• 波瑠

    波瑠

タレントの起用に関して“今春の背景”として挙げておかなければいけないのは、「キャスター交代」と「8年ぶりの復活」というそれぞれの事情。

『news every.』は藤井貴彦、『news zero』は有働由美子と“番組の顔”だったメインキャスターが抜けたことで、「新たな目玉となる出演者が欲しい」という思惑があった感は否めない。これは『すぽると!』も同様で、8年ぶりに復活させるからには、局アナにメインを任せるだけでは足りず、「新たな目玉を加えたい」という狙いが見える。

今回の起用でどれだけのコア層を集められるのか。制作サイドにしてみても「やってみなければ分からない」ところは多分にあるだろう。それでも、『すぽると!』の千鳥については、裏番組『Going! Sports&News』(日テレ)にくりぃむしちゅー・上田晋也が起用され、当初は批判の声もありながら定着したという経緯も大きかったのではないか。

さらに、トップ芸人の起用には「不定期放送されるスポーツ特番のMCも任せられる」というメリットもある。特に今年はパリ五輪も控えているだけに、フジにとって千鳥をスポーツ特番で起用できるのは「コア層に訴求できる」という点で大きいだろう。

  • 千鳥

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存在意義と失言リスクのバランス

ちなみにここまでの千鳥は、センターに立ってオープニングトークの口火を切り、28日の放送でも大悟が「日曜は『すぽると!』のおかげで休肝日~」とボケるなど笑いを挟みながらも、アスリートへのリスペクトを前面に出すなど、無用ないじりはほどんど見られない。2人は常にワイプで映されているが、視聴者目線で感想やツッコミを入れて、一緒に見ているようなライブ感を醸し出している。

SNS全盛の時代だけに、「千鳥がどうリアクションしたか」「大悟がどうボケ、ノブがどうツッコんだか」を楽しめるライブ番組としての強みは、人気と話術ともにトップの芸人を起用したからこそのものだ。

しかも『すぽると!』は単に千鳥を起用するだけでなく、各競技の解説者コメントを増やすなど競技を深掘りすることも忘れていない。「競技の結果速報になりがちなスポーツニュースに、深さと笑いを加えることで唯一無二のコンテンツに昇華させよう」という強い意欲がはっきりと感じられる。

ただ、報道番組もスポーツニュースも、出演するタレント側にしてみれば、無難なコメントばかりでは存在意義は薄くなり、批判の声は高まるばかり。かといってコメントの数が増えるほど失言による批判のリスクは高まり、やはりそれなりの資質と努力がなければやっていけないだろう。

その意味で彼らには信頼を得るべく日々の努力を重ねるなど、真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められている。それが視聴者に伝われば時間がかかっても受け入れられる可能性は十分ありそうだが、伝わらなければ番組自体の関心度が失われていくかもしれない。