ここで取り上げたこと以外にも、DTraceZFSといったSolaris由来の機能や、SpotlightやTime Machineを実装する要となる機構FSEvents、アプリケーションの正当性の確認を可能とするCode Signing、ことえりやMailの迷惑メールフィルタで大活躍しているLanguage AnalysisのAPIがついに一般の開発者にも開放されたこと等々、隠れた新機能は挙げていけばきりがないほど存在する。

「Mac OS X Server version 10.5 Leopard」(以下、Leopard Server)に目を向ければ、CalDAVのサーバであるiCal Server、Open Directoryと統合されたFreeRADIUS、iChatやMail、iCalと統合されたWikiサーバ機能など、これまた枚挙にいとまがない(注4)。

それらの中には、先のリストに高らかに謳われているものもあれば、こっそり載っているものも、そしてそもそも記載がないものまでいろいろだ。

Mac OS Xがターゲットとする「the rest of us」に対しては、Appleのリストはもっとも適切な説明であろう。リストの中にあるものと異なり、隠されたものの多くは「気が付かないうちに使われる」ものであり、「そんなことは一般ユーザの知らなくていいこと」だからだ。

しかし、そうではない人もいる。

皆さんは、子供の頃にやったことはないだろうか? 時計やラジオを分解してしまうということを。路地裏の道にあえてはまりこんでみるということを。Appleの新製品が出ると必ず分解する人がいるように、お行儀のいいリストではなく、Mac OS Xのどこのどのコードが変わったのか、本当はどういう機能が付いたのかを、知りたくなってしまう人もいるだろう。

逆に、そうした面が隠されてしまっているため、いまだにMac OS Xを「GUIがきれいなOS」と受け取ったり、Leopardを「Tigerに10個新機能が付いただけでしょ」と考えている人も少なくない。Rest for usにはRest for usの説明があるように、オタクにはオタク向けの説明も必要なのではないか?(注5)

本稿を皮切りとする「the inner universe of Leopard」シリーズでは、革新的なリリースであるLeopardの、そうした重要だがあまり光の当たらない部分に焦点を当て、いかに変わったかを説明していきたい。

注4 枚挙にいとまがない
重要なのは、こうした新機能を備えるLeopardには、たった2つの製品群、3つのSKU(Stock Keeping Units)しかないことだ。すなわち、コンシューマ向けのMac OS X 10.5 Leopardはただ1つのパッケージしかなく、サーバ向けの「Mac OS X Server version 10.5 Leopard」でも、10ユーザと無制限ユーザのわずか2つのSKUしかない。
Starter、Home Basic、Home Premium、Enterprise、Ultimate等々、微妙な機能の差を付けいくつものSKUを用意し、人によって手にする新機能の数や種類に違いを生むということは決してない。リストに書かれた機能、また書かれていない機能も、適切なハードウェアや対応アプリケーションさえあれば、Leopardをインストールした人すべてがその恩恵にあずかれる。

注5: オタクにはオタク向けの説明も必要なのではないか?
もっともいいのはADC(Apple Developer Connection)に登録すること、WWDC(Worldwide Developers Conference)に参加することなのだが。英語が苦手で外国が不得手の筆者が毎年毎年参加しているのも、結局は"ハァハァ"したいからなのだ