Dynabookは7月18日、13.3型モバイルノートPC「dynabook X83 CHANGER」(CHANGERは愛称)を発表しました。軽量モデルで800g(目標値)、本体の厚みが17.7mmと薄型軽量ながら、ユーザー側でバッテリーを交換できる「セルフ交換バッテリー」機構を備えたことが最大の特徴です。

  • dynabook X83 CHANGER

  • ユーザー側でバッテリーを交換できる「セルフ交換バッテリー」機構を搭載。バッテリー故障時のダウンタイム削減を目指す

ユーザー自身でバッテリー交換することで、これまでメーカー側での修理が必要だったバッテリー故障時のダウンタイムをほぼ無くし、利便性を高めました。法人向けの提供で、同日から受注を開始。9月末から順次出荷を開始します。価格はオープンで構成などに寄りますが、10万円台半ば~30万円弱ほどの見込み。

なお先にお伝えしておくと、「dynabook X83 CHANGER」は、時期は未定ながらコンシューマ向けモデルの予定もあるとのこと。現在カラーバリエーションや仕様の調整を進めていると製品発表会で明かされました。

  • 現行カラーはダークテックブルー。コンシューマ向けモデルでは変化があるのだろうか

バッテリーはLとSの2種類、搭載ポートに違いも

「dynabook X83 CHANGER」は13.3型で16:10アスペクト比を採用したモバイルPC。バッテリー交換機構のほかにも、1.5mmストロークと2mmストロークのどちらかを選べるキーボード、薄型軽量ながらMIL規格10項目をテスト予定の耐久性、Wi-Fi 6Eの内蔵(Windows 11 Pro選択時のみ)といった特徴があります。

バッテリーは、駆動時間の長さを重視したLと、軽さを重視したSの2種類を用意。バッテリー容量の違いにより、重さやインタフェース数など、スペック的な変更点がいくつかあり、これに加え上記のキーストロークなど、カスタマイズ項目は多岐にわたります。搭載ポートに違いがあるため、Lバッテリー搭載モデルに、Sバッテリーを搭載することはできません(逆は可能)。

dynabook X83 CHANGER
  Lバッテリー(4セル) Sバッテリー(2セル)
重さ 約950g 約800g
駆動時間 約24時間 約12時間
本体の厚み 約17.7mm~約17.9mm
搭載USB Thunderbolt 4(USB4 Type-C)×3、USB Type-A×2 Thunderbolt 4(USB4 Type-C)×2、USB Type-A×2
  • Lバッテリー搭載モデルとSバッテリー搭載モデルでは、USBポート数に違いがある。上がSバッテリー搭載モデル、下がLバッテリー搭載モデルで、Sバッテリー搭載モデルではThunderbolt 4(USB4 Type-C)が1つ少ない設計になっている。

バッテリ―交換はドライバーだけで可能

着脱バッテリーには、背面2カ所のネジをドライバーで外し、バッテリーカバーを取るとアクセス可能。ロック解除のスライドボタンを押しながら外せます。

ネジはバッテリーカバーから完全には外れず、紛失を防ぐ設計。また、細かい部品などがバッテリー換装時に紛れこんでしまった場合に備え、バッテリーの破損を防ぐ金属板をバッテリー両面に配置。また絶縁性に優れた素材で保護するなど、安全に配慮しました。

バッテリー駆動時間はバッテリーLで約24時間、バッテリーSで約12時間(JEITA 2.0)。30分で容量の40%をチャージできる「お急ぎ30分チャージ」にも対応します。

  • 本体の裏側。なおPCの発表会でよく見かけるこの透明筐体、実際に組み立てたときの配線をチェックするためだという

  • 2カ所のネジをドライバーで外すとバッテリーカバーを開けられる。ネジはバッテリーカバーから完全には取れない仕様

  • スライド式のバッテリーロックを押して解除しながら、バッテリーを外す

  • バッテリーを取っている様子。基板エリアとは完全に分かれており、基板に触ってしまう心配もないとのこと

  • セルフ交換バッテリーの仕組み

ファンの羽の数を倍増、冷却性能も強化

プロセッサはCore i7-1360Pやi5-1340Pなど、第13世代Intel Coreを搭載し、vPro版も選択可能。

Dynabookではおなじみの、CPUパフォーマンスを高い状態で維持する独自技術「Dynabook エンパワーテクノロジー」にも対応し、CPU冷却用のメインファンは前モデルにあたるG83と比べて羽の数を倍増させたほか最大回転数も上げ、サブファンが付いたデュアル仕様で冷却性能を高めました(G83はシングルファン)。

加えて冷却性能を維持するため、冷却フィン部分に溜まったホコリをユーザー自身が掃除できる「ダスト・クリーニング機構」も新採用しています。エアダスターなどでホコリを吹き飛ばせるよう、ネジ止めされたフタを外せる機構です。

  • 新たにWファン・Wフィン仕様になり、安定して高いCPUパフォーマンスを出せるエンパワーテクノロジーに対応。右側のメインファンは、G83と比べ羽の数を倍増させ、最大回転数も高めている

  • Dynabook エンパワーテクノロジーの概要

  • 冷却フィン部分に溜まったホコリをユーザー自身が掃除できる「ダスト・クリーニング機構」

ディスプレイは文書などを表示しやすい16:10

ディスプレイは13.3型WUXGA液晶(ノングレア)。アスペクト比は16:10とやや縦長になり、タッチパネルの有無を選択できます。180度開けるヒンジを採用したほか、閉じた状態から指1本で開ける“ワンハンド・オープン”も可能です。

