動いているライフログソフト『suGATALOG』

佐藤彩夏氏の『suGATALOG』の完成度も高かった。姿のカタログのライフログというような複数の意味を掛け合わせた言葉である『suGATALOG』は、女性のファッションコーディネート支援システムである。日々、服を着たときに、鏡の前でポーズをとると、それを撮影して蓄積し、コーディネートをチェックすることができる。

ポーズの撮影ログは、一覧表として最近のものから順番に並べて表示される。おもしろいのは、上下を別々にわけて扱え、タッチパネルで選択するだけでコーディネートを検討できることである。じつは男性である筆者には想像がつかないのだが、女性と話をしてみると、女性にとってコーディネートは、化粧とならんでとても大切なもののひとつで、自分の存在意義に影響するくらい重要なものであるらしい。女性研究者には、化粧やコーディネートをテーマにする方が少なくないが、それは遊び感覚で行っているのではなく、もっと自分の内面に関係する重要な内的必然性から生まれてくるようなのである。

「ログをとっても活かさなければ意味がない」と佐藤氏はいう。それはもう間違いなくそのとおりだ。筆者自身、『記憶する住宅』とライフログをつづけていて、幾度となく「採ったログはどうするのか?」と質問されてきたのだが、そんなもの、活用するに決まっているじゃないですかというか、活用しないのなら、ログをとる意味などない。

さらに重要なことは、採ったログを活用するのが、5年後や10年後では遅い、ということである。もちろん、結果として5年後に役に立つログもあるが、一般的にいえば「すぐに役に立つこと」がライフログ全体では求められている。日本の産業の構造的な問題で、直近の成果を期待されている、というようなこと以上に、ログをすぐに使えることがライフログにとっては重要である。役に立たないことを人間はしないものであるからである。

ライフログシステムが思ったように立ち上がらない背景には、このログ活用システムがログの記録システムと車輪の両輪のように回らなければ意味がないことが、まだ充分浸透していないためと思われる。ちなみに筆者自身もソフトウェア『PilePaperFile』では、ログをがんがん活用するシステムを日々運用している。そうした背景から、この佐藤氏のログの活用への姿勢には、強く共感するところがあった。

『suGATALOG』の佐藤彩夏氏。うしろにあるのが『suGATALOG』を実装したクロゼット

ログをすぐに生活にいかす

とくべつなオペレーションをすることなく、写真をつぎつぎと記録し、瞬時に比較して見ることができる。

操作はダイレクトオペレーションで行う