比較して並べるすごさ『suGATALOG』

『suGATALOG』のすごいところは、ファッションのコーディネートを比較して並べることができる点である。写真のよいところは、実物を見て判断できる点にある。単に頭のなかでいいかげんに想像して比較するのとは違い、そこには具体性があるのである。写真を使えば実物を見れるかというと、そんなことはない。写真を扱うシステムの大半は、スライドショー形式で、写真を1枚ずつ切り替えて表示するためである。1枚ずつ切り替えた写真は、当然、並べて表示しているわけではない。消えてしまった写真は頭のなかで想像するしかなく、具体性が欠けてしまう。ファッションとは具象をともなう即物的表現であるから、1枚ずつ切り替えるようなスライドショウでは比較にならない。

きちんと比較するためにはサムネイルのような小さな表示対象では情報量が少なくてむずかしく、それなりのサイズをもっていなければならない。もうひとつある。『suGATALOG』にはめだった操作がなく、ただ撮影するだけでコーディネート比較を行えることである。『CastOven』もそうなのだが、コンピュータが入ってインタラクションデザインをしたものであるかどうかということは、最終的にはユーザーにはあまり関係がない。コンピュータが入ったからといって、操作がひと手間増えるなんていうのは、もってのほかなのである。この点で、キーボードやマウスが生活空間に受け入れられないのには、理由がある。

毎日行うことなので、慣れればよい、というような意識でデザインしたものは、多くのユーザーを獲得することはないのではないか、と筆者は考えている。そうは考えないデザイナーやプログラマもいるようで、なにか情報を得るためにボタンをひとつ押すくらいならしてもらえるのではないか、という意見があり、しばしば議論になる。筆者に言わせれば、毎日行うたったひとつの行為は、1年で365回、人生70年とすれば25,550回にものぼるのであり、このような無駄なことを強制するシステムは、ユーザーにやさしいとはとうてい言えない。

「毎日毎日いろいろな操作をすることはできないので、シンプルにしました」と佐藤氏はいう。服だけの写真でコーディネートするソフトはあるが、「服が広がってしまってシルエットが変わって着ている感覚と違って見えてしまうのであまり役に立たない。それに服だけをわざわざ広げて撮影するのはめんどうである」と佐藤氏はいう。これもじつにそのとおりで、役に立つか立たたないかわからないことをわざわざやろうと思うひとは少ない。

『suGATALOG』は、そのあたりのバランスが、たいへんうまく結実して表現されている。聞くとこのシステムはバージョン2だそうで、なるほどそれゆえかとも思った。従来のバージョンでは、だれと会ったかとかいろいろ情報を追加できたが、結局めんどうで続かないのだそうだ。シンプルにしたことで、継続と活用のバランスが機能した。

ひとつのテーマを、繰り返しブラッシュアップしていくことは重要である。『suGATALOG』。なお、佐藤氏、『suGATALOG』以外にカレンダーソフトを展示予定していたのだが、今回は『suGATALOG』で手いっぱいになってしまったとのこと。次の機会があれば、ぜひ見てみたい。

服だけの写真でコーディネートするソフトとの比較。『suGATALOG』は優れている

佐藤彩夏氏の『suGATALOG』トップスとボトムスをわけて合成できる