開発コンセプトは「生活のショートカット」 - 今後はデザインに注力

ログバー代表取締役の吉田卓郎氏

「我々の生活はボタンとかスイッチとか、マウスとかタッチパネルとかに囲まれていて、何をするときも毎回何ステップかの操作が必要。それをRingのワンジェスチャーでできるようにしたい。生活はもっと単純にできるはず。生活を"ショートカット"できるのが新しい未来だと思う」

ログバー代表取締役の吉田卓郎氏は、Ringの開発動機をこのように話した。

例えば、ハイヤーサービスの「Uber」は配車APIをサードパーティーに公開しているが、このAPIにRingからアクセスすれば、ワンジェスチャーでユーザー情報と現在位置をUber側に伝えられるので、スマートフォンのアプリを起動して迎車位置を指定して、といった操作なしに車を呼ぶことができると説明する。

「Ringは何をコントロールできるのかとよく聞かれるが、『クラウドをコントロールできる』というだけで説明は終わる。直接つながらなくたってネット越しでつながっている。車だってインターネットにつながっているし、テレビもTwitterもつながっている。僕らは1個1個のデバイスにわざわざ対応するなんて面倒くさいことはしたくない。Ringはクラウドにつながっている、あとはみなさんどうぞ好きにやってください」(吉田氏)

低価格化よりも上質感優先の路線をとっていく方針で、化粧箱や充電器のデザインにも力を入れているという

また、同じウェアラブルデバイスという点で、スマートウオッチやスマートグラスなどの装着型モバイル機器とライバル関係になるのではないかという見方に対しては、Ringは情報の入力機器であり、その結果を時計型や眼鏡型のディスプレイで見ることでむしろ機器の使い方が広がっていくと指摘。「競合だとは思っていない。Ringはそれらウェアラブルデバイスのパートナーになれる」(吉田氏)。

前述の通り、ジェスチャーの認識はiOS・Android上のアプリで行っているため、Ring単体で直接家電をコントロールするといった使い方はできない。開発当初はRing側にジェスチャーの処理機能を持たせることも検討したが、機能拡張の柔軟性やクラウドとの相性を考慮した結果、現状ではポケットに入れたスマートフォンなどとセットで使うスタイルが最適と判断したという。

また、現在はRingで操作できる家電製品が限られているが、今後「Ring Hub」と呼ばれる中継器に相当する周辺機器を用意し、より幅広い製品をRingでコントロールできるようにする予定ということだが、この日の説明会ではRing Hubに盛り込む機能や発売時期について具体的な情報は得られなかった。

「Kickstarter」のプロジェクトページでは、Ringによる操作を赤外線や無線LANに変換して伝達するハブ(中継器)が提案されていたが、この日はハブの機能や提供時期について具体的な言及はなし

Ringはクラウドファンディングサービス「Kickstarter」で資金を調達して開発され、25万ドルの目標金額を1日半で達成し、最終的に88万ドルもの資金を集めたことで大きく注目されたが、当初予定からの出荷の遅れや、コンセプト映像と実際の製品とのデザインの乖離などでネガティブな意味でも話題になった。

これに対して吉田氏は、現在生産の遅れを取り戻しており、Kickstarterでの支援者に対しては11月中に製品の出荷を完了できる見込み、当初のイメージよりも大型になった原因は、最初の製品で動作時間に不満が出ないようバッテリー容量に余裕を持たせたためと説明した。今月より同社Webサイトで一般販売も開始しているが、発送までは注文後4~7週間程度を要する。

現在のところ全体の半分が米国ユーザー。Kickstarterを通じてまず米国市場で火が付いたことがわかる。なお製品は開発だけでなく製造も日本で行っているという

吉田氏は今後の方向性について「我々はRingをファッションのひとつとして位置づけている」と話し、Ring自体はできるだけシンプルに保ち、より優れたデザインの追求に力を入れていく考えを示した。「毎日身につけるジュエリーとしての部分を突き詰めていきたい」と強調し、今後は宝飾品メーカーとの協業なども視野に入れていくという。

バッテリー容量を優先したため、現状では日常のアクセサリーとしての使用には厳しいサイズになっている

期間限定で開設するデモスペース「Ring Store」は表参道ヒルズ西館1階で、11月3日までの各日11時から20時30分までの営業(最終日は19時終了)。Ringを使用した家電のオン/オフなどを実際に体験できる。

「Ring Store」は人通りの多い表参道に面した位置に設けられ、オープン前から通行人の注目を集めていた