近ごろ人気のイヤホンといえばワイヤレス、それも左右をつなぐケーブルすらない「完全ワイヤレス」。さらに周囲の雑音を取り除く「ノイキャン」が求められるようになり、いまや「ノイキャン完全ワイヤレス」が売れ筋となっています。そのトレンドにバッチリ合った新製品「Oppo Enco Free2」(13,980円)を入手、実力を検証しました。

ハイブリッド方式ANC対応、高いカスタマイズ性も

OPPO Enco Free2(オッポ アンコー・フリーツー)は、ANCことアクティブ・ノイズキャンセリングに対応した完全ワイヤレスイヤホン。スマートフォンメーカー、それも高コスパで知られるOPPOが手がけたイヤホンなだけに、充実した機能が特長です。

  • パーソナライズANCを装備した完全ワイヤレスイヤホン「Oppo Enco Free2」

ANCはフィードフォワード+フィードバックのハイブリッド方式を採用、最大-42dBというノイズキャンセリング性能を実現しました。演算とフィルタ処理を担うBluetooth SoCは公表されていないものの、3コアチップ搭載とうたわれていることから、最新のSoCを採用したと推測されます。最大80msという低遅延のゲームモードをサポートするところも、SoC性能の高さゆえでしょう。

そのANC、他社製品とひと味違います。センサーとマイクを利用して耳の構造やイヤーピースの装着状態を検知し、最適なノイズキャンセリング効果を自動的に調整してくれる「パーソナライズ」に対応しているのです。センサーやマイクをイヤホンの脱着検出やノイズ低減に活用するイヤホンは珍しくありませんが、装着状態がANCに適しているかどうかを確認でき、ANC効果を高めることにも応用されるというのは斬新です。

操作性にもひと工夫が。Enco Free2の前モデル(Enco W51)は、OPPO製スマートフォンであればタッチセンサーの機能アサインが可能だったものの、iPhoneなど他社製スマートフォンには対応していませんでした。今回はAndroid・iOS向けに無償アプリ「HeyMelody」を提供、シングル・ダブル・トリプルタップ、長押し、スライドに機能を割り当てることができます。

肝心のサウンドに関しては、デンマーク・Dynaudio(ディナウディオ)の協力を得て音作りがなされています。Dynaudioといえばスピーカー、最近ではXeo(シオ)などワイヤレス対応モデルが増えているものの、元々音楽スタジオなどプロ向けのモニタースピーカーで知られたブランドですから、10mm径のダイナミックドライバーをどのような音に仕上げたのか期待が高まります。

  • 充電用USBケーブルと3サイズのイヤーピースが付属しています

イヤホンの装着状態をアプリで確認

Enco Free2は、一部OPPO製スマートフォンでのみ利用できる機能は存在するものの、それはタッチ操作のカスタマイズがシステム標準の設定アプリに組み込まれたことと、3ステップでペアリングが完了する「クイックペアリング」が利用できるかどうかにすぎません。ハイブリッド方式のノイズキャンセリングはもちろん、パーソナライズやタッチセンサーのカスタマイズといった機能は、iPhoneや各社のAndroidスマートフォンと専用アプリ「HeyMelody」で利用できます。

連続再生時間はイヤホン単体で最長6.5時間。充電ケース併用時で最長30時間(ノイズキャンセリングオフ時)です。接続方式はBluetooth 5.2、対応コーデックはAACとSBC、IP54の防塵・防滴性能を備えています。

  • 専用アプリ「HeyMelody」。ファームウェアアップデートにも対応しています

そこで今回、組み合わせるスマートフォンにはiPhone 12 Proをチョイス、アプリを試しつつサウンドをチェックしました。

まずは装着性から。付属のイヤーピースはシリコン製でS・M・Lの3サイズと、ノイズキャンセリング対応のイヤホンとしては数が控えめなことが気になるものの(ノイズ低減にはパッシブノイズキャンセリング性能、つまり耳との密着性が影響するためイヤーピースのフィット感が重要)、フィット感そのものは良好です。イヤホンは片側4.4gと軽量なためか、装着疲れの少なさも印象に残ります。

操作性はかなり洗練されていると言っていいでしょう。操作はタッチ式で、突き出た軸(ステム)の表面を軽くタップすることで行いますが、反応が過敏すぎないため、誤操作が少ないのです。センサーが過剰に反応するイヤホンだと、装着ズレを直そうとイヤホンに触れた途端に一時停止されてしまう――といった事態が起こりがちですが、Enco Free2にはそれがありません。ボリューム調整でイラつかずにすむことは、かなり高得点です。

