スーパーコンピュータの性能ランキングを示すTop500の2011年6月分リストが発表されたが、理研と富士通の「京(K Computer)」が日本としては7年ぶりに首位に返り咲く快挙を成し遂げたニュースを知っている読者も多いことだろう。今回のランキングのポイントの1つは、トップ10のシステムすべてが1PFLOPS (ペタフロップス)以上のスコアをマークしている点で、ランキング全体として大台を突破した記念すべき年でもある。だが米Intelによれば、7年後の2018年にはさらに1000倍の1ExaFLOPS (エクサフロップス)の大台を突破するシステムが登場することになり、これを支えるのが同社のMIC (Many Integrated Core)アーキテクチャだという。

MICはIntelのXeonをベースにしたHPC向けアーキテクチャで、既存のXeon向けアプリケーションをそのままMICへと容易に移行できる点にメリットがあると同社では説明する。MICプラットフォーム最初の製品は「Knights Corner」(