  • ディスプレイは13.3型の16:10で、少し前まで主流だった16:9と比べ縦方向の表示エリアが増えている

  • 180度開ける「180度オープンディスプレイ」

  • ディスプレイの解説

キーストロークが1.5mm/2mmの2つを選べる

上にも書いた通り、キーボードは1.5mmストロークか、2mmストロークかを選べる、一般的なモバイルPCとしては珍しい選択ができます。

この2種類、ストロークの違いで打鍵のフィーリングや筐体の厚みが変わるため、モデルとしては“別物”と言っていいかもしれません(ちなみに1.5mmストロークモデルが9月出荷、2mmストロークモデルが12月末の出荷です)。

なお、1.5mmストロークモデルの本体厚は17.7mm、2mmストロークモデルの本体厚は17.9mmとのこと。2mmモデルは、1.5mmモデルをベースに単純計算すると18.2mmとなるハズですが、C面(キーボード面)の厚みを調整することで、17mm台に抑えたそうです。

  • キーボード面(写真は1.5mmストロークモデル)。タッチパッドも独立ボタン付きか、クリックパッドかを選択できる

  • 2mmストロークキーボード(右)と、1.5mmストロークキーボード(左)。打鍵感も違いがあり、2mmの方が深く押し込める

堅牢性では米国防省が制定した調達基準「MIL規格」に準拠した耐久テスト10項目(落下/太陽光照射/高温/低温/衝撃/粉塵/振動/高度/温度変化/湿度)を実施予定。

セキュリティ面では、指紋認証センサーやスライドシャッター付きWebカメラのほか、サイバー攻撃からPCを保護するNIST SP800-147/155/193への準拠・NIST SP800-171への取り組み、独自のセキュリティマネージャを搭載。

このほか新商品に合わせて、サービス・ソリューションも強化。交換用バッテリーが必要になったら届ける「バッテリー交換サービス」を提供するほか、PCの運用・保守・管理をサポートする「LCM運用サービス」を拡張し、バッテリーの劣化度合いといったPCの不調を検知して表示できる機能も加わりました。

  • MIL規格は10項目をテスト予定

dynabook X83 CHANGERの主な構成

  • プロセッサ:第13世代 Intel Core
  • OS:Windows 11 Pro搭載モデル/Windows 10 Pro搭載モデル※Windows 11 Proダウングレード権行使
  • バッテリー:L/S
  • インタフェース:Thunderbolt 4(USB4 Type-C)×3(バッテリーL時)またはThunderbolt 4(USB4 Type-C)×2(バッテリーS時)、USB Type-A×2、HDMI、microSDスロット、LANコネクタ、マイク/ヘッドホン
  • メモリ:32GB/16GB
  • ディスプレイ:WUXGA液晶/タッチパネル付きWUXGA液晶
  • ストレージ:512GB SSD/256GB SSD
  • Webカメラ:シャッター付き(約92万画素/約200万画素)
  • その他選択項目:LTE(4G)対応ワイヤレスWAN、指紋センサー、顔認証センサー、Microsoft Office Home & Business 2021/Microsoft Office Professional 2021

バッテリー絡みの不満を解決、「ゲームチェンジャー」を狙うPC

Dynabookの調査によると、モバイルPCを使う際の不満点1位は性能面(起動・処理速度への不満)ですが、2位にバッテリー電源への不満がランクインしたといいます(2023年5月Dynabook調べ。n=2,400、15~69歳男女)。

挙げられた具体的な不満は「バッテリー駆動時間が短い」「バッテリー交換が自分でできない」「バッテリーの消耗が激しい」といったもの。すでに携帯性や高性能の要素を製品に取り入れているという同社が、バッテリーへの不満を解決すべく今回投入するのが「dynabook X83 CHANGER」です。

  • 「dynabook X83 CHANGER」を掲げるDynabook 執行役員 国内PC事業本部長の渋谷正彦氏

ユーザーがバッテリー交換する機構を組み込むことで、バッテリー故障時のダウンタイム(PCが使えない時間)を大幅に削減する狙いです。これまで修理に出す場合は、代替機の準備やPCの送付、メーカーでの交換作業、データ移行や動作確認といった手間が発生し、2~3日間のダウンタイムが発生していました。

かつての国内PCメーカー製ノートPCでは、バッテリーやメモリ、ストレージなどをユーザーが換装できる製品が主流でした。しかし、薄型軽量ノートPCでは重さの削減やデザイン性といったバッテリー一体型のメリットが注目され、最近では少なくなっています。直近では、2023年6月に登場したパナソニックのモバイルノートPC「Let's note QR」がバッテリー換装機能を備えています。

  • Dynabook 執行役員 国内PC事業本部長の渋谷正彦氏(左)と、Dynabook 執行役員 国内PC事業本部長の渋谷正彦氏

Dynabook 執行役員 国内PC事業本部長の渋谷正彦氏によると、「dynabook X83 CHANGER」の開発が始まったのは1年ほど前。ビジネスユースでバッテリー劣化による修理が発生したとき、手元からPCがなくなることが課題だ、という利用者の声を重く見て、バッテリーを利用者が換装できるビジネス向けPCの企画開発を進めていったといいます。

「バッテリーを着脱させることで部品点数が多くなり、重さや厚みが出るものの、薄く軽く堅牢性を損なわない上で、ユーザーがバッテリーを替えられるようにした。ダウンタイムの最小化と、パフォーマンスの最大化を目指した」と話しました。

愛称の“CHANGER”については、Dynabook 国内PC事業本部 事業本部長附 中村憲政氏が「ダウンタイムを最小化することで、高いビジネスパフォーマンスを発揮し、この1台がゲームチェンジャーとなるビジネスマンをサポートする」と紹介しました。