AllJoynは、複数のデバイス/アプリが連携し相互接続するための開発フレームワーク。Qualcomm Innovation Center(QuIC)で開発がスタート、現在では185以上のメンバー企業で構成される非営利団体「Allseen Aliance」(Linux Foundationの下部プロジェクト)が監督するオープンソースプロジェクトであり、IoTの中で必要な機能、共通の機能を提供する。

Qualcomm Japan 標準化グループ エンジニアリングディレクタ 内田氏が登壇、AllJoynの解説とAllseen Allianceの最新動向を紹介した

この技術の出発点は、Linuxなどで利用されるプロセス間通信機構「D-Bus」にある。各デバイスで動作するD-Busデーモンが稼働し、P2Pで通信するというわけだ。通信に必要な技術は基本ライブラリに実装され、用途や目的に応じてサービスフレームワークから選び利用する形になる。

物理層やOSに依存しないミドルウェアであることは、AllJoynの特徴でありメリットだ。経路はEthernetやPower lineなどの有線、Wi-FiやBluetoothなどの無線どちらでも利用できる。デスクトップPCやスマートフォンはもちろんのこと、オーディオ機器やテレビなどの黒物家電、洗濯機や冷蔵庫といった白物家電、さらには照明機器や自動車なども接続範囲に含まれる。

AllJoyn非対応機器をAllJoynから制御できるブリッジ機構(DSB)も提供される。すでにBACnetやZ-Waveといったプロトコルをサポート、AllJoynの次期リリースではZigBeeとも通信可能になるという。家や各種環境にある機器が1つの通信方式で統一されることは困難であり、複数の方式が混在しうるIoT/M2Mでは現実的な解といえる。

AllJoynでは近接通信により、効率的かつ安全な通信環境を実現する

2011年の公開後、目立った動きが見られなかったAllJoynだが、2013年12月のAllseen Alliance設立で潮目が変わった。QualcommのほかPanasonicやSHARPといった家電に強い企業が加わり、翌年にはMicrosoftも参加したからだ。Windows 10の全エディションでAllJoynがサポートされていることはその成果であり、DragonBoardやRaspberry Pi 2で動作する「Windows 10 IoT Core」がフリーで利用できることは、Windowsの資産を活用しやすいという点で大きなアドバンテージになる。

AllJoynのソースコードはGitHubで公開され、現行バージョンではiOSとAndroid、Windows向けのSDKが提供されているため、アプリ開発のハードルは低い。現行モデル「DragonBoard 410c」に採用されたSnapdragon 410は、コアあたり最大1.2GHzのARM Coretex A53クアッドコアを搭載、競合製品と比べパワーに余裕がある。後述する流通体制の準備も整い、基本的には開発者向け製品ではありつつも「すぐに開発・デプロイできるIoTデバイス」として存在感を増していくことだろう。

Linux由来のプロセス間通信機構「D-Bus」をもとにしたP2P通信により、さまざまな機器との連携を実現する

物理層やOSに依存しないミドルウェアとして実装され、プッシュ通知など必要な機能はモジュールとして必要に応じて追加できるしくみだ