米Intelは、台湾・台北で開催されているCOMPUTEX 2014において、モバイル向けの次期主力アーキテクチャ「Broadwell」(開発コード名)をベースとした低電力プロセッサの新しいブランド名を発表した。その名も「Core M プロセッサ」。Intel にとって" M "は特別な意味を持っている。果たしてこのブランドは、モバイルの世界に再び革命を起こせるだろうか。

新たなプロセッサブランド「Core M」がデビュー

コンピュータの在り方を変えたPentium M

Intelは2003年にPentium Mと呼ばれるプロセッサを発表した。開発コードネーム「Banias」で知られる製品だ。同社のモバイルへの本格的な取り組みは、ここから始まるといってもいい。従来は、デスクトップ向けのプロセッサをベースに、クロックの向上を主眼にして開発されていたプロセッサを、モバイルに特化してゼロから作ることを始めたからだ。この発想の転換によって、モバイルプロセッサは、さっさと仕事をすませて、すぐにさぼるという特技を得た。さぼるのがうまいプロセッサは電力を食わないという論理だ。

もちろん、それまでにもモバイル向けのテクノロジーがなかったわけではない。たとえば、ダイナミックに駆動電圧を落とすSpeedStepテクノロジーなどは、2000年にデビューしている。だが、Pentium Mのアプローチは、プロセッサ周辺のみにとどまらない。

Intelは、その周辺回路をまとめた新チップセット「i855」、そして、Wi-Fiモジュール「Intel PRO/Wireless」で構成されるソリューションに対して「Centrino」というブランドを命名した。パソコンメーカーは、この3つすべてをPCに搭載したときに「Centrino」というブランドを冠することができた。

当時のIntelは、Centrinoによって「アンワイヤード」を声高にアピールしていた。モバイルパソコンを電源やLANといったケーブルのしがらみから解き放ち、いつでもどこでもネットワークにつながることを「新しい当たり前」とし、コンピュータの新しい使い方を提案しようというコンセプトを打ち出したのだ。以降、Intelは、世界中のネットワーク事業者、ホテルチェーン、飲食店チェーンなどと共同で、Wi-Fiホットスポットの展開を促進していく。

"M"の革命を再び起こせるか

2003年に始まったIntelのモバイルへの本格的な取り組みは、11年たった今、着実に人々の暮らしに不可欠なものとなっている。誤算があったとすれば、スマートフォンの急速な普及だ。でも、心配はいらない。スマートフォンを使えば使うほど、パソコンの重要性をひしひしと感じることになるからだ。人々は必ずパソコンも必要とする。そして、その受け皿としてインテルは、再び、M をアピールする。それがCore Mプロセッサだ。

新ロゴは、Mを小文字で使っているが、ブランド名は「Core M」と大文字だ。まずは、各パソコンベンダーがホリデーシーズンに製品を提供できるように、ファンレス駆動を想定したYプロセッサから出荷を始めるようだ。プロセスルール14nmに移行するBroadwellはHaswellに比べ、TDPが60%低く、性能は20~40%高いという。

COMPUTEXの基調講演では、このプロセッサを使ったリファレンス機も披露された。2-in-1タイプの12.5型スクリーンで、キーボードを備えながら厚さが7.2mm、重さも670グラムと驚異的なパッケージだ。つい先日、12型スクリーンのMicrosoft Surfaceが800グラムで発表されたが、それをはるかに下回る。

Core Mを搭載するリファレンス2-in-1を公開

新プロセッサの登場によって、こうした画期的な製品が続々登場するというのは感動的だ。各社は創意工夫で独自のパッケージを開発して製品にするが、リファレンス機よりもずっと魅力的なパソコンが登場するのは間違いない。個人的には、NECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」が、このプロセッサをどう使うかが気になっている。

Mの一文字がモバイルの世界に革命を起こす。11年前に始まった新しい当たり前が、普通の当たり前になった今、Intel の次の一手を象徴するのがCore Mプロセッサだといえるだろう。基調講演の会場やプレスイベントの会場には、当時、イスラエルでのBanias開発を陣頭指揮していたムーリー・イーデン氏の顔も見つけることもできた。ちなみにPentium Mのプロセスルールは130nmだった。きっと、感慨深い想いで、Core Mプロセッサのデビューを見つめていたにちがいない。

Core Mの発表を見守るMooly Eden氏

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)