2番目に注目されたのは19時31分で、注目度76.2%。松前道廣(えなりかずき)が大柄な家臣を相手にシューティングゲームに興じるシーンだ。

「お許しくだされ! 何とぞお許しくだされ!」松前藩の江戸屋敷からは、三味線と鼓の音に混じって男の悲鳴が聞こえてくる。庭で暴れ出す悲鳴の主を、他の家臣たちが取り押さえる。「まこと、熊のごとき大男であることよ。果たしてそなたは人か熊か、確かめねばな」道廣が薄ら笑いを浮かべながら鉄砲に弾を込め、大柄な家臣に狙いを定めた。

田沼意次(渡辺謙)は目を伏せ、一橋治済(生田斗真)はうるさそうに耳をふさいだ。外様の雄である島津家の当主・重豪(田中幸太朗)は、ゆがんだ笑みを浮かべている。「お許しくだされ! 何とぞお許しを! あ…あ…ああっ」と叫ぶと、男は恐怖のあまり気を失った。「どうやら、熊ではなかったらしいのう」「熊は鉄砲を向けられたごときで気を失いませんからのう」治済も重豪も人の命を何とも思っていない。「これしきのことで。武士の風上にも置けぬ!」道廣が不機嫌に引き金を引くと、乾いた銃声が夜の闇に消えた。

「道廣が群を抜いて怖すぎ」

このシーンは、えなりかずきの非道っぷりに視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。

初登場時と同様に家臣に鉄砲を向ける道廣だが、三味線や鼓を奏でる女中たちが別段驚いた様子を見せないことからも、もはや松前藩では恒例行事となっていると推察される。SNSでは「家来に向けて火縄銃を構えている道廣の目、すごい迫力があるな」「家臣があれだけ怯えているってことは、きっと脅しとかじゃなくて本当に撃ったことがあるんだろうな…」「道廣が群を抜いて怖すぎて忘八が怖くないなと思えてくるのおかしい」と、松前藩江戸屋敷の異様な光景に多くのコメントが集まった。

松前道廣を演じるえなりは、JDSに所属する東京都出身の40歳。芸歴は長いが大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。『渡る世間は鬼ばかり』(TBS)など子役時代のイメージとは全く違う道廣の演技はネットを中心に大いに話題になっている。あまりのインパクトに、X(Twitter)では「えなりかず鬼」というハッシュタグまで登場している。

道廣を象徴するアイテムである鉄砲だが、1543年にポルトガルから種子島に伝わって以来、またたく間に日本中に広まった。戦国時代末期には50万丁以上が国内に存在していたといわれ、当時の日本は世界最大の銃保有国とされていた。

江戸時代の初期には、争いに鉄砲を含めた武器を用いることは禁止されていたが、害獣に対して用いることは認められていた。しかし、第五代将軍・徳川綱吉の時代の1687(貞享4)年に生類憐れみの令の一環で施行された「諸国鉄砲改め」により全国規模で厳しい規制が敷かれることになる。また、治済と庄司が夢中になっていた楽器は「ムックリ」と言う。これはアイヌ民族の伝統的な楽器で、口琴の一種。1本の竹から作られ、フレームを歯に当てて持ち、指でリードを弾いて演奏する。女性が演奏することが多かったそうだ。大人気マンガ『ゴールデンカムイ』にも登場しており、伝統芸能の披露や音楽イベントなどで演奏される機会が増え、土産物としても人気が高まっている。