2021年も夏本番。大手空調機器メーカーである富士通ゼネラルが、冷却機能に加えて新たに加熱機能も搭載するウェアラブルスタイルのエアコン新機種「Cómodo gear i2」をリリースしました。6月上旬から有償レンタルサービスを開始しています。
昨年(2020年)モデルに引き続き、今回も富士通ゼネラルを訪ねて担当者の佐藤龍之介氏と山本和弘氏に製品の特徴を聞きました。クール&ホットな新製品の体験レポートをお届けします。
さまざまな首のサイズにフィットする2サイズ展開とアジャスト機構を採用
Cómodo gearは、WINヒューマン・レコーダー株式会社による「身に着ける冷暖房装置・ウェアコン」の技術をベースにして、富士通ゼネラルの佐藤氏が所属する社内イノベーション組織、Being Innovative Groupが共同開発を進めてきた製品です。
新しい第2弾のモデルも初代と同様に、本体となるネック部を身に着けて、頸部(=首)の左右と後側の3点に当てたプレートを冷やしたり温めたりしながら使うウェアラブルデバイスです。「i2」はイノベーションを実現した第2世代機を意味しているそうです。
ネック部は、2020年のモデルとほぼ同じ大きさの「Lサイズ」を約15グラム軽量化しています。また、首回りが細いユーザーのため、ネック部の直径を約3cm小さくした「Sサイズ」も新たに追加しています。
プレートの面積は2020年のモデルと比べて拡大しています。装着したとき首の肌にプレートがしっかりと当たるように、前面側のマグネットバンドでフィット感の微調整ができます。ストラップホールで長さを調整してから、片側がマグネットで着脱できるバンドなので、安全に身に着けることができます(例えば転んだときなどに外れやすく、首が絞まらないようになっています)。
腰に装着するバッテリーパックとラジエーターは、2020年のモデルでは一体型でした。今回の新モデルは筐体を別々にして、それぞれ小型化を図りました。身に着けたとき、かかる重さの負担が分散されます。ネック部、ラジエーター、バッテリー部、ケーブルの重さを足すとLサイズで840グラム、Sサイズで835グラムです。
ネック部とラジエーターの間はチューブでつながっています。このチューブの中にはネック部を動かすための電源に加えて、水が循環しています。ネック部のプレートにはペルチェ素子という、ユーザーの体温を吸熱する電子部品が埋め込まれています(※)。この部品から発生する熱を循環水で冷やすことで、長時間にわたる冷却効果を持続させます。
※: ペルチェ素子に電流を流すと、片面で吸熱して(冷える)、もう片面から放熱。
ラジエーター側に発生する熱は、空冷ファンを使って空気中に放熱します。なお、Cómodo gear i2の連続使用時間の目安は約2~3時間。バッテリーユニットは専用の充電器を使って約2~3時間でチャージが完了します。
しっかりと冷える確かな効果。冷たさがへたらずに続く理由とは
ではさっそく、筆者によるCómodo gear i2の実体験レポートをお伝えします。
筆者は男性のわりに首が細めなので、Sサイズを選んでバンドを最適なフィット感に微調整。体格がよい男性であれば、Lサイズがよいと思います。
ネック部は、2020年のモデルに比べて柔軟性がアップしている印象です。バンドの「つなぎ目」の部分に樹脂製のパーツを採用したことで、身に着けた後も首の動きに合わせてネック部が「ねじれ方向」にも追従します。だから息苦しさがありません。
ネック部を正しく身に着けると、首の後ろに1点と、あごの下左右に2点のプレートが当たります。プレートは曲面形状になっているので、肌にピタッと沿う感覚があります。先にネック部のほか、ラジエーター部とバッテリー部を身に着けてから電源をオンにしたほうが、徐々にプレートが冷えたり温もってくる感触が得られて楽に感じられるでしょう。いきなり「冷たっ!」となりません。
冷却モードと加熱モードは、それぞれ「High・Low」の2段階で切り換えられます。2020年のモデルは多段階調節に対応していましたが、最大の冷温効果が得られるポジションを中心に、よりシンプルに使いたいという声を受けて仕様を変更したそうです。
Cómodo gear i2はプレートが首にしっかりと密着するので、冷却効果がムダなく身体に伝わる感触があります。少し蒸し暑いぐらいの場所で使うのであれば、設定はLowで十分でしょう。
