業界全体で5Gへの機運が高まりつつある

そしてもう1つ、5Gで求められている要素に「低遅延」がある。通信の遅延が少ないということは、手元の操作がダイレクトに通信先へと反映されることにつながる。それゆえ遠隔地から手術をしたり、車やドローンをコントロールしたりするなど、今後重要となってくるネットワーク経由での遠隔作業を実現する上で、低遅延が強く求められているのだ。

そしてもちろん、従来の正当進化ともいえる高速・大容量通信も、5Gでは欠かせない要素の1つだ。デバイスの進化に伴い、4Kの映像配信やVR(仮想現実)など、従来より多くのデータ通信容量を必要とする新しいコンテンツが、今後大きく増えることが予想される。そうしたコンテンツを快適に利用する上でも、さらなる高速・大容量通信の実現が必要とされているのだ。

5Gではデバイスや利用の多様化に合わせ、4Gより一層の高速・大容量通信や多接続、低遅延を同時に実現する通信方式となる

このように、モバイル通信を利用するデバイスやシーンが今後一層広がると予想されることから、それらに対応するべく従来より一層の高速・大容量通信、低遅延、多接続などを実現するためにも、新しい通信方式である5Gが必要とされているのである。

5Gの標準仕様はモバイル通信の標準化団体である「3GPP」によって2015年より進められている。当初は2018年に一部の仕様が、2019年に残りの仕様が完成し、それを受ける形で商用化が進められるとされていた。実際日本では、NTTドコモが2020年の東京五輪に合わせて、5Gの一部仕様を用いる形で商用サービスの提供を開始することを打ち出している。

だがここ最近、通信業界では世界的に5Gに対する関心や機運が急速に高まってきている。実際今年2月には、NTTドコモやKDDIなど国内外のキャリアや通信機器ベンダー22社が共同提案を実施。5Gの標準仕様をより早期に策定するよう提案がなされていることから、5Gの仕様策定や商用サービスの導入が、従来より早く進むと見られている。