「生みの苦しみ」……物事を生み出すには多大なる努力が必要となる。 テキスト・映像・音楽…それら創造に必要なのは、湧き続けるアイデアを決して中断することなくサポートしてくれる、頼れる相棒の存在だ。

  • iMac pro

    iMac pro

……今までiMacはさまざまなジャンルで活躍する制作のプロに愛用されてきた。Appleはそこで得られたフィードバックを基に、プロのためのマシンを満を持してリリースした。それがこの、Mac史上最もパワフルなグラフィックスとプロセッサを、最も先進的なストレージ・メモリ・I/Oと一緒に詰め込んだこの「iMac pro」なのである。

  • スリムな本体。高さ51.6cm、幅65.0cmで、スタンドの奥行きは20.3cm

Retina 5Kディスプレイを搭載したオールインワンデザインはディスプレイの裏側に必要なすべてを搭載し、制作デッドラインと戦う我々の心強い味方となってくれるこのiMac proの実力はいかに……!

今回、私はこのiMac proと同時に発表された、Logic X 10.4の最強の組み合わせ……パワーは時間をも凌駕するこの体感を言葉にして皆様にお届けしようと思う。

  • Logic X 10.4をプライベートスタジオで起動してみた

iMac pro同様、「史上最も高度なバージョン」とAppleが謳うLogic X 10.4。しかし、世の常としてアプリケーションがパワーアップすればするほど、要求されるのがインストール先のマシンスペックだ。 アプリケーションのパワーやプラグインの膨大な要求に応えることができなければ、アプリの重たい挙動と共に、制作作業に対するインスピレーションはたちまち削がれてしまう。だが、このiMac Pro との組み合わせはまさに鬼に金棒、黄金のコンビネーションなのである。デベロッパーも同じというこれ以上ない強みで、そのパワー&先進性を実感していただけると思う。

まずはiMac Proの基本的なスペックのおさらいを。

最大18コア(!!)を搭載可能iMac pro。従来の4コアのiMacでも驚異的なパフォーマンスを誇ってきたが、18コアとなると想像の域を軽く超えてしまった。最大4.5GHzのTurbo Boostも可能で、マルチコア処理とシングルスレッド性能のバランスを絶妙に保っている。また、新たなAVX-512ベクトル命令とキャッシュアーキテクチャを採用したプロセッサは、これまでよりも一段と多くのデータを素早く処理するのだ。

ここで、iMac proの中枢に鎮座するApple T2チップについても言及しておきたい。このT2チップは、システム管理コントローラ・画像信号プロセッサ・オーディオコントローラ・SSDコントローラなど、従来のコントローラを再設計して統合することによって、iMac proが新しい能力を最大限発揮する事を可能にしている。またこのT2チップには新しい暗号化されたストレージとセキュアブート機能の基盤となるSecure Enclaveコプロセッサが組み込まれ、iMac Proのセキュリティが一段と強固になっている。

iMac proに搭載されたSSD上のデータは、SSDのパフォーマンスに影響を与えない専用のAESハードウェアによってIntel Xeonプロセッサを使わずに暗号化されるため、iMac proの持つ処理能力をすべて演算タスクに集中させられるのだ。加えてセキュアブートが、起動時にAppleが信頼するオペレーティングシステムのソフトウェアのみを読み込んで、ソフトウェア改ざんを防いでくれる。まさに「パワーと安心」両面を保証、というわけだ。

  • 同梱のMagic Keyboard(テンキー付き)

  • こちらも同梱のスペースグレイMagic Mouse 2

iMac Proを横目にふと思いだす自身のトラウマ

音楽畑の私が、過去に一度だけ映像に手を出した時期があった。普段の音声ファイルの書きだしと異なり、PCによる映像素材のレンダリング処理のあまりの重たさに私は驚愕し、その途方もない待ち時間に耐えられず挫折。

それが今はどうだ、このiMac proは、静止画・アニメーション・2D・3D……あらゆるタイプの素材に対してパワフルにレンダリングしてくれるのだ。

例えば……。

・Twinmotion(Unreal Engineを搭載したパノラマ画像、動画、360度動画の制作ツール)…… 極めて直感的にオブジェクトが配置可能で、木々の葉がそよぎながらもあらゆる角度からの俯瞰がスムースな動きを実現
・Final Cut Pro X(Apple純正の動画編集ツール)…… 4K・5Kといった極めて高解像度の映像データをなんとリアルタイムでレンダリング!複数のビデオストリームを楽々と扱うことができる帯域幅を備え、最大4TBのオールフラッシュのストレージが、巨大プロジェクトの保存も読み込みも一瞬で完了。私が過去に経験したあの待ち時間は何だったのか……
・Cinema 4D(3Dアニメーションソリューション)…… よりスピードが求められる3Dプロダクションの世界で、こちらもレンダリングの待ち時間を感じさせないこの処理速度……!
・Gravity Sketch(VRを利用した3Dデザインツール)…… 今話題のVRを利用した3Dデザインツール、図らずも人生初のVR体験をこのソフトでまさに体感してしまった筆者。タイムラグを感じさせないスムースな動きはまさに別次元!没入の一言では説明できないほどの経験をしてしまった……

映像、3D、そしてVRにここまで強いその理由とは

それはiMac proに内蔵するRadeon Pro Vegaグラフィックスに秘密があった。Vegaアーキテクチャを初めて採用し、最大16GBの高帯域幅メモリをもつこのGPUは、ほかの iMacのそれと比べて最大2倍、Mac Proの最大3倍の容量。このメモリが、VR、リアルタイム3Dレンダリング、最大設定でのゲームプレイに適した、一段と高いフレームレート実現したのだ。しかも、単精度と半精度の両方の演算をサポートするので、フル32ビットの精度を必要としない演算は2倍の速さで処理してくれる。これは、数値にすると最大22テラフロップスという驚くべき数値を叩き出した。

またメモリといえば、私のような音楽制作に携わる者が気になるのは搭載可能なメインメモリ容量だが、iMac proは最大128GBのメモリを搭載可能。Logic Xのみならず、数えきれないほど多数のアプリケーションを同時に開けるのだ。

加えて、最大4TBのオールフラッシュのストレージは読み込みも起動もさらに高速になり、大規模なプロジェクトもスイスイ起ち立ち上げてくれる。そのスループットは最大3GB/sなので、巨大なファイルの読み込みもアプリケーションの起動も、これまで以上に速くなっている。

私が評価機として借り受けたこのiMac proは、そのラインナップの中でも最もベーシックな8コア構成の本体。スペースグレイのボディが、その内包するパワーを誇示するように渋く輝いている。

特に目を惹くのが極めて薄い、5Kの解像度をもつ27インチRetinaディスプレイで、その本体の背面には、以下のインターフェースが用意されており、スマートかつ十分なスペックを提供する。

・3.5mmヘッドホン端子
・SDXCカードスロット
・USB3端子(4ポート)
・Thunderbolt 3端子(USB-C)
・Ethernetポート

また上記Thunderbolt 3端子(USB-C)には2台のRAIDシステムと2台の5Kディスプレイ接続して、パワフルなワークステーションも構築可能だ。

  • 背面のインターフェース周り

レビュー後編ではLogic Xとの組み合わせでiMac proの実力をチェックしていこう。

白石元久(しらいし もとひさ)


1996年に 森岡賢(ex.-SOFT BALLET)のアシスタントとしてキャリアをスタート。 遠藤遼一のソロプロジェクト、「ENDS」やmihimaru GT、岡村靖幸のライブサポートをはじめ、 プレイヤー、マニピュレーター、エンジニア、マスタリングエンジニアとして活躍。