オムロン ヘルスケアから2021年3月に発売された低周波治療器「HV-F080シリーズ(以下、HV-F080)」。低周波治療器とは思えないスタイリッシュな外観が目を惹く。
「マイクロカレント」と呼ばれる、プロのアスリートの世界でも使用されている治療モードを搭載しているのも特長だ。HV-F080の狙いやデザイン上のこだわりについて、オムロン ヘルスケア グローバル商品事業統轄部 ペインマネジメント商品事業部 出水孝典氏に聞いた。
運動後の身体をケアする「マイクロカレント」搭載マシン
スポーツの分野で、運動後のコンディショニングケアとして使われている「マイクロカレント」。低周波治療の中でも、刺激を感じることのない微弱な電流を使った治療モードだ。
オムロンでは、2018年11月発売の「HV-F601Tシリーズ(以下、HV-F601T)」で初めてマイクロカレントモードを搭載した。HV-F080はそれに続く第2弾で、マイクロカレントモードのほかにも、血行を促進し、筋肉の疲労回復をサポートする「リカバリーモード」、痛みの感覚を緩和する「ペインケアモード」という3つのモードを備え、身体の状態に合わせて選択できる。
HV-F080の発売は、HV-F601Tの利用者からの声がきっかけ。「疲れがたまりやすいふくらはぎや太ももなど下半身をケアしたい」、「ケガが多い関節にも対応してほしい」という要望から製品化に至った。
HV-F080を開発するにあたって、HV-F601Tユーザーへヒアリング。「まずは、どのスポーツにリカバリー需要があるのかを調査しました。その結果、『2カ所同時に使いたい』、『さまざまなスポーツで酷使される、ふくらはぎや太ももなど下肢の大きな筋肉の疲労を和らげたい』、『ケガをしやすい足首やひじ・ひざなどの関節にも使いたい』との声が多くありました」と出水氏。
「さまざまなスポーツで酷使される、ふくらはぎや太ももなど下肢の大きな筋肉の疲労を和らげたい」ニーズに応えるために、HV-F080では大小2種類のパッドを提供している。
筋肉の大きな部位にしっかりフィットさせられる「筋肉用パッド」と、ひじや足首などの関節にもフィットしやすい形状の「関節用パッド」が設計された。出水氏によると、「製品全体の中でもっとも注力して開発した部分」とのこと。
「ふくらはぎなどの筋肉には大きな凹凸があるので、パッドをしっかりフィットさせることが難しく、さらに筋肉の大きさや形状は個人差が大きいことも十分に考慮する必要がありました。そうした難点を解消し、誰にでもフィットする形状を目指して多くの検討を重ねました。その結果、たどり着いたのが筋肉用パッドの4辺に入ったカット形状。フィット感を向上させるために、企画・開発・デザイン部門が一丸となって考え出したものです」(出水氏)
スマホ連携モデルの次世代機に、あえて操作部を設けた狙い
先に発売されたHV-F601Tはコードレスタイプ。本体に操作画面がなく、スマホと連携してアプリ上で操作するのも特徴だ。しかし、HV-F080ではそのスタイルを継承せず、あえて本体に液晶操作部を搭載した。出水氏はその理由を次のように語る。
「HV-F601Tは、『コードレスかつスマホで操作ができ、ポータブルで使いやすい』メリットがある一方で、『本体とパッドが一体型のため、関節には使いにくいことがある』、『スマホが手元にないときもあるため、本体に操作部や画面があったほうがいい』といった声もありました。そこでHV-F080では、それらのニーズに応える仕様になりました」(出水氏)
かくして、マイクロカレントモード搭載という共通点はあれど、HV-F601Tとは別の操作方法を採用することになったHV-F080。ユーザー調査や搭載する機能を考えた結果、インタフェースとして目指した方向は「スポーツをするユーザーにとって、シンプルで使いやすいこと」だった。
「これまでのオムロンの低周波治療器と比較すると、HV-F080は従来よりも若い世代の、スポーツに対して積極的に取り組んでいる方々に向けた製品。医療機器として本格的でありつつも、誰もが使いやすい直観的な操作性を追求しました」(出水氏)
具体例の1つとして挙げられたのは、左右対称になった画面表示だ。出水氏は、「左右2つの電極がある本体の操作をわかりやすくするために、画面表示は左右対称にしました。さらに、それを手に持ちやすいように、『大きすぎず、小さすぎず』なサイズ感を検討しました」と説明する。
外観のデザインは、エッジ(角)が立っていたほうがシャープでスタイリッシュなイメージになる傾向がある。これに対し、HV-F080では「医療機器のような信頼感を与えながらも、適度に丸みを帯びたデザインバランスを検討した」(出水氏)とのこと。
また、出水氏は「機器本体の白と黒のコントラストは、医療機器の信頼感を与えることに寄与します。液晶画面は黒背景に白文字を採用することで、スタイリッシュな印象を与えることを考慮したものです」とその意図を明かした。
既存の低周波治療器とは違う用途をデザインでも訴求
これまでの低周波治療器と言えば、肩や腰のコリや痛みを解消するために、シニアが使うものというイメージが強かった。HV-F080は、低周波治療器がスポーツをする人の筋疲労の回復やケガ予防にも活用できることを伝え、生涯スポーツを楽しみたい人向けに生まれたものだ。
家庭用医療機器でマイクロカレントのプログラムを持っている製品自体が少数派ではあるが、機能的な独自性や優位性のみならず、デザイン面においてもその思いが多数込められている。