前回は、「犬と暮らす」とはどういうことなのか、犬と暮らすことでどのようなライフサイクルが生まれるのかなどをお話した。後編となる今回は、犬と出会うことのできる場所や、街中などでの人と犬との関わり方など、より具体的な「犬との暮らし」について紹介する。

須崎 大

須崎氏と須崎氏の愛犬 FIDO(ジャーマン・ピンシャーのオス。現在4歳)

Ph.D./DOGSHIP INC. 代表・Captain。宮崎県都城市出身。「Animal psycho-physiology Ph.D.(動物行動心理学)」と呼ばれる「動物と人の関わり」を主軸とする新しい分野を専門とし、人と犬、人と人の相互関係をライフワークとして研究。近年、社会人向けに「動物から学ぶコミュニケーション」をテーマに企業や自治体・ホテル等にて、メンタルトレーナー及び現役ドッグトレーナー双方の立場から講師として活躍中。「人間は動物との関わりを通して、身近な歓びを感じることを思い出し、より豊かに生きることができる」と提唱している。

また、家庭犬と飼い主間の「問題解決出張型トレーニング」は、双方にストレスがない画期的なメソッドを実践しつつ、飼い主自らが「学ぶ」事を目的とする、そのユニークな手法は、「コーチング」に通じるものとして各方面から注目を浴びている。

犬との出会いの場はペットショップ以外にもある

――犬との出会いというと、可愛らしい犬に一目ぼれということが多いかと思いますが、そういう衝動的な出会いでは無責任なのでは?と感じている人も多いかと思います。

須崎氏「出会いは衝動的な一目ぼれでも少しもかまわないと思います。それはあくまでも出会いなんですから。ただ、出会った後でどう責任をもって動物と暮らしていくからということは真剣に考えてほしい。恋愛と同じです(笑)。異性との出会いには、一目ぼれもありますよね。一目ぼれでも、つきあっていくなかで結婚や将来の生活を真剣に考え始めるでしょう?」

――ペットショップのようにお金で生き物をやりとりするということに違和感を感じている人たちもいます。

須崎氏「育てる、繁殖させるということにはどうしても人手とお金がかかるので、ペットショップを否定することはしません。でも、みなさんにはペットショップ以外にも犬との出会い方がたくさんあるんだということは知っておいてほしいですね。」

――どういう出会い方があるんでしょう。

須崎氏「ぜひ、知っていただきたいのが全国各地にある保健所や、里親捜しをしている団体の活動です。そういった施設にいくと、ボランティアなどでいろいろな活動をしている方々たちと出会える機会があります。そういう人たちに、自分のライフスタイルや動物との暮らし方のイメージを伝えて、いっしょに理想の犬を探していく。これもものすごくわくわわくする経験です。また、ブリーダーさんと知り合うことができれば、その子の親や兄弟に合わせてくれたり、性格や食の好み、その犬種特有の事情など、さまざまなことを教えてくれます。ブリーダーさんから、直接犬をもらってくるというのもいい方法です。」

――でも、いきなり保健所やブリーダーさんのところにいくのは、ちょっと敷居が高いような気がします。

須崎氏「もっと気軽に、街中で犬を飼っている人に声をかけてみてもいいんですよ。公園やドッグランにいって、素敵だなと思える飼い主さん、可愛いなと思える犬の飼い主さんに、直接話しかけてみてください。みなさん、犬の話をするのは大好きですから、きっといろいろ教えてくれますよ。『この犬種って、可愛く見えるけど、実際はけっこうたいへんなのよ』というような飼い主しかわからない情報も教えてくれます。いずれにしても、犬を介して人間関係を構築して、人の輪を広げていくというのも、犬との暮しの大きな楽しみのひとつなんです。みなさん、自分の犬種に関する情報をシェアしていますので、そういう輪に積極的に入っていくと、犬との暮しがさらに楽しくなります。」