ドイツのベルリンで9月1日に始まったエレクトロニクスのイベント「IFA 2023」に合わせて、レノボはベルリン市内のホテルでプライベートショーを開催。レノボ初となるWindows搭載ハンドヘルド型のポータブルゲーミングコンソール「Lenovo Legion Go」など、ゲーミングブランドのLegion(レギオン)シリーズから3種類の新製品を発表しました。本機のオプションとしても使えるアイウェア型OLEDディスプレイ「Lenovo Legion Glasses」とともに、会場で体験してきた筆者がレポートします。

  • Legionシリーズのカッティングエッジなゲーミングギアが一斉に発表!

Windows搭載のポータブルゲームPC「Legion Go」

Lenovo Legion Goは、欧州では11月から799ユーロ(約12万5,000円)で販売を予定しています。

中核のベースモジュールには8.8型QHD+(2,560×1,600画素)のIPS液晶ディスプレイを搭載。10ポイントタッチスクリーンに対応する本体は、幅210×高さ131×奥行き20mm、重さは640g。背面に空冷ファンのダクトやキックスタンドがあります。ワイヤレス通信はWi-Fi 6EとBluetoothに対応。スピーカーとマイクを内蔵していますが、カメラは非搭載です。

  • ポータブルゲーム機「Legion Go」

左右のコントローラーは着脱可能となっており、ジョイスティックのほか、左右それぞれに十字キーやABXYボタン、ハプティクスセンサーや6軸ジャイロセンサーを内蔵しています。背面のボタンを押しながら上方向にスライドさせるとベースモジュールから外れて、右側コントローラーは光学式マウスとしても使えます。

  • ベースモジュールから左右のコントローラーを取り外し可能

  • 右側コントローラーはワイヤレスマウスにもなります

  • ベースモジュールはキックスタンドで自立します

Lenovo Legion Goは、レノボが独自に開発した「Legion Space」をいうダッシュボードの役割を担うソフトウェアを搭載しています。本体を起動すると同時にLegion Spaceが立ち上がり、クラウドゲーミングストアへのリンク、購入したゲームのライブラリ、Androidエミュレーターなどがメニューに並びます。

  • ゲーミングに関わる機能にすばやくアクセスする「Legion Space」

最大輝度が500nitsのディスプレイは視認性が高く色鮮やか。IPS液晶なので、少し斜めの方向から見ても映像の視認性が落ちません。アスペクト比が16:10という縦方向にも広い画面なので、8.8型サイズながら没入感も十分。144Hzの高リフレッシュレート表示に対応し、動きの速い動画を滑らかに表示します。

プロセッサは、グラフィックスにAMDのRDNAを伴うAMD Ryzen Z1 Extreme。グラフィックスの情報量が豊富なカーレーシングゲームを試遊してみましたが、映像はストレスなくスムーズに動きます。コントローラーはジョイスティックがやや小ぶりに見えましたが、緻密な操作に対するレスポンスが鋭く正確。小気味よいプレイ感覚を味わいました。

  • レノボのプライベートショーに参加して、Legionシリーズのゲーミングデバイスとアイウェア型ディスプレイを体験してきました

本体には最大1TB(512GB/256GBも選択可能)のPCIe Gen4 SSDを内蔵し、microSDカードによるストレージ拡張もサポート。上下側面にはUSB Type-C端子があり、同時期に発売されるLenovo Legion Glasses(後述)など、DisplayPort入力に対応する外部ディスプレイデバイスに接続すれば、Lenovo Legion Goのゲーム映像を大きな画面に映せます。

アイウェア型ディスプレイ「Legion Glasses」はLegion Go以外でも使える

Lenovo Legion Glassesは、ディスプレイにmicro OLEDを搭載するアイウェア型ディスプレイです。解像度は片目1,920×1,080画素ずつ。テンプル(つる)のところに、パワフルなサウンドを鳴らすスピーカーを内蔵しています。

  • アイウェア型ディスプレイ「Legion Glasses」

本機はLenovo Legion Goのオプションとして、欧州では10月から499ユーロ(約78,000円)で販売されるデバイスですが、Lenovo Legion Go以外にもDisplayPort Altモードに対応したPCやゲーミングコンソールでも使えます。本体に固定されている長さ1.2mのUSB Type-Cケーブルを接続すると、映像が表示されます。

筆者はメガネをかけた状態でLegion Glassesを装着してみましたが、映像表示は圧倒的に滑らかでユニフォーミティにも富んでいました。メガネの上からでもかけ続けることができなくもないですが、やはりなるべくなら直接装着したいところ。

