ソロアーティストとしてのデビューから1年半あまり。昨年3月発表のアルバム『Curtain raise』を引っさげて現在1stツアーも開催中の声優・逢田梨香子が2nd EP「フィクション」をリリース。

前述のアルバムから約11ヶ月ぶりとなる同作には、自身もリコ役として出演中のTVアニメ『装甲娘戦機』OPテーマ「Dream hopper」を含む4曲の新曲を収録している。いずれも異なる個性をもったそれぞれの楽曲で、逢田が目指したものとは。今回インタビューが到着した。

  • 逢田梨香子

●サビでの急展開で、装甲娘たちのオン・オフを見事に表現した「Dream hopper」

――現在、昨年末からの1stツアーを開催中です。お客さんを前にワンマンライブを開催された感覚というのは、どのようなものですか?

とにかく、ありがたみをすごく感じましたね。オンラインライブなどには出演していたんですけど、今まで当たり前だった”ファンの皆さんを直接目の前にしたライブ”が、いかにありがたいことなのかというのを身にしみて感じました。あと、音楽活動を想像以上に楽しく感じられるようになりまして。始めた頃は正直自信もなかったんですけど、そう感じられるようになったのも、ファンの皆さんのおかげだと思っています。

――2nd EP「フィクション」は、収録される4曲とも全く色が違うものになりました。

今回は元々”4曲入りのEP”と決まっていたので、「遊ぶなら、このタイミングなのかな?」と思って「今まで歌ったことのないいろんな楽曲に挑戦したいです」とお話ししまして。曲ごとに、テーマ出しから関わらせていただきました。

――EP自体も各曲のテーマも、逢田さん発信なんですね。

はい。今回は、あえて統一性がなくてもいいんじゃないかと思っていて。4曲とも世界観はバラバラなんですけど、それを「フィクション」というタイトルでひとつにまとめた……というイメージです。

――どれも個性の強い曲ばかりですが、まずM1「Dream hopper」のサビでの展開から度肝を抜かれました。

私も、自分の楽曲だけではなく今まで私が聴いてきた音楽全体を通してもあまり出会ったことのないタイプの曲だったので、何度か繰り返し聴いてやっと全体像を理解できたんです。コロコロ印象も変わりますし、サビのグリッサンドをきっかけに、一気にジェットコースターが上り下りするようなイメージがありました。

――どういう曲を目指して、楽曲制作が進んでいったのでしょうか?

「Dream hopper」はTVアニメ『装甲娘戦機』のOPテーマなので、基本的にはアニメサイドの皆様に委ねていました。なので初めて聴いたときには、全く予想していなかったタイプの曲にすごく意表を突かれた感じもしたんですけど、私、予想していないものが来ることにすごく楽しさを感じるんですよ。自分自身も予想通りに動くのがあまり好きではない派なので(笑)、すごくワクワクしました。

――ちなみにTVアニメ『装甲娘戦機』という作品には、どういう印象をお持ちですか?

最初は単純にバトル系の作品だという印象だったんですけど、割とほのぼのした日常シーンも多くて。そういうどこにでもいるような女の子のような装甲娘のみんなの姿を見られるシーンと戦闘モードのシーンのギャップが、すごくかっこいいんです。

――そのギャップは、この曲やOP映像でも表現されているように感じます。

そうですね。サビになると一気に疾走感が出てかっこよく変化するので、曲中で彼女たちのオン・オフもしっかり描かれているように感じました。

――歌ううえでは、どんな点を意識されましたか?

メロディはすごくかわいくてポップなんですけど、歌では力強く前に進んでいくという意志の強さも出したかったんです。場面ごとに曲調やリズムも変わる曲というのもあって、その匙加減を見つけるまでは大変でしたね。

――「こうだ!」というものを掴むまでが。

そうなんです。私自身が気持ちに左右されてしまいがちなのものあって、「これ!」という明確な答えが見えないと、迷ってしまって自信を持ってできないんですよ。逆に、それを見つけられて軌道に乗れてからは、勢いに乗って行けたように思っています。

――また、この曲はMVもインパクトの強いシーンの多いものになっています。

今回は団地で撮影したんですけど、団地のような”見慣れた景色”の中で日常感のない5人組がポップで奇抜な服を着て遊んでいる姿ってすごくアンバランスですし、とてもシュールなんですよ。しかも、シーンによって真顔のときもあれば笑顔のときもあるので、「この5人、どういう関係なんだろう?」って思っちゃうような不思議さも感じられる、ひとクセあるMVになっているんじゃないでしょうか?

――終盤では、コインランドリーでダンスされていました。

あそこは「5人だけでダンスパーティーしているような雰囲気にしたいね」と監督がおっしゃって、よりオシャレにカスタマイズしていただいたんです。

――そこでの結末も、衝撃的で……。

そうなんです(笑)。曲のタイトルの中の”hopper”にちなんで、実はバッタだったという……ある意味それも、「フィクション」ですよね。

●タイトルチューンは、EPのビジュアルイメージ通りのかっこよさ際立つ曲に

――続くM2「フィクション」では、逢田さんが作詞を手掛けられました。

この曲は、最初にEPのタイトルが決まってから、同じタイトルの曲を入れたいなと思ったのがスタートでした。それで歌詞の構想を先に練りつつ、「大人っぽく歌える雰囲気のビックバンドでブラスが印象的な」という大まかなイメージをお伝えして、曲を作っていただいたんです。そうしたら、想像以上にかっこよく仕上げていただけて。この曲単体でも勝負できそうなぐらい存在感のある、個性の強い曲になりました。

――夜の街のイメージが非常に強い曲ですね。

曲からは基本的にずっと夜のイメージが湧きまして。ちょっとアンダーグラウンドで寂れた、ショーをやっているようなステージが浮かびました。

――その楽曲に、その後歌詞を乗せていかれたわけですが。

実は、最初の構想からタイトルだけそのままにして中身を入れ替えたり歌詞を書き直したりしていたんですよ。一度書いてしまった分、そのイメージがついてしまっているので、その歌詞を上書きするような作業のためにちょっと忘れる期間を設けたりもして……それぐらい壁にぶち当たった曲だったので、レコーディングし終わったときには今までにないくらいホッとしました(笑)。

――歌う際には、どんなところにポイントを置かれましたか?

曲自体に、殴りかかってくるようなパンチの強さがあるように感じていたので(笑)、逆にそれを跳ね返すぐらいの「とにかく曲に負けない」という気持ちで向き合っていったところです。でも実際には、今まではゆったりした曲が多かったのもあって結構苦戦しまして。リズムもテンポも速い曲なので……歴代3位ぐらいに入るぐらいの大変さはありました。自分でリクエストしたので、自分の責任なんですけどね(笑)。ただ、ジャケットやアー写のイメージはこの曲のものに近いので、歌声でもそれとリンクするようなかっこよさを出せていたらと思います。