レノボ・ジャパンのご厚意により、ワールドワイドでのLenovoのThink製品グループを担当するSenior Vice President、Peter Hortensius氏にインタビューする機会を得た。ちょうどCalpellaプラットフォーム採用のThinkPad新ラインナップが投入されるなど話題の多い時期だったこともあり、興味深い話を伺うことができた。

Think製品グループ担当、Senior Vice President、Peter Hortensius氏

Hortensius氏は、2010年に同社Think製品グループのSenior Vice Presidentに就任し、ThinkServerブランドまで含むThinkブランド全体の開発責任者として、グローバル・チームを統括している。Lenovo入社前にも、IBMパソコン事業部のProducts and Offerings担当Vice Presidentとして、ThinkPadとThinkCentreの製品開発やソフトウェア事業に責任者を担当するなどしており、初期のThinkPadからずっと、Think製品に深く携わっていたという経歴を持つ。

ThinkとIdea、2つの戦略

-- IdeaPadのような新たな製品も投入されています。当初に比べレノボの製品ラインナップはかなり幅広くなりました。まずは、Think製品グループのおおまかな戦略を具体的に教えてください。

Hortensius氏: Think製品グループの戦略は、Lenovoの会社全体の戦略と同じです。我々はそれの戦略を「攻めと守り」と呼んでいます。まずは"守り"の部分ですが、これは会社にとって中核をなす部分、つまり法人向け事業とプレミアム事業、そして中国事業を示します。そして"攻め"の部分ですが、これはSMBのような新規の事業や、メインストリーム価格帯の事業を示しています。攻めの部分では、積極的に新たな挑戦をしていきたいと考えています。

製品で言えば、Lenovoには現在、「Think」と「Idea」という2つのブランドがあります。2つのブランドの製品は、単に見た目が違うだけではなく、製品のデザイン・製造の考え方も違います。Thinkブランドの製品は、高品質と高いユーザービリティ、細部まで気を配った製品で、ある特定の市場に対して、非常に高いブランド力があります。一方でコンシューマPC市場のメインストリーム層は、Thinkが持っていない部分にも興味があり、そういったユーザーに対しては、Ideaブランドの製品を提供しているのです。

大和事業所は引き続き重要拠点

-- 「攻めと守り」を製品ブランドに当てはめると、攻めがIdea製品で、守りがThinkということですね。現在のような新たな状況のなかで、大和事業所がどのような役割を果たしているのかは、ぜひ知りたいところです。特にThinkPadのファンにとっては、Lenovo製品のファンでいられるかどうかに、大和事業所の存在が非常に大きい。

Hortensius氏: 大和事業所は、引き続きThinkPadの開発拠点であり、これは今までもこれからも変わらないということです。そして、大和事業所は、Idea製品がグローバルな役割を果たすために、非常に重要な機能も担っています。Idea製品の研究開発チームは、大和事業所のチームと協力して研究開発を行なっているのです。

低コストでThinkPadの品質を実現した「ThinkPad Edge」

-- 従来のThink製品とは違うが、Idea製品でもない製品が登場しました。「ThinkPad Edge」と「ThinkPad X100e」です。こちらはどうでしょう。

Hortensius氏: 大和事業所のフォーカスはThinkPad EdgeとThinkPad X100eにも及んでいます。EdgeやX100eは、ThinkPadの品質を、多くの人々に届けるため、価格面の優位も含めてデザインされています。EdgeやX100eは、究極のビジネスツールであるThinkPadと、コンシューマーユーザーをつなぐ製品という意味で、Idea製品とは異なっています。

-- ThinkPadの品質を、低価格で提供できた秘密は何ですか。普通に考えれば難しいはずです。

Hortensius氏: Lenovoの製品クオリティチェックの項目で少し違いがあるのです。例えばThinkPadのTシリーズやXシリーズでは、すべてのLenovoチェックが最高になっています。一方で、EdgeやX100eでは、同じ価格帯の競合製品よりは優れているという前提で、ベストの少し手前、ThinkPadとしてベターであるという水準を設定しています。

IdeaPadが好調で、ThinkPadの伝統は?

-- 国内市場を見てみると、コンシューマ向けとして新規に立ち上がったIdeaブランドの製品が好調のように見えます。LenovoといえばBtoBというイメージもあり、Lenovoがコンシューマ参入と発表された当初は、ずいぶんなチャレンジのように思っていたのですが、こちらの近況を教えてください。

Hortensius氏: Ideaブランドの製品は非常に大きく成長することができました。IDCの調査による直近2期(2009年7~9月、同10~12月)のデータなのですが、日本市場において、IdeaPadは、最も成長率が高かった製品ブランドになることができました。

世界市場全体で見ても、ナンバーワンの成長率を示しています。世界市場としては、IdeaPadは特に中国市場での伸びが大きく、中国市場ではThinkPadも超えて最上位の製品ブランドがIdeaPadになっています。Lenovo自体、2009年10~12月で業績が40%超向上したのですが、そのけん引役はIdeaブランドの製品でした。

-- IdeaPadは良い製品ですが、それが逆に、ThinkPadのファンには心配にもなります。ThinkPadは、進化をしながらも、伝統的なコンセプトを引き継いでおり、そういった変わらない伝統の部分が、ThinkPadの魅力なのだと思うのです。Idea製品に代表される、従来に無いまったく新しい製品の登場は、イノベーションがうれしい反面、ThinkPadの伝統が無くなってしまうのではないかと心配になるのです。

Hortensius氏: Thinkの伝統は絶対に消えません。なぜ、私がそう言い切れるのかといえば、Thinkブランドのファンが数多く存在しているからです。そういったユーザーはLenovoにとってとても大切です。そして、ThinkPadのTやXシリーズなどは未だに需要が伸びています。Think製品のイノベーションは、Idea製品に反映され活かされてもいます。伝統が消えてしまう理由はないのです。