PCやタブレットで生きるIGZOの価値

ここで、IGZOとはなにかをおさらいしておこう。IGZOとは「インジウム (Indium)」「ガリウム (Gallium)」「亜鉛 (Zinc)」「酸素 (Oxide)」から構成される酸化物半導体のことで、それぞれの頭文字をとって「IGZO」となる。

そもそもはシャープが開発したのではなく、東京工業大学が国立研究開発法人・科学技術振興機構の支援を受けて開発したものだ。シャープは科学技術振興機構からライセンスを受け、特許権を取得して研究と製造を行っている。

液晶ディスプレイの技術として使われているが、実際には液晶そのものの技術ではなく、液晶の画素をスイッチングするための半導体技術である。特性はいくつもあるが、高精細化と消費電力の低さが重要だ。

auから発売された「AQUOS SERIE mini SHV33」。最大120コマ/秒を描画できる「ハイスピードIGZO」を搭載している

技術的な詳細を省いてざっくり説明しよう。IGZOは、電源を一定時間オフにしても、電位を維持できる特性を持つ。そのため、同じ映像を表示し続けるなら、電源をオフにできる。こまめに電源をオン/オフすることで、消費電力は一般的なアモルファスシリコンのものに比べ、5分の1から10分の1に抑えられる。

また、回路サイズが小さくて済むので、液晶の「開口率」も上がる。バックライトを遮るものが少ないので、その分エネルギーを有効に使えるわけだ。また、電源をオフにする時間を作れるということは、それに伴うノイズも抑えられる、ということにつながる。だから、タッチパネルの感度も上げやすい。

一方で、製造ラインのメンテナンスとコントロールは繊細なもので、アモルファスシリコンの液晶より厳しい独自のノウハウ構築が必要になる。シャープがIGZOの立ち上げを行った2013年頃には、出荷量が安定せず苦労した、と聞いている。

IGZOは、300ppi近傍の高解像度ディスプレイに向いている。特に、PCやタブレットなどの比較的単価が高い製品において差別化に使われる例が多く、ビジネス上有利だ。現在はIGZO以外の酸化物半導体の研究も進んでいるし、IGZOのライセンスを受けたのもシャープだけではないが、量産技術も含め、シャープが大きなアドバンテージを持っていることに違いはない。

デルが1月に発売した「XPS 12」。4K解像度のIGZO液晶を採用している