Cómodo gearの商品企画を担当する佐藤氏は「体幹までしっかりと冷やせるような効果が本機の特長」と語ります。Cómodo gear i2は真夏の暑い屋外で使われることも想定しているので、モードをHighに切り換えるとまさしく「ガツンと冷える」手応えです。
冷却モードを選択すると、内蔵センサーでプレート部分の温度をモニタリングしながら冷却効果の強弱を自動調節する「ゆらぎ機能」も使えます。佐藤氏が解説しするには、「長時間にわたって一定の温度で使っていると、やがて感覚がまひして冷却効果が得にくくなることを避けるための機能」とのこと。
富士通ゼネラルが推奨するCómodo gear i2の使用温度は、「5~35度」の範囲とされています。本体に特殊な耐熱加工などは施していないことから、例えば溶鉱炉のような高熱に達する機械が稼働する場所での作業には適していません。ただ、佐藤氏は耐久性能の部分など、今後の需要を見ながらカスタマイズも可能であると話しています。
今回、ラジエーターとバッテリーパックは、ループにベルトを通して腰に装着しました。筆者は普段着で身に着けましたが、セパレート構造になったので腰にかかる重さが分散され、従来モデルよりもだいぶ楽になっています。ただ、ラジエーターのファンノイズがそれなりに大きく、まわりに人がいる静かなオフィスや公共の場では、周囲に気を遣わず使うことは避けるべきでしょう。
身に着けてみたくなるカジュアルでスポーティーなデザイン
開発に携わる佐藤氏は、従来モデルに引き続いてCómodo gear i2もまた、基本的には建設や警備、工場での点検作業など、高気温・低気温の環境下で空調が行き届かない場所で作業する人向けに、産業用途をおもに想定したデバイスであるとします。
決まった場所を往来する現場作業に携わるスタッフが、Cómodo gear i2のようにチューブが露出した存在感あるウェアラブルデバイスを身に着けていても、違和感はあまりないでしょう。加えて、新モデルは従来モデルより外観がブラッシュアップされ、魅力的になったと思います。
プロダクトデザインを担当した山本氏によると、快適な体験価値とパフォーマンスを高めながら「ユーザーのモチベーションを上げるデザイン」として仕上げることにも腐心したそうです。
山本氏は「前向きな気持ちで装着したくなるデバイス」となるように、ネック部はスポーティーなデザインを突き詰めたとします。形や色をスリムにして、ワンポイントカラーとして配色したライムグリーンのアクセントを効かせています。
なぜレンタルオンリー? 一般販売の可能性は?
2021年の新モデルとなるCómodo gear i2は、6月上旬から日本国内の企業向けに月額1万円(1台・税込)で有償レンタル提供を開始しています。レンタルの申し込みを受け付けるECサイトは、富士通ゼネラルのホームページ内で立ち上がりました。最長で4カ月間までのレンタルを申し込めます。
Cómodo gear i2は冷却と加熱の両方に対応するウェアラブルエアコンですが、オールシーズンで使うデバイスではないため「必要なシーズンにレンタルして使いたい」という声が多くあることを受けて、まずはレンタル提供からスタートしているそうです(これは2020年モデルも同様でした)。ただ今後は、一般コンシューマに向けて販売することも視野に入れるとのこと。買い取り購入もできるデバイスとするのであれば、どのような仕様やビジネスモデルが適切か、検討を続けたいと佐藤氏は話しています。
シリーズの海外進出についても、佐藤氏は2020年から前向きに検討しているとします。夏の暑さ対策は、いまや世界中の人々にとって共通のテーマ。Cómodo gearのようなスマートデバイスを上手に使うことは、持続可能な社会環境を実現するために、ひとり一人が貢献できる道にもなるのではないでしょうか。
人種や文化が異なると、Cómodo gear i2による冷温感効果に対する感じ方、期待感にも差が生まれてくるはず。佐藤氏は世界各地でグローバルにビジネスを展開する富士通ゼネラルの強みを活かしながら、多くの人々のライフスタイルに合ったデバイスを届けたいと意気込みを語りました。
最新のCómodo gear i2は、2021年10月31日まで東京・有楽町の体験型ストア「b8ta Tokyo-Yurakucho」で実機を試せます。この機会に実体験の声が数多く集まれば、私たちがいろいろな場所でCómodo gearで涼める日が早く来るかもしれません。