SeagateのNAS向けHDDシリーズ「IronWolf」から、これまで最大容量モデルだった18TBを上回る20TBの「IronWolf Pro 20TB」が登場しました。12月17日から発売されており、年末のデータ整理や録画機器の新調に役立ちそうです。今回実機をお借りできたので、パフォーマンスをチェックしてみました。
18TBモデルをレビューしたときもその容量の大きさに驚きましたが、1年で約1割増となる20TBの大台に突入。参考価格も72,800円とかなりのものですが、それでもSSDに比較すれば圧倒的な費用対“容量”を実現しています。4ベイ以上のNASに向くのはもちろん、2ベイしかないエントリー向けNASでRAID 1を構成したとしてもおよそ20TB。冗長性を確保しつつ、可能な限り大きな記憶域を実現するにあたって強力なパーツとなりそうです。
Seagate製の一部の対象モデルでは、このデータ復旧サービス「Rescue Data Recovery Services」が付帯しているのが大きなポイント。破損したHDDからの復旧はとても大きな出費になりがちですが、対象モデルならこのサービスを利用可能。なんと成功率は95%とのことで、ラボ内でデータ復旧を1回行い、暗号化した上で返却してもらえます。なお、依頼にはまずサポートからの問い合わせが必要です。
ともあれ、今回はAMD X570プラットフォームにWindows 11をインストールしたPCで性能をチェックしてみました。製品名には20TBとありますが、それは表記の話。PCに接続し、実際に割り当てたところ実使用領域は約18.1TBでした。最大転送速度は285MB/sを実現するとのことで、高速性能にも期待がかかります。
実容量も把握できたところで、各種ベンチマークテストを用いてかんたんに性能を計測しました。使用したのは「PCMark 10 Data Drive Benchmark」「CrystalDiskMark 8.0.4」「ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1」「HD Tune Pro 5.75」です。
シーケンシャルな読み書き性能は公称値の285MB/sをしっかり満たしており、18TBモデルよりもほんのわずかに速くなっているようです。データ量による速度変化をチェックできるATTO Disk Benchmarkによると、8KB以上で十分な転送速度に届いていました。
さらにHD Tune Proでプラッタの読み書き位置における速度変化をチェックしたところ、最外周部で約280MB/sの最高速度となった後、最内周部で150MB/sにゆっくり減速していく様子も確認できました。もっともHDD内部におけるデータの配置位置はユーザーに制御できるものでもないので、あまり実際のパフォーマンスに影響はないと思います。
CMRで20TBの大容量を実現
ドライブあたりの容量を増やしていくため、これまで広く使われてきたCMR(Conventional Magnetic Recording)からSMR(Shingled Magnetic Recording)への移行が進むものかと思われましたが、なんと本製品では20TBの容量をCMRで実現している点がポイント。転送速度は公称通り約280MB/sと高速で、巨大データの移行も快適に行えそうです。
しかし、大きな容量があるからと言って1つのHDDに全てのデータを集約して運用しないようにしましょう。ここまで高価格・大容量のデバイスを扱うユーザーなら当然ご存知とは思いますが、HDDは消耗品。一度に20TBものデータが消えてしまえば目も当てられないので、冗長性を高めて運用することが重要です。