本連載「イヤホンはじめて物語」では、スマホメーカーによる人気の最新完全ワイヤレスイヤホンがなぜ注目されるのか、解説してきました。今回はアクティブ・ノイズキャンセリングに外音取り込み、高性能なハンズフリー通話の支援機能など、スマホメーカーのワイヤレスイヤホンならではといえる快適さを追求した新製品「Galaxy Buds Pro」をピックアップします。間違いのない完全ワイヤレスイヤホンの選び方のコツを振り返りながら、Galaxy Buds Proの特徴を見ていきましょう。

イヤホンはじめて物語 【第1回】【第2回】【第3回】【第4回】【第5回
  • スマホメーカーのイヤホンらしさ全開の「Galaxy Buds Pro」。「Galaxy S21+ 5G」とペアリングして使ってみました

    スマホメーカーのイヤホンらしさ全開の「Galaxy Buds Pro」。「Galaxy S21+ 5G」とペアリングして使ってみました

小さいのにスタミナも十分。装着感は?

イヤホンを選ぶ際に気に掛けるべきポイントはいくつもありますが、基本は「デザインと装着感」「音質」「自分が必要とする機能の出来映え」の3つに的を絞ると、意中の製品に出会える確率が高くなります。

Galaxy Buds Proはポータビリティに優れるコンパクトなデザインが魅力的です。左右独立スタイルの完全ワイヤレスイヤホンの中には、イヤホン本体は小さいのに充電ケースが大きくて持ち運びに不便な製品もあります。手荷物を少なくしたいかたには、Galaxy Buds Proのように充電ケースも小さなワイヤレスイヤホンがおすすめです。

  • 本体と充電ケースもコンパクトサイズ

  • アップルのAirPods Pro(右側)と比べてみてもコンパクトな充電ケース

本体や充電ケースが小さいと、そのトレードオフとしてバッテリーの持ちが悪い場合があるので注意です。Galaxy Buds Proはイヤホン単体で最大約8時間、ケースを併用すると約28時間の利用に対応。アクティブ・ノイズキャンセリング機能をオンにすると連続使用できる時間が短縮されますが、それでもなおフル充電からイヤホン単体で約5時間の連続駆動が可能なので、2時間を越える映画をゆったり見たり、リモート会議用のコミュニケーション端末に使ったりと、不自由なく使えそうです。

イヤホンのサイズについて、筆者は耳が大きいので最初は少しフィット感が心許なく感じたものですが、付属するシリコンイヤーピースを使って装着感を最適化できるので心配ないと思います。ただ、Galaxy Buds Proはノズルが特殊な形をしているため、紛失した時に純正品を取り寄せることはできそうですが、サードパーティーの交換用イヤーチップでフィット感を調節したり、音質を好みに合わせて追い込むことは難しいかもしれません。

  • 装着イメージ。耳にピタリとフィットします

  • ノズルが特殊な形状をしているため、交換できるイヤーピースは純正のものに限られそうです

耳は身体の中でも繊細な部位なので、ゴツゴツとした大きなイヤホンに外耳を長く圧迫されていると、頭が痛くなって音楽リスニングに集中できないことも。コロナ禍ではイヤホンの実機展示を試すことも容易ではありませんが、できればイヤホンの「音質」と「装着感」は、常に試してから購入を検討するとミスマッチが減ると思います。

音質は? バランスがよく「人の声」が聴きやすい

ポイントの1つである「音質」について、筆者のインプレッションを報告します。

本機は小さな筐体の中に6.5mmの高域用と、11mmの中低域用ダイナミック型ドライバーを搭載する2ウェイ・ツインドライバー方式を採用しています。再生レンジが広く、しかも余裕のある滑らかな鳴りっぷりの良さが特長で、ボーカルに伸びやさと張りが感じられます。音楽リスニングに限らず、ハンズフリー通話やビデオ会議も、相手の声が聞きやすくて好印象でした。

  • Galaxy S21+ 5Gによる音楽再生をチェック

開放型のハウジングを採用しているので、中高域がクリアで抜けもよい反面、低音のバランスは控えめなのかと言えばさにあらず。音の立ち上がりが鋭く、厚みのある低音が出せるので、アグレッシブなロックやジャズの楽曲にもぴたりとハマりました。遮音効果の高いアクティブ・ノイズキャンセリング機能の出来映えがよいので、賑やかな場所で聴いても音楽の繊細なニュアンスを伝えてくれます。

