先日、ドラゴンクエストシリーズの楽曲を手がけたすぎやまこういち氏がお亡くなりになった。
ドラゴンクエストと言えば、「どんなボンクラでもレベルを上げて物理で殴ればいつかは勝てる」という画期的ゲームシステム「RPG」を世に広めたことであまりにも有名なゲームである。
RPGのおかげで、運動ができないのは言うまでもなく、メガネをかけているが頭が良いわけでもなく、風貌と喋り方は絵に描いたようなオタクなのに、クリボーで死ぬし昇竜拳が出せない、という「お前は一体何ができるのか『呼吸』以外で答えよ」という問いに窮してきた子どもが、はじめて「勝利」や「達成」という成功体験を味わうことができたのだ。
もちろん私もそのひとりであり、現代の社会人が「俺は家に生ハムの原木がある人間」であることを心の支えに仕事を乗り切っているように、小学生時代は「わしは家に帰れば世界を救う勇者なんじゃ」と思うことで、「くさった死体」的学園ライフをサバイブしてきた。
ちなみに「くさった死体」というのは、ドラクエに実在するモンスターである。かつて誰かのおじいちゃんだったかもしれないものに対して何たる仕打ちとも思うが、多くのリアルくさった死体たちが、誰かのジジイをメラミすることで自尊心を保っていたのも事実なのだ。
当然BGMも脳裏に焼き付いており、今でもオープニング曲を聞けばテンションが上がるしセーブデータが消える音を聴いたら腋汗がとまらない。
今思い返してみても、「セーブが消えた時専用の音を作ろう」と言い出した奴は子供に対してサディズムが強すぎるのではないかと思う。
ともかく、良くも悪くも思い出深い名曲を生み出したすぎやま氏の訃報はショックであったが、年を取ると昔からよく知っている人が亡くなるという現象が増えてくる。
ファンシーな夢が詰まった「サン宝石」経営危機
しかし、消えるのは人だけではない。
先日、主に女児向け雑貨やアクセサリーを販売していた「サン宝石」が民事再生法を適用したというニュースが元女児たちを震撼させた。
そう言いたいところだが、前述の通り私は小遣いをファミコンカセットに全ツッパしていたので、「サン宝石」と聞くと、アイスの「宝石箱」の方が思い浮かんでしまう、どちらかというと元「やや肥満の小学生男児」だったため、「サン宝石」の記憶があまりない。
そうはいっても「サン宝石」という文字に記憶がないだけで、実物を見れば思い出すかもしれないと思ったのだが、やはり記憶にない。
他の女児たちに比べ、カワイイ雑貨やアクセサリー類に関心がなかったのは確かだが、食い物の臭いがするペンやネリ消しには興味津々であり、与えられればそれなりに喜んだはずである。
つまり、世の中には子供にサン宝石のカタログを与える親と与えない親がいるということだ。
前回「親ガチャ」の話をしたが、単純に経済力のある親とない親しか入っていないわけではなく、「経済力はあるがサン宝石には触れさせない親」などガチャの内容は多岐にわたる。
よって、サン宝石と聞いて「懐かしい」と思える人は、サン宝石的な意味では「当たり」を引いたという自覚を持って生きてほしい。
親ガチャというのは、やや当たりを引いた人ほど当たりを引いたという意識がなく、自分の感覚こそが標準と思い込み、悪気なく他者を傷つける恐れがあるため注意が必要なのである。
ただ、私がドラクエのBGMで期待と腋汗が止まらなくなったように、サン宝石のカタログでずぶ濡れになった元女児、または男児とそれ以外(コンプラ対策)がいたのも事実だ。
よって、サン宝石民事再生の報に嘆く声は多かった。しかし「好きだったのにどうして」という問いに対しては、「だが、だれも買っていなかったのである」というアフロ田中の雑コラ1枚で全ての説明が済んでしまう。
かつてサン宝石が好きだった元女児たちは多くても、現在もサン宝石で買い物をしているという現中年はそこまでいないだろうし、現女児たちがサン宝石を利用しているかというとまず少子化の影響があり、「カタログ販売」という形態も現代っ子たちには届きづらかったのかもしれない。
実体験から予想するサン宝石の可能性
「終了が決まってから惜しまれても遅い」というのも事実だが、「惜しむ声によって復活」があるのも事実である。
また、サン宝石は民事再生法を適用しただけで倒産したわけではない。
私も、入社して半年の会社が民事再生になる、という別に経験しなくてもいい経験をしたことがあるが、民事再生は、営業を続けながら圧縮された債務を返済し再生を図るという方法なので、サン宝石再生の可能性はある。
だが、私がいた会社がどうなったかというと「結局債務支払いが出来ずに倒産」という厳しい結果になっているので、民事再生したからと言って必ず再起できるわけでもない。
現在、再起をはかれるように、現在サン宝石では再生を支援してもらうためのクラウドファンディングを行っており、支援するとかつての興奮が甦る当時のカタログなどの特典が貰えるようだ。
ちなみにこのクラウドファンディングはファンの声がきっかけで行われ、開始即鯖落ち、目標を大幅に超えた支援金を集めている。
今からでもサン宝石を援助したいという元女児やそれ以外の方は一口乗ってみてはいかがだろうか。
ちなみに、私がいた会社は倒産したが、その後別の名前で同じような会社を作るというしぶとさで今も存在している。
サン宝石も、仮に民事再生が上手く行かなかったとしても、「サソ宝石」とか名前を変えて、ファンシーグッズを愛する者たちに夢を与えつづけてほしい。