人工知能を生かす上でもアカウントが重要になる

前稿でも述べたように、LINE自身、中核事業がアカウントビジネスであると語っているように、LINE公式アカウントやLINE@を活用しやすいよう、LINE ビジネスコネクトなどの仕組みに加え、LINE ポイントやLINEショッピングなど、企業のアカウントと連動するサービスを強化している。グーグルやフェイスブックなども個人アカウントから行動データなどを取得しているが、企業とユーザーのコミュニケーションを強化するという点においてはLINEが他をはるかに引き離している状況だ。

こうして得られた個人の行動データの利用方法としては、例えばグーグルであれば人工知能「Googleアシスタント」の教育や広告事業に、アマゾンであれば顧客に対する商品のリコメンドに特化している。藤井氏も「商品のリコメンドという点については、アマゾンが世界一だろう」と認める。

LINEとしても、今後はLINEが開発中のクラウド人工知能プラットフォーム「Clova」で、先行するグーグルやアマゾンらに追いつくため、アカウントをもとに収集したデータを活用して一気に差を詰めたいところだろう。ただし、個人のデータを集めるというのは、たとえデータを匿名化するといってもプライバシーの問題もあり、さじ加減がなかなか難しいところだ。

今夏先行発売が行われるスマートスピーカー「WAVE」。課題はあるにせよ将来的にはスマートスピーカーへの企業アカウントの活用も進みそうだ

藤井氏によれば、LINE CONFERENCEでのスマートスピーカー「WAVE」のデモを披露した後、Clovaを活用したいという企業からの問い合わせが多数LINEに届けられているということだが、AI開発というのは一朝一夕で進められるものではない。上述のような問題もあり、データをLINEが持つのか、協力する企業側が持つのか、といった細かなルール作りも進めていかねばならないだろう。となれば、今すぐにできることとしては、LINEの企業アカウントを作り、アカウントにデータが集中する仕組みを作るところから準備しておくことになるだろう。