携帯と固定の融合を目指すスマートバリュー

スマートパスポート構想のもう1つはスマートバリューだ。これは携帯ネットワーク以外に、WiMAX、無線LAN、FTTH、CATVといったネットワークを自由に組み合わせて使えるようにするサービスで、auのスマートフォン利用者が、auひかりを組み合わせた場合、月額利用料金を最大2年間にわたって、毎月1,480円を割り引くというもの。利用できる回線は、KDDI傘下のCATVや、提携したケイ・オプティコムなどの40社115事業者のFTTH/CATV事業者のサービスでも1,480円引きになる。

auひかりは146万世帯、沖縄のauひかりちゅらが0.6万世帯が契約している。傘下のCATVや提携事業者を含めると、2011年3月末時点で約910万世帯の顧客基盤がおり、スマートバリューでさらなる顧客の拡大を目指す。auスマートフォンのユーザーがauひかりなどへ移行することに加え、家庭内で、一人しかauユーザーしかいなかった場合、それ以外の家族もauに移行する「家族内連鎖」にも期待しているという。

スマートバリューは、KDDIの設立当初から期待されていたFMC(固定と携帯の融合)の実現を目指すサービスだという。auスマートフォン利用者がauの固定回線を導入することで、固定サービスの契約数が増加し、さらに家庭内での通信を光回線に逃がすデータオフロードの役割も期待している。

データオフロードの施策としては、「au Wi-Fi HOME SPOT」と銘打ち、無線LANルーター「HOME SPOT CUBE」を無料レンタルする。対象はパケット定額制の加入者で、WPSのようにルーター本体のボタンを押し、au Wi-Fi接続ツールを使えば簡単に接続設定ができ、家庭での通信を無線LAN経由で光回線に逃がすことができるようになる。HOME SPOT CUBEは、LANポートが1基しかないため、既存ルーターに追加する形を想定しているが、VPNを始め、基本的なルーターとしての機能はカバーしているという。

HOME SPOT CUBE。上部のボタンを押して、au Wi-Fi接続ツールからかんたん接続を選べば、自動で無線LAN設定が行われる

au Wi-Fi接続ツールを使えば、家庭内の無線LAN、屋外の公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」にもすぐにアクセスできるようになる。au Wi-Fi SPOTは、WAN側回線にWiMAXを利用することで急速にスポットを増やし、昨年末で6万スポットになった。今年3月末までには、計画通り10万スポットにまで達する予定。

屋内とスポットでは無線LAN、外出中は3GやWiMAXで通信を行い、そのバックボーンとしてFTTHやCATVを使うという複数のネットワークの組み合わせを実現する

au Wi-Fi SPOTは3月末までに10万個所を達成する見込み

国内だけでなく、海外の公衆無線LANサービスへのアクセスも可能にする予定で、3月1日から世界100カ国のサービスをサポートする。田中社長によれば、この100カ国で「ほぼ日本人の渡航先をカバーしている」という。新たに契約をしなくても、au IDで有料のローミングを利用できるようになる。

こうしたスマートフォン向け公衆無線LANサービスは、スマートフォン以外のアクセスができない場合もあるが、タブレットやPCなど、さまざまなデバイスで利用できるようにする。ここでもau IDが活用される。

3月1日以降、海外でのローミングサービスを提供するほか、PCなどのほかの機種にも拡大する

なお、KDDIでは2011年11~12月にかけて、無線LANルーターを配布するトライアルを実施。その結果、全体でデータ量の40%のオフロードができたという。最も通信が混み合う時間帯に限れば50%のトラフィックがオフロードされたとのことだ。

FMCへ舵を切るKDDI

こうしたauのスマートパスポート構想から始まるKDDIの新戦略は、FMCと3M戦略という2つのキーワードに集約される。固定と携帯の融合に始まり、マルチユース・マルチネットワーク・マルチデバイスの3Mを実現するための第一歩となる計画だとしている。

スマートパスポート構想は、まずはスマートフォン向けに提供するが、夏にはPCやテレビにも展開。今年秋から冬にかけてタブレット対応やサービスの拡大を続けていく

第1段階として、auスマートパス、auスマートバリュー、Wi-Fi HOME SPOTを開始する。第2段階としてマルチデバイス・マルチユースをさらに拡大するため、サブスクリプションで使い放題のサービスをさらに拡充。Android搭載STBのような端末の拡大も図る。第3段階としては、今年後半開始予定のLTEをネットワークに加え、さらにネットワーク拡充する考えだ。

学生向けの割引サービス「ともコミ学割」も提供する

(記事提供: AndroWire編集部)