パッケージには、着脱可能な度数補助レンズが付属しています。欧州では、眼科医の診断書をもとに、ユーザーの度数に合わせた補助レンズを提供するサービスも行うそうです。ほか、2種類の交換可能な鼻パッドが付きます。今回は短時間の試用でしたが、筆者は立体映像に酔ったり、本体の締め付けが辛く感じたりすることはありませんでした。

  • 着脱可能な度数補助レンズ。医師による診断書をもとに、カスタムオーダーにも対応するそうです

ゲーミングノートは水冷式ヒートポンプ内蔵など見どころ満載

Legionシリーズのもうひとつの新製品は16型画面のゲーミングノートPC「Lenovo Legion 9i」です。欧州での販売価格は4,499ユーロから(約70万円)という高級モデルです。発売開始は10月の予定。

とにかく見どころいっぱいなゲーミングノートPCですが、押さえておきたいポイントが3つあります。

  • 最強ゲーミングノート「Lenovo Legion 9i」

ひとつは世界初(レノボ調べ)の水冷方式ヒートポンプを内蔵したことです。熱設計電力は最大230Wとしながら、本体の厚さは18.9mm、重さは2.56kgに抑えています。

水冷方式のほか、トリプルファン設計の空冷方式によるヒートポンプも内蔵。これを専用のハードウェアAIチップで制御することによって、長時間でも安定したパフォーマンスを発揮するとしています。

注目ポイントの2つめ。徹底的にカスタムメイドしたヒートポンプの搭載によって本体の重さが増したぶん、天板に「フォージドカーボン」(炭素繊維の加工素材)を採用して全体の質量バランスを整えています。フォージドカーボンは、堅牢性に富みながら抜群の軽量性能を実現する素材です。フォージドカーボンは製造の過程でカーボンチップのパターンが変わるため、Legion 9iは「ひとつとして同じデザインがないノートPC」ということになります。

  • 天板には独特な模様が美しい「フォージドカーボン」を採用

3つめは、高性能なディスプレイ。ミニLED光源を採用した液晶ディスプレイは、解像度が3.2K(3,200×2,000画素)、アスペクト比は16:10です。最大リフレッシュレート165Hzまで対応し、動きの速い映像やゲーム画面を滑らかに表示します。1,200nitsの高輝度表示をカバーしたことで、VESA DisplayHDRやDolby Visionをサポートします。

ほかにも、Wi-Fi通信がWi-Fi 7(理論上の最大値は46Gbps)に対応していたり、パワフルなオーディオシステムを一体化していたりと、贅を尽くしたフラグシップモデルです。

スムーズな裸眼立体視も可能なクリエイター向け27型モニター

もうひとつの新製品は、クリエイター向けの「ThinkVision 27 3D Monitor」です。裸眼による立体視に対応しています。仕組みとしては、本体のフレーム下側に内蔵する視線トラッキングセンサーによって、ディスプレイと向かい合っているユーザーの両目の位置を判定。正面から向かって左右20度ずつの角度まで、ストレスのない高精細な裸眼立体視を実現するといいます。欧州の一部地域など限定して販売される予定です。

  • 27型の裸眼立体視に対応する「ThinkVision 27 3D Monitor」

ディスプレイ本体には、視線トラッキングセンサーを制御するカスタムプロセッサを内蔵。レノボの担当者は、「ディスプレイをPCに接続して、PC側の処理性能に頼ると3D画像のレンダリング処理に遅延が発生してしまうので、専用チップを内蔵した。2D/3D表示の切り替えがとてもスムーズなので、目や視覚情報を処理する脳への負担が少ない」として、仕様の意図を説明しています。

価格が2,999ユーロ(約47万円)と高価なディスプレイですが、レノボの担当者は「自然な精細感と色合いなど、3Dを含む動画や画像のレンダリング作業に求められる要素を意識して作り上げた」と画質の特徴を語っていました。

実機を視聴してみると確かに質感がキメ細かく、フラットなカラーバランスに整っています。「高価なディスプレイですが、3Dコンテンツの制作作業だけでなく、通常の2Dコンテンツのワークフローにおいても優れたパフォーマンスを発揮するモニターとして、コストパフォーマンスの高さに注目してほしい」(レノボの担当者)と呼びかけていました。

現地で聞いたところによると、今回ベルリンで発表した新製品群は、日本市場への導入も検討しているとのこと。未定ではありますが、特にハンドヘルド型ゲーミングコンソールの「Lenovo Legion Go」は、ゲーミングファンから関心を集めるでしょう。期待して待ちたいと思います。