2020年4月第2週に入るので、もう少しWindows 10 バージョン21H1の話をしたいところだが、バージョン20H2と比較して大胆に変化するわけではないため、軽く触れておくことにしよう。次期Windows 10 バージョン21H1となるベータチャネルは、当初からvb_releaseというブランチ(枝)で開発が続けられてきた。今後は既存機能の修正とバグフィックスしだいで、遠くない時期(4月末?)にメインブランチへとリリースされるるだろう。
他方でWindows 10 Insider Previewはビルド21354から、それまでの「rsprerelease」から「corelease」に切り替わった。詳しくは別記事『リリース準備に入った次期Windows 10のInsider Preview』をご覧いただくとして、今後はProject Reunionの成果を着々と実装するはずだ。
さて、今回はCanonicalが発表した「Ubuntu on Windows Community Preview」に注目したい。WSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)で使えるLinuxディストリビューションとして、UbuntuはLTS(長期サポート)のUbuntu 20.04 LTSと最新版のUbuntuという2つを用意している。
新たにUbuntu on Windows Community Previewの提供を始めたCanonicalは公式ブログにて、「新機能を試すサンドボックスとして機能する特別なビルド。LTSは5年、通常版は9カ月間サポートされるが、広範なコミュニティで新機能やアイデアをテストするために必要な資産が不足している」と理由を語った。
Linuxディストリビューションの各パッケージは、メンテナーと呼ばれる方々がアプリの新バージョンに気付くと、任意のLinuxディストリビューションに合わせてパッケージ化する作業を始める。そのため人気があるアプリは即時パッケージが更新されるものの、使用頻度の低い、もしくは人気のないアプリは後手に回るケースもある。このような背景から、Canonicalも自社Linuxディストリビューションのプレビュー版をWSL 2に用意したのだろう。
Ubuntu on Windows Community Previewはあくまでも実験的な環境であり、安定性を重視する本番環境向けではない。ただ、Canonicalが説明するように実験的なコード検証やWSL 2との親和性を高めている。たとえばMicrosoft Storeから入手直後にWindows Terminalで実行すれば、Ubuntu Serverのセットアッププログラムであるsubiquityが起動し、テキストベースのGUIでユーザーアカウントの作成や言語選択、今後利用可能になる予定のXウィンドウを使うために必要な環境変数「DISPLAY」の取捨選択が可能だ。
WSL 2上で動作するUbuntuの設定を、コマンドラインから実行する「ubuntuwsl」を用意したのも特徴の1つ。前述したGUI統合やオーディオデバイス、ネットワーク周りの統合、rootのマウント先など各種設定が可能になる。筆者はWindows 10 バージョン20H2でUbuntu on Windows Community Previewを試してみたが、Ubuntu 20.04 LTSと同居できることを確認した。
振り返ってみると、WSL 1の実装時にMicrosoftが選択したLinuxディストリビューションはUbuntuだった。B2B領域ではRed Hat Enterprise LinuxやSUSE Linux Enterpriseが多く使われているが、Linuxを必要とするエンドユーザーや開発者にはUbuntuを使ってほしいというCanonicalの意図が見え隠れする。筆者は今後もGNU Debian/Linuxを使い続けるつもりだが、Ubuntu on Windows Community PreviewがWSL 2との親和性を高め、UX(ユーザー体験)や開発体験が向上すれば、Ubuntuも有力な選択肢になるだろう。