターネット接続機能を備えたスマートTV向けSoC「Atom processor CE4100」を発表した。同チップはGoogle TV製品や、D-LinkのBoxee Boxなど、今年のホリデーシーズンに米国で発売される話題の製品に採用されている。今回新たにMicrosoftのWindows Embedded Businessの取り組みが紹介された。同社は組み込み用途のWindows 7であるWindows Embedded Standard 7にWindows Media Centerを組み合わせたCE4100ベースのスマートTVプラットフォームを開発している。これによりメディア機能を備えたWindows PCを用いなくても、同プラットフォームを採用した組み込みデバイス (セットトップボックス、DVRなど)でWindows Media Center相当の機能が利用できるようになる。AcerとASUSTekが2011年に同プラットフォーム搭載製品を投入する予定だという。

ソニーのInternet TV、LogitechのRevue、D-LinkのBoxee Boxなど、今年の秋に米国ではTVにネットを融合させる製品が多数登場する。スマートTV時代の幕開けにあるという

MicrosoftのWindows Embedded Businessのマーケティング担当シニアディレクターBarb Edson氏

CE4100を搭載したWindows Media Center対応組み込みデバイス

組み込みデバイスで動作するWindows Media Center機能

Davis氏はさらに"Groveland"というコードネームで開発されていたスマートTV向けSoCを「Atom processor CE4200」として発表した。512KBのL2キャッシュを備えた1.2GHz動作のAtomプロセッサを搭載。3D TVデコーディング、マルチストリーム、H.264形式のHDビデオのエンコーディングなどの強化が行われた。ADB、Sagemcom、Samsung、Technicolorなどが同チップを採用したセットトップボックスを開発する。

Atom processor CE4200のウエハを見せるDavis氏

H.264 HDビデオのエンコード機能、電力管理機能統合など、CE4200の強化ポイント

2番目の市場はモバイル。Meromアーキテクチャとの比較で、現在のAtomは消費電力90%、サイズ85%、コスト65%の削減を実現しているという。

まず45nmプロセスで製造されるAtom Z6XXを搭載したスマートフォンを紹介し、続いて開発中のOak Trailを搭載したタブレットやWindowsベースのポータブルゲーム機などを披露した。

Atom Z6XXを搭載しているというスマートフォン

初公開のOak Trail搭載タブレット

Oak Trailのパフォーマンスと柔軟なフォームファクタの例として紹介された韓Ocosmosのポータブルゲーム機。ディスプレイは5型。OSはWindows。来年前半に登場する予定だという

ネットブックについては、8月に発表したAtom初のデュアルコアプロセッサAtom N550を採用した製品が紹介された。中でも目立っていたのが、Dellが開発中のコンバーチブル型のモバイルPCだ。最初はタブレットとして紹介されていたが、実は薄い本体にキーボードを装備しており、パネルを開いて10型のディスプレイを回転させるとクラムシェル型のネットブックになる。搭載OSはWindows 7 Home Premium。年内に製品化される見通しだという。

COMPUTEX TAIPEI 2010で公開した超薄型ノートのコンセプトプルーフ「Canoe Lake」を見せるDavis氏

開発中のWindows 7タブレットを持ってきたDellのDavid Zavelson氏、パネルを開いてディスプレイを180度回転させるとネットブックに早変わり

Davis氏が最後に取り上げたのは組み込み市場。これまで"Tunnel Creek"というコードネームで開発してきた組み込み向けSoCを「Atom processor E600シリーズ」として発表した。ひとくちに組み込みと言っても、車載インフォテインメント、プリンタ、IPカメラ、セキュリティ/監視システム、デジタルサインなど対象が多岐にわたり、産業別・用途別で異なるハードウエア要件やパフォーマンスに応じられる柔軟性の実現が課題になる。Atom E600は、PCI Express互換デバイスと組み合わせられるオープンなインターコネクトを備える。これによりI/Oハブのカスタマイズが可能になる。

Atom processor E600シリーズのウエハ

沖電気とSTMicroelectronicsのインフォテインメント用、Realtek Semiconductorの医療デバイス用など、組み込みアプリケーション向けにカスタマイズされたサードパーティのI/Oハブ

Davis氏はまた、組み込み向けの柔軟性をさらに向上させるソリューションとして、プログラマブルロジック・ソリューションを手がけるAlteraのFPGA(Field Programmable Gate Array)をAtom E600に組み合わせた「Stellarton」の開発を明らかにした。2011年前半の投入を予定しており、初のプログラマブルなAtomプロセッサになる。

Atom E600とAlteraのFPGAを1つのチップにまとめたStellarton

初のプログラマブルなAtomプロセッサ"Stellarton"は2011年前半に登場する予定