ゲッティ イメージズという会社をご存知だろうか? マイコミジャーナルの読者には、「報道で使われる写真素材の提供元」、「Web制作、広告制作などで使うための画像素材の販売元」といったイメージが強いのではないだろうか? 最近では、ゲッティ イメージズの運営する「iStockphoto」で出品されたイラストが、あのtwitterの小鳥のイラストとして採用され、世界中にその作品が知られたサイモン・オクスリーの例などもあり、「仕事に直結する場所」として個人クリエイターたちからも注目を集めている。そんなゲッティ イメージズについて、日本支社の代表取締役を務める島本久美子氏に話を訊いた。巨大なデジタルカンパニー ゲッティ イメージズが、クリエイティブ業界において果たす役割とは?
写真素材をデジタルデータ化しアーカイブ
――そもそも御社はどのように成立したのですか? 媒体向けの報道写真とクリエイター向けの素材写真を提供しているというイメージが強いのですが。
島本久美子氏(以下、島本氏)「弊社は当初は完全にクリエイティブ向けのサービスを提供していました。これまでの時代は、クリエイティブに関わる人々が写真素材を必要としたときは、その所有元まで借りに行き、それを活用していました。そういった素材をデジタルデータ化し、web上の検索エンジンで探し、必要な写真素材を購入できる。そういうサービスを1995年に弊社が最初にスタートしました。また、報道に関しては、1998年にスタートしています。スポーツ報道写真を専門に扱う会社を買収し、その後ニュース報道やエンタテインメントの分野にも進出しました。弊社は、グローバルにストックフォト、写真だけではなく、動画や音楽などの素材をライセンスしている世界最大のコンテンツプロバイダーです。ここまでグローバルに展開している会社は他にはなく、規模としては業界最大となります。写真に関しても、ニュース報道写真とクリエイティブで使用される写真を両方同じように豊富に扱っている会社は他にはありません。報道ですと、競合はロイターやAP、クリエイティブ方面ではコービスやアマナといった会社が競合と言えると思います」
――御社のスポーツ報道写真は、作品としての完成度も高いものが多いですね。
島本氏「弊社は国際オリンピック委員会(IOC)とオフィシャルフォトエージェンシー契約を締結していて、オリンピックでもユニークな写真を撮影しています。オフィシャルであるとは、普通で置けない場所にカメラを置き撮影できるということです。競技のコートの真上であるとか、プールの底面に穴を開けカメラをセッティングするなど、斬新なアングルで、新しい写真を撮影させていただき、それを提供しています。ニュース専門の通信社と弊社の違いは、記録写真を撮ることが目的ではないという部分です。同じ報道写真でも、表紙や新聞の1面になるような写真や広告で使えるような写真を撮影するカメラマンが弊社には多いです。クリエイティブの方面でも、液体金属を撮るカメラマン。レントゲンを活用して写真を撮るカメラマンなど、ユニークな写真を撮るカメラマンが多数います」
――エンタテインメント関係の写真も豊富に扱われていますね。
島本氏「はい。エンタテインメントではワイヤーイメージやフィルムマジックというwebサイトを運営しております。こういうサイトは、報道用に写真を提供しているだけでなく、ハリウッドスターにも高い注目を集めています。例えば、ワイヤーイメージにおいて、ハリウッドで何かプレミアイベントがあったとして、その写真を撮影し提供します。すると、このサイトにはその翌日にスター本人が『自分がどんな写真を撮られているのか』と確認に来るというほど業界ではその存在が浸透しています。また、フィルムマジックでは、休日や普段着での買い物中など、スターのオフの部分の写真が豊富に用意されています」
――報道以外のクリエイティブ向けのサービスについても訊かせてください。
島本氏「クリエイティブの向けには、そのままクリエイティブに使えるクオリティの高い写真から、iStockphotoやThinkstockで提供している写真のように、クリエイティブの素材として使えるようなものも豊富に用意しています。新サービスのThinkstockでは、定額制という事もあり、よりクリエイティブに関わる人々にとって使い易いサービスをご提供させていただけると考えております。また動画や音楽も提供していて、特に動画は近年、売り上げを大きく伸ばしています」
――報道素材として活用される御社の写真とは別に、やはりクリエイターが注目するのは、御社の提供しているデジタルデータが、使用する各個人の用途や目的に合わせて豊富に用意されているという部分と、iStockphotoのようにクリエイター自身が自分の作品を世界に向けて発信できるという夢のある部分だと思います。そういったクリエイター向けの部分に関する、御社のサービスの有効性を次回は訊かせてください。
次回は、島本氏がゲッティ イメージズのような素材を提供する側と、それを利用する個々のクリエイターによって進化するクリエイティブの世界について語る。
ゲッティ イメージズ
世界最大の写真のデータベースを持つ、コンテンツプロバイダー。写真からイラスト、動画、音楽など、様々なデジタルコンテンツ素材を提供する。提供している素材数は、静止画1,800万点以上、動画数4万時間、楽曲4万曲以上、カメラマンは世界で2,000名を超える。最大の特徴はコンテンツ全てがワールドワイドに著作権処理済みである事。また写真通信社としての機能も備え、世界中の最新ニュース、スポーツ、エンタテインメントのイメージを取材し、タイム、ニューズウィーク、ニューヨークタイムズを含む、国内外の新聞、雑誌に配信。AFP・時事通信社を通じて、日本の新聞社にも多く利用されている。
撮影:中村浩二