『とれたてっ!』の全国放送を語る上で忘れてはいけないのは、平日午後における情報番組のニーズ。2020年前後あたりは芸能人の不倫や企業・団体の不祥事が頻発し、生放送の謝罪会見が頻繁に開かれていたが、ここ数年は減少傾向にある。

実際ここ数年は、「『ミヤネ屋』は政治か大谷翔平、『ゴゴスマ』は天気か大谷翔平。あとはときどき大きな事故か事件があるくらい」などの声が上がっている。つまり、「大したニュースもないのに3つも同じような情報番組が放送されている」という危うさが感じられる。

そもそも“生放送の情報番組”は民放各局が朝の5時台から夕方の18時台まで13時間超にわたって放送しているコンテンツ。もちろんすべて同じ内容ではなく、報道色が強いものやバラエティの演出を取り入れたものなどの違いはあるが、扱う内容や出演者は大差ない。

その13時間超はバラエティの『ラヴィット!』(TBS系)やトークショーの『徹子の部屋』(テレビ朝日系)など別ジャンルの番組はわずかであり、ドラマ再放送は番組表の多様性を担保する上で貴重な存在となっている。それだけに『とれたてっ!』の全国放送は「平日の日中はテレビそのものを情報番組化」するように見えてしまう。

また、フジに目を向けると、一連の騒動に加えてオンラインカジノの不祥事が続いた昼の帯バラエティ『ぽかぽか』の存続も危ぶまれている状態。同番組は貴重な昼のバラエティであることから、低視聴率ながら熱心なファンも多いだけに、もしここも情報番組に変わるようなら、フジは現在の視聴者をリセットすることになるだろう。

「3局横並び」後発番組の宿命

だからこそ『とれたてっ!』の制作サイドには、単純に「横並び」と言われないだけの工夫が求められるのではないか。

前述したようなMCの若さや好感度、あるいは、出演者のコメントだけで差別化しようという考えに留めず、新しいものや本当に役立つものを視聴者に見せていくべきだろう。裏を返せば、それをしなければ横並び放送の嫌悪感を生むなど先発番組の足を引っ張るだけであり、後発番組の宿命という感がある。

秋までの3か月間、放送しながらその可能性を見いだしていく。もし秋に間に合わなければ全国放送しながらその可能性を探り続けていくという継続した姿勢を制作サイドに求めたいところだ。

たとえば、朝から夕方まで同じテーマを繰り返し扱うばかりではなく、より庶民目線で衣食住に特化したニュースをピックアップして掘り下げていく。さらに、この時間帯の視聴者はテレビに親しみがある中高年層が多いだけに、一般人が参加できるような演出を盛り込んでいく。

言わば「午後の『あさイチ』(NHK総合)」のようなムードがあってもいいのかもしれない。いずれにしても、MCとコメンテーターの無難なやり取りだけでは得られない、生放送の臨場感をどう作り出していくのかが鍵を握るのではないか。

業界関係者と話していると、「平日の午後は何をやっても難しい」などとあきらめのような声をよく聞くが、中高年層がメイン視聴者で予算が厳しくてもやれることは本当にないのか。中高年層のリビングにもスマートテレビが増え、このままでは近いうちに「平日午後は配信を見るための時間」にされてしまいかねないだけに、『とれたてっ!』のカンテレだけでなく『ミヤネ屋』の読売テレビ、『ゴゴスマ』のCBCも含め、制作サイドの工夫と努力に期待したい。