  • 軸部分にタッチセンサーを搭載、反応が過敏すぎないためストレスなく使えます

ノイズキャンセリングの効果を試す前に、イヤホンのフィットテストを実施しました。手順はシンプル、Enco Free2を装着した状態でHeyMelodyアプリの「イヤホンのフィットテスト」を開けばOK。再生ボタンをタップするとチャイムの音が聞こえはじめ、数秒ほど待って左右とも「良好」と表示されれば完了です。装着に問題がある場合は「普通」などと表示されるため、「良好」になるまでイヤホンの位置を微調整します。正しく装着しないとノイキャンの効果が落ちるといわれても……と悩むユーザーにとって、客観的な判断材料になるはずです。

肝心のノイキャンですが、あらゆる帯域に効果があるというタイプではありません。換気扇の音(ジェット飛行機の音と周波数帯域的に多くの共通項があります)は穏やかになるものの、回転音に含まれる中高域部分は残ります。「ゴーッ」という音が「シャー」に変わる、といえばわかりやすいでしょうか。人の話し声についても同じ傾向で、ある程度ボリュームダウンされるものの、ノイキャンのオンオフに関係なくサ行・子音が残る印象です。ノイズキャンセリングの最適化(パーソナライズ)は一定の効果を実感しましたが、傾向に変わりはありません。

  • フィットテストを実行したところ。緩めに装着していると「普通」と判定されます

  • 外耳道の反響音を集めるなどしてパーソナライズを実行すると、ノイズキャンセリングの効果を最適化できます

ただし、イヤーピースを変更するとノイキャン効果が改善されました。付属のイヤーピースはやや薄型ですが、若干厚めのものに変更したところ、換気扇で残る「シャー」の音が一段階、下がったように感じられました。Enco Free2のステムは楕円形のため、ジャストフィットするイヤーピースを見つけるのはひと苦労ですが、フィット感を高めれば本来のノイキャン性能を引き出せます。

iOS版ミュージックアプリとApple Musicでロスレス音源を中心に試聴しましたが、Enco Free2のサウンドキャラクターは「快活でありつつも繊細」という印象です。パット・メセニー・グループの『オー・レ』では、リバーブがかかったギターの音が心地よく紡ぎ出され、ハイハットワークも細やかで解像感の高さが感じられます。ベースがやや強調されてはいるものの、過度というほどではありません。ピアノの浮遊感も心地よく、特に中高域にかけての繊細さが感じられます。

ベストマッチは、ボーカルありのポップスでしょうか。paris matchの『Saturday』では、ボーカル・ミズノマリらしいシルキーな湿度感ある声がいい感じ。リズムギターのキレ、ブラスセクションの光沢など、全体のバランスもよく、リラックスして楽しめます。

再生面で気になったのは、HeyMelodyアプリのイコライザー機能。いわゆるグライコではなく、クラシックとダイナミックバス、ヴォーカルを強調、クリアという4つのプリセットから選ぶ形式で、しかも選択肢に「オフ」が見当たりません。イコライザー機能を充実させたアプリを提供するイヤホンが増えるなか、惜しまれるところです。

  • イコライザー機能には「オフ」が見当たりません

ハイブリッド方式で最大-42dBというスペックと、効果を最適化するパーソナライズ対応のノイズキャンセリング機能を備えた「OPPO Enco Free2」。確実に装着されているか検出するフィットテスト機能も装備するなど、ノイキャンイヤホン初心者でも効果が出やすいよう工夫されているという印象を受けました。音質面もしっかり、バランスのとれたサウンドチューニングを実感します。1万円台前半という価格からすると、かなりのコストパフォーマンスモデルであることは確かです。

また、同じタイミングで発売された完全ワイヤレスイヤホン「OPPO Enco Buds」は、ノイキャン非対応でドライバー径は8mmと、Enco Free2の弟分的存在ですが、通話時ノイズキャンセリング(自分の声を通話相手に鮮明に届ける機能、音楽再生時のノイズ低減効果はありません)を搭載するなど内容は充実。こちらは4,480円と手ごろですから、気軽に使うならいい選択肢になりそうです。

  • OPPO Enco Free2と同じタイミングで発売される兄弟機「OPPO Enco Buds」