――3月に終了した『行列のできる相談所』(『行列のできる法律相談所』から改称)には、長年携わってこられましたよね。初代司会者の島田紳助さんをはじめ、レギュラーの方が突然降板してしまうというピンチを何度も乗り越えた番組でした。
紳助さんが引退された直後が、僕の担当回だったんです。引退会見するというのをその日に知って、ちょうどその週が収録日だったんです。どうすればいいのか何も思い浮かばないし、まだ30歳くらいだったので、もう真っ青でした。
それで総合演出の高橋利之さん(日本テレビ)に会いに行ったら、「お前は人の経験できない場面でやれて、ラッキーだな」と言われたんです。僕の知らないところで高橋さんをはじめ、いろんな方が対応に追われいてたと思うんですけど、150人くらいいる『行列』のスタッフに対しては、落ち込むとか下を向くとか、そういう姿勢は全く見せないので、その言葉を聞いて「やれるだけのことをやろう!」とスイッチが入った記憶があります。
――高橋利之さんは、日テレ制作者の皆さんが影響を受けていますよね。『行列』の作家だった石原健次さんは「長嶋茂雄さんみたいな人」とおっしゃっていました。
そうなんです。周りにいる人はみんな高橋さんの求心力に惹かれ、知らずに戦闘力が上がっていくような感じがあります。
――中山さんは『行列』最終回の3時間生放送の演出も担当されましたが、どんな思いで臨まれたのでしょうか。
これだけ注目される番組の最終回を、仲間と一緒にできるのは幸せだなと思ってやってました。後ろ向きな気持ちは本当になくて、楽しくやりたいなっていう感じでした。
――クライマックスは、カンボジアで小学校を設立する「カンボジアプロジェクト」のオークション企画でしたが、紳助さんの過去映像も流れました。
カンボジア企画を立ち上げた方ですし、今聞いてもすごく芯の通ったことをおっしゃってるんです。「偽善者でもいい。やらないよりやったほうがいい」というメッセージは、絶対に伝えたいと思いました。
50年前に会った人も印象が変わらない明石家さんま
――『行列』チームでは、『誰も知らない明石家さんま』も制作されていますよね。
さんまさんが60歳を迎える時に、各局でさんまさんの還暦特番をやったのですが、それがもう10年続いているんです。全くネタが尽きません。さんまさんは打ち合わせでも、本当にテレビのままで誰とも隔たりなくお話しされますし、街で出会った人もみんなイメージのままだと言いますよね。もっとすごいのは、50年前にさんまさんに会った方も「面白い」「ずっとしゃべってる」「いい人」と同じことを言うんですよ。ずっと第一線でやられているのは、やっぱりすごいですよね。
僕は自分のことを凡人だと思うのですが、すごい人を見てきた人生ではあると思うんです。さんまさんもそうですし、高橋利之さんもそうですし、『世界を変える100人の日本人』に出てくれた方々もそうです。そこに共通しているのは、もちろん魅力的で人が集まってくるんですけど、偉ぶらなくて誰に対しても平等なんです。年齢に関係なく、誰よりも努力していて、かつみんなに優しい。そういう人たちからいろんな影響を受けて、すごく恵まれているなと思います。