ANC機能はAndroidアプリで細かく調整できる

Galaxy Buds Proは本体の内側・外側に配置したマイクが、リスニング環境周囲のノイズをリアルタイムに検知し、独自のアルゴリズムによってノイズだけを分けて消音する「インテリジェントANC」と名付けた機能を備えています。消音効果は特定の帯域に偏らず、人の話し声から甲高いノイズ、低いバスのエンジン音までバランスよく打ち消します。

Galaxy Buds ProはAndroid版アプリ「Galaxy Wearable」を活用することで、本体のさまざまな設定ができます。例えばインテリジェントANCの効果を2段階から選べるほか、本体のマイクを使って外のノイズを取り込む機能は、強弱を4段階から選んでセットできます。

  • Android版Galaxy Wearableアプリからイヤホンの様々な設定がカスタマイズできます

アプリには6つのプリセットから音質を自由にカスタマイズできるイコライザー機能が付いています。音楽に限らず、動画配信やゲームを楽しむ際に設定を変えるとコンテンツに応じてベストな音に追い込めます。

同アプリはiOSには非対応であり、今後も対応の予定がありません。残念に思いますが、もちろんiPhoneにBluetoothでペアリングして音楽を聴くこと自体は可能です。Galaxy Buds Proをいっそう快適に楽しむのであれば、Galaxyシリーズのスマホがベストで、次にAndroidスマホとの組み合わせがベターです。

  • アクティブ・ノイズキャンセリング、外音取り込みのレベル調整が可能

  • イコライザー機能も充実

  • 紛失したイヤホンをアプリから探せます

  • iPadにペアリングすればビデオ会議にも活躍

Galaxyスマホと連携する機能が充実

Galaxy Buds Proは、同じGalaxyシリーズのスマホを組み合わせると色々便利な機能が使えるようになる、ということも押さえておきたいポイントです。

例えばスマホにイヤホンを近づけるだけでペアリング設定が簡単にできる「ワンタッチペアリング」。最新のAndroidスマホ「Galaxy S21+ 5G」を用意して試してみたところ、Galaxy Wearableアプリを立ち上げて画面に並ぶ機器のリストからGalaxy Buds Proを選択、機器同士を近づけると自動接続設定がスタートしました。ワイヤレスイヤホンを初めて使うかたには頼もしい機能です。

  • Galaxyシリーズのスマホに近づけて簡単にペアリングができます

イヤホンを装着しているユーザーが会話を始めると、イヤホンに内蔵するマイクが自動的に「会話検出」してくれる機能も斬新です。ワイヤレスヘッドホンではソニーの「WH-1000XM4」が似た機能を搭載していますが、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンでは本機が初めてになります。

会話検出機能は、アプリから「会話検出」をオンにして、イヤホンを装着したまま話し始めると、リスニング中の音楽の音量を落として、ANCがオフになる代わりに外音取り込み機能が起動。周囲の会話が聞こえやすくなります。

ユーザーが再び一定時間発声しないままでいると会話検出は自動的にオフへ。会話検出への切り替えは反応が鋭いぶん、“ひとりごと”っぽい発話でも検知して、ANCから外音取り込みに切り換える場合がありました。

会話を終了したタイミングで以前のステータスに戻すまでの秒数はアプリから任意に決められるので、発話検出の感度も微調整できるとよいかもしれません。会話の聞こえ方はとてもナチュラルです。同僚のいるオフィス、家族と暮らす部屋でビデオ会議に参加しながら、時おり周囲にいる人とも会話する必要がある場面で役立ちそうな機能です。

  • イヤホンを装着しているユーザーの発声を認識。自動で会話に最適なステータスに切り換える「会話検出」機能が斬新でした

ほかにもGalaxy Buds Proには、迫力のある360度サウンドを体験できる機能や、スポーツシーン・雨の中などで安心して使えるIPX7等級の防水性能などを備えています。カラーバリエーションはバイオレット/ブラック/シルバーの3色展開。ビジネスパーソンの装いにも合わせやすい、落ち着いた色が特徴的です。

価格はオープンですが、本稿が掲載される2021年5月頭時点では大手家電量販店やECサイトが20,000円前後で販売しています。エンターテインメントからビジネスシーンまで幅広くサポートしてくれる、「音質・機能・装着感を含むデザイン」の3拍子が揃った良質なワイヤレスイヤホンといえ、特にGalaxyシリーズをはじめとするAndroidスマホのユーザーにおすすめしたいと思います。