挑戦するにはちょうどいい規模感

最後に、紫関氏にFKとファーストキッチン・ウェンディーズを運営していく上での考え方を語ってもらった。

「FKはチェーン店だが、マクドナルドやモスバーガーなどと比べれば事業規模は小さい。しかし、この規模感は、何かに挑戦する上で強みとなる。この会社は、店舗の規模を考えるといろいろな挑戦ができる。面白そうであれば、試してみよう。でもダメだったら、すぐ引き返すことも、逆にこの規模だからできることだ」

「(ウェンディーズとのコラボで)今後は何が飛び出すか分からない。例えるなら、これは登山というよりも航海のようなものだ。何か目標を決めて、それに向かって登っていくのではなく、それぞれの社員が夢を持って船を漕いでいく。ウェンディーズという新しい船を手に入れたということだ」

ともすればファーストフードチェーンで中途半端な存在ともなりかねないFKの規模感を前向きに捉えている紫関氏

新しいチェーン店の在り方を示す存在になれるか

ウェンディーズのブランドを使って何をするかは、FKの社員一人一人に課せられた宿題だ。業績が下降していた時には挑戦できなかったことも、新たなブランドを手に入れ、業績が上向いてきた今なら試してみることができる。意識改革により主体性を取り戻しつつあるFKから、どんなアイデアが飛び出すのかが楽しみだ。

ウェンディーズ本社に対し、FKおよびファーストキッチン・ウェンディーズの知見から還元できることもあるはずだと紫関氏は指摘する。例えば、日本のように出店スペースが限られる市場で、良い立地に小さな店舗で効率よく展開し、高い坪あたり売上高を稼ぎ出すような手法は、世界展開するウェンディーズにも参考になるかもしれないというわけだ。

確かに、世界的にチェーン展開するウェンディーズが、シンガポールや香港など、出店場所が限られる地域に出店する際には、東京や大阪の事例がモデルケースになるかもしれない。場合によっては、ファーストキッチン・ウェンディーズというブランドでアジア市場の開拓に挑戦しても面白いだろう。

FK、ウェンディーズ・ジャパン、米国のウェンディーズ本社という3者が関わる日本のコラボビジネスは始まったばかり。確固たる成功を収められるかどうかは今後の課題となる。とはいえ、紫関氏からは同事業の舵取りを楽しんでいる様子が伝わってきた。少子化が進み、規模を追う方向性にも疑問が呈されるような時代に差し掛かる中で、飲食チェーンは一体どんな存在になるべきなのか。何か新しい将来像を提示してくれそうな存在として、ファーストキッチンの航海には今後も注目していきたい。