介護保険の保険料は決して安くはありません。自分が高齢になって身体が不自由になり、いざ介護保険の給付を受ける立場になった際、どのくらい給付が受けられるかはとても気になるところでしょう。特に介護が必要ということは、当然働けない状況であることが普通で、年金の中からどれくらい負担しなければならないかは切実な問題と言えます。

要介護1~5の人を対象にしたサービスである介護給付の対象は「居宅介護サービス費」「地域密着型介護サービス費」「施設介護サービス費」など、多岐にわたります。今回は「居宅介護サービス」に焦点を当ててみましょう。

居宅介護サービスを受けた場合の支給額は

居宅介護サービスの対象となるものは、第2回に記載したように「訪問介護」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「デイケア」など数多くあります。まずはその支給限度額や自己負担をする金額について説明していきます。

支給限度額は?

介護度が高かったり、または諸事情などで支給限度額を超えてサービスを受けたりする場合は、全額自己負担となります。不安となるのは支給額の設定が低く、結局全額自己負担のサービスを受けないとならないケースだと思います。

厚生労働省のデータによると、下記の表のように要介護5のケースでも、限度額を超えてサービスを受ける割合は2.9%ですので、現状ではそれほど心配する必要はなさそうです。それでも自分がその中に入らないという保証はありませんので、いくらか余裕を考えておく必要はあるでしょう。

自己負担額は?

自宅などで介護サービスを受ける場合、給付額は各要介護・要支援の度合いによって支給限度額が定められています。その限度額に対し、所得に応じて1割または2割負担します。下記の表は1割負担の額を記載しています。平成30年8月以降は、特に年収が高い場合には3割負担となる予定です。3割負担となる年収は政令で定められます。

  • 要介護別の介護保険支給限度額と平均的な利用率

1割負担が一定限度を超えた場合は?

要介護5のケースを考えてみると、年金が少ない場合、月々3万6,000円は大きな負担です。夫婦で限度枠をフルに使って介護を受けている場合は、その倍になります。そのため年収に応じて1割負担の上限額が設定されています。上限額を超えた場合、申請によりその超えた部分が払い戻されます。覚えておきたい制度ですね。

  • 1割負担の上限額

介護施設ってどんなタイプがあるの?

介護保険の給付額も重要ですが、「高齢になったらどこでどのように暮らすのか」ということは、より大きなテーマでしょう。それによって準備する費用も大きく変わります。

下記の表の通り、高齢者施設にはいろいろなタイプがあります。自立していないと入居できないタイプもあれば、要介護認定を受けていることが前提になる場合もあります。特に民間の施設は、施設名によって一定の基準はあるものの、それぞれの施設で異なります。入居金も、数千万円にもなるものから全く不要のものまで様々です。

  • 高齢者施設の種類

自立が前提の介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは、室内にキッチン・バス・トイレが設置され、住戸内はマンションと同じです。共用施設として食堂や大浴場等があり、家事の負担を少なくできます。一般的に高額ですので、自宅を売却して入居するケースが多いと思います。

介護専用の介護付き有料老人ホームは通常、ワンルームの中にトイレと洗面はあるものの、それ以外は共用施設となります。比較的小規模のユニットごとに食堂が設置されています。小規模のグループに分かれていて家庭的かもしれませんが、中には認知症の方も含まれます。身体的介護が必要なだけの方にとっては、そうした方と暮らす精神面の負担もあります。

介護施設を利用される場合は、ご自身の資産や支給される年金額と、各種施設の内容や居住されている方の雰囲気などを総合的に勘案したうえで決めるとよいでしょう。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。