コードレス掃除機は「ダイソン」という人も多いですが、そんなダイソンが2021年4月に発売した新製品が「Dyson Omni-glide(オムニグライド)」(以下、Omni-glide)です。ダイソン初のダブルブラシタイプの掃除機、その使い心地はどうなのか? 詳しくレビューします。
最大の特徴は、ヘッド内に2本の回転ブラシを内蔵していること。ヘッドを前後だけではなく、左右や斜め方向など360°に軽い力で動かせます。ダイソン初のダブルブラシタイプの掃除機、その使い心地はどうなのか? 詳しくレビューします。
従来のダイソン掃除機とは異なる掃除感覚
まずはOmni-glideの基本性能から。注目はデザインの変化です。Omni-glideは、ブラシ数のほかにも、さまざまな点で従来のダイソン製コードレス掃除機とは異なったデザインを採用しています。
ブラシの数以外でとくに変わったと感じるのがハンドル位置。従来のダイソン製コードレス掃除機は、本体最上部にモーターやダストビンといったメインユニットを配置し、メインユニットから垂直にハンドルが飛び出す形でした。
今回のOmni-glideはメインユニットが本体中央にあり、メインユニットから出ている棒状のハンドルを握って掃除します。また、ダイソンのコードレス掃除機といえば「トリガーを握っている間だけ吸引する」操作性が特徴的でしたが、Omni-glideはボタン式を採用。ボタンの形状は2020年10月に発売した「Dyson Micro 1.5kg」と同じものです。
前後斜め左右どの方向にもスイスイ移動
Omni-glideのもっとも大きな特徴はダブルブラシ内蔵のヘッドです。ヘッド内のブラシはそれぞれ内側に回転して床との摩擦を低減。一般的なブラシヘッド掃除機は前後以外に動かすとき力を必要としますが、Omni-glideは左右や斜め方向にも軽い力で移動できます。
ただし、基本的にこの「摩擦を減らす」のはフローリングやタイルなどの床材。カーペットやラグといった毛足がある場所は摩擦が減らず重く感じるほか、ブラシ回転が止まることもあります。毛足の短いマットくらいなら問題ありませんが、Omni-glideを購入するなら基本的にフローリング用と割り切りましょう。
全方向に動くことで、とくに便利に感じたのが狭い隙間。家具と家具の狭い隙間にヘッドを入れる場合、ヘッドを90°回転させますが、そういったひとつひとつの動作がとてもスムースです。ダイニングの下など、イスや机の脚でゴチャついているエリアもストレスなく掃除できます。掃除は定期的にするものなので、こういった「ちょっとしたストレス」が軽くなるのはありがたい!
掃除性能は?
掃除機の構造がここまで変化すると、掃除力も気になります。Omni-glideはフラッグシップモデルの「Dyson V11」と比較するとコンパクトで軽量なため、個人的に掃除性能はそこまで期待していませんでした。しかし、実際に掃除をしてみると思った以上にゴミを吸い込みます。
細かなゴミと大きめのゴミをまぜた壁際のゴミ吸引テストをしたところ、1回ヘッドが通過するだけで、フローリングの溝に落ちていた細かなゴミもしっかりと吸い取ってくれました。
一般的に回転ブラシ内蔵タイプの掃除機は、ブラシが前方向に回転しています。このためヘッドを「前方向に押す」動作よりも、「手前に引く」動作でゴミをより強力に吸い込むのです。ヘッドを前後に移動させて、ヘッドが同じエリアを2回通過するのが上手な使い方(前移動と後移動で1往復)。しかし、Omni-glideはヘッド内の2本のブラシがそれぞれ別方向に回転しているので、押す動作でも引く動作でもしっかりとゴミを吸引します。掃除時間をだいぶ短縮できる印象です。
前述したようにOmni-glideはフローリングなど固い床用の掃除機ですが、毛足の短いカーペットなどは普通に掃除できます。我が家は犬の腰が悪いため、家の一部にタイルカーペットを貼っているのですが、このカーペットの掃除は問題ありませんでした。ヘッド裏にブラシが2本あるためか、カーペットの掃除力もなかなかのもの。ただ、カーペットの掃除は、フローリングより少し掃除機が重く感じました。
ダイソンならではの使いやすさと気になる点も
Omni-glideはヘッドが2本あるという以外は、ダイソンの掃除機らしい特徴を多く継承しています。たとえば、ヘッド内のブラシには柔らかな「フラッフィー」を採用。柔らかいブラシなので床を傷めないほか、このブラシは髪の毛を巻き込みにくいのもうれしいところ。今回、ヘッドブラシが2本になったことで筆者が懸念していたのは、「2本のブラシに長い髪の毛が巻き付いてお手入れが大変にならないのだろうか?」ということ。でも、30~40cmほどの長い毛を30本ほど吸ってみたら、ブラシに絡みついている髪は3本だけでした。
ゴミ捨ては毎回延長パイプを外す必要があり、少々手間がかかります。ただ、ダストビン内部の金属メッシュフィルターをこそぐようにゴミを捨てるため、手を汚さずにフィルターに絡みついた髪やゴミを落とせます。長い髪の毛などは引っかかって落ちないこともありますが、取り除くのは簡単です。
バッテリーは満充電時で最長20分間の運転。着脱式バッテリーなので、予備バッテリーを購入すれば簡単に交換できます。
バルミューダ「BALMUDA The Cleaner」との違い
ところで、ちょっと家電に詳しい人なら、Omni-glideを「ヘッドの形がBALMUDA The Cleanerに似ている……」と感じたのではないでしょうか? バルミューダの「BALMUDA The Cleaner」も、ヘッド内に2本の回転ブラシを搭載して、全方向に軽く動くコードレス掃除機です。
両方を使ってみた印象としては、フローリング掃除の軽さはバルミューダが上。まるで氷の上を滑るように、あるいはヘッドが浮いているような感覚で、まさに「掃除を楽しむ」ための道具だと感じました。本体は約3.1kgとそこそこ重く、カーペットやラグなどではかなり動きが重くなります。ヘッドも比較的大きいため、広いスペースの掃除に向いています。
一方、ダイソンのOmni-glideはヘッドが全方向に移動するものの、個人的には「浮遊感」とまではいかないイメージ。そのかわりヘッドの小回りがきき、狭いスペースにもスムースに入り込んでくれるので、モノが多い住環境でも掃除がしやすいでしょう。カーペットやラグの上では少々重く感じるものの、狭いエリアならそこまで負担になる重さではありません。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、Omni-glideとBALMUDA The Cleanerを比較検討するなら、住環境(フローリングの面積や隙間の量など)に合わせて選択すると良いと思います。量販店の展示で実際に動かしてみるのもおすすめです。