米ラスベガスで開催された「2008 International CES」。毎年出向いているのだが、こうした海外出張に行くときに困るものに「時計」がある。持って行くノートPCはタイムゾーンを切り替えれば一発で現地の時間に設定できるが、PCを使っていないときに時間を知りたい場合は、やはり腕時計が一番便利。

ところが腕時計というのは、PCのように気軽に時間が変更できない。竜頭をぐりぐり回したり、ボタンを何度も押したりといった作業が必要になってしまう。しかも、現地の時間を調べるために周辺の時計を探す必要もある。そんな作業は、別にたいした手間ではない。しかし、だからこそ手をわずらわされるのが面倒だ。

そんな筆者の希望に応えてくれる時計がある。それがカシオ計算機の「OCEANUS」だ。今回、CESへの取材にあわせてOCEANUSを試用してみたので、それを報告してみたい。

OCEANUS。このモデルはManta SPECIAL EDITION(OCW-S1050J-1AJF)

手軽に世界の時間が分かる世界時計

OCEANUSは、フルメタルの高級感のあるデザインの腕時計だが、このOCEANUSの便利なところは世界時計として機能が充実している点。世界時計としては世界27都市(29タイムゾーン)の時刻を簡単にチェックできる。使い方としては、左下ボタンを押して「ワールドタイムモード」にして、右下ボタンを押すごとに各都市の時間が表示される仕組み。

OCEANUSの文字盤。秒針は下の日付の表示された円盤。左の円盤は24時間表記なので、午前午後が分かりやすい。右の円盤は曜日。通常では秒針となる針(写真で12時を指している細い針)は現在の設定を示す針で、たとえば世界時計で都市を切り替える場合にこの針で時間を知りたい都市を指定する

単純に時差を知っていれば設定は簡単だが、いちいち「アメリカ西海岸だから時差は…」などと考えるよりも、LAX(ロサンゼルス)、TYO(東京)といった都市名で設定できるので気が楽だ。今回はネバダ州ラスベガスなので、時差が同じロサンゼルスを選択しておいた。

文字盤には各都市の略語が表示されているので、時間を知りたい都市に針を合わせる

筆者の場合、時差の大きい米国や西欧に行くと、日本とは日付が異なるため、日付感覚が狂う場合がある。そんな時に日付表示もできるOCEANUSは便利。時刻設定をロサンゼルスにしておけば、日付もきちんとそれにあわせて設定されるので間違えることはない。

ちょっと気になったのが、世界時計で別都市を選択しようとしたときに、逐一右下ボタンを押さなければならない点。左方向一方向にしか選択することができないので、現在設定都市のすぐ右隣の都市を選択したいと思っても、何度も右下ボタンを押す必要がある。もっとも、長押しすると連続的に都市が変わる、という仕組みがあるのでなれればどうということはないかもしれない。

また、右下ボタンを押して都市を選択し、1~2秒ほど何もしないと選択が決定され、ゆっくりと長針が動いてその都市の時刻を表示するのだが、右下ボタンを押している最中に意図しない都市が決定され、長針がゆっくり動き出してしまうことがたびたびあった。途中でキャンセルできない上、長いときは2分近く長針が動き続けるため、選択に失敗したときの待ち時間も気になったところだ。都市を選択し、別のボタンを押すと確定するといった機能も欲しいところだ。

ただ、いずれにしてもボタンを押すだけで簡単に海外でもその都市の時間を把握でき、海外にいても日本時間も手軽に知ることができるのが便利なのだ。

電波時計で海外でも正確な時間を知る

とはいえ、OCEANUSの最大の特徴は、世界時計としてボタンを押すだけで世界各国の時間を知ることができる、という点ではない。カシオ得意の電波時計の機能を備えており、常に正確な時間を設定できる点もポイントだ。しかも、日本の標準電波だけでなく、欧州・米国それぞれの標準電波の受信にも対応するのだ。

標準電波では誤差10万年に1秒というセシウム原子時計の時間を電波で送信し、電波時計はそれを受信して時刻合わせを行うことができる。日本では標準電波は、福島県田村郡のおおたかどや山標準電波送信所と佐賀県・福岡県境にあるはがね山標準電波送信所の2カ所から送信されており、情報通信研究機構(NICT)が運営している。米国では、国立標準技術研究所(NIST)がコロラド州フォートコリンズ送信所から送信。欧州では、英国立物理学研究所(NPL)がイングランド北部のアンソーン送信所から、独物理工学研究所(PTB)がフランクフルト南東部のマインフリンゲン送信所から、それぞれ標準電波を送信している。

OCEANUSでは、これら3地域の標準電波の受信に対応。日本だけでなく欧米でも常に時計が正確な時間を指すようになる、というわけだ。

個人的には、各地域に行って標準電波を受信したら自動的に時間合わせをしてくれるとよかったのだが、実際はそうではなく、時計の基本となる都市をきちんと設定しておかないとならない。

基本となる都市は「ホームタイム都市」という形で設定。ホームタイム都市を設定する場合は、前述の世界時計で各都市の時間を表示しているときに、右上ボタンを3秒ほど押し続ける。そうするとその時の都市がホームタイム都市に設定される。

このホームタイム都市を元に標準電波を受信するため、今回はロサンゼルスにホームタイム都市を設定しておけば、米国の標準電波を受信してくれるようになる。ほかに、TYO、HKG(香港)では日本の標準電波、HNL(ホノルル)、ANC(アンカレッジ)、DEN(デンバー)、CHI(シカゴ)、NYC(ニューヨーク)では米標準電波、LON(ロンドン)、PAR(パリ)、ATH(アテネ)が欧州標準電波を受信する。

ホームタイム都市に設定しておけば、あとはそのまま放置しておけば深夜に勝手に電波を受信してくれ、時間を設定してくれる。また、環境によって電波を受信しにくい場合は、場所を移動したり、12時方向を窓際に向けたりすればよいだろう。

成田空港で時計をチェック。もちろん日本時間

ラスベガスのマッカラン国際空港にて。簡単に米国の時間に変更できる

電波の受信時刻は深夜から早朝にかけてなので、手動で受信することもできる。左上ボタンを2秒程度長押しすればすぐに受信を始めてくれる。とはいえ、受信場所や受信時に時計を動かさないようにするなど制約があるので、空港に着いてすぐに(もしくは到着前に飛行機の機内で)電波を受信して時計合わせをするのは難しそうだ。

もっとも、あくまで電波時計は、「時計の狂いを補正する」ための補助機能だ。国内できちんと時計を合わせておけば、ホームタイム都市の変更で海外でも正確な時間を示してくれる。電波受信が行えないと、普通のクオーツ時計となるため、平均月差±20秒以内の誤差が起こりえるようだ。

いずれにしてもOCEANUSは、高級感のあるデザインと世界中で使いやすい世界時計に加え、電波時計による正確な時間あわせにも対応。さらにソーラー充電機能も備えており、電池交換の心配もない点もいい。幅広いラインナップをそろえ、男性から女性までスタイルに合わせて選択できるのも魅力だ。

右下のボタンと文字盤にはブランドロゴが付けられている。右下ボタンはエンボス加工、文字盤は蒸着処理によるもので、上質感を演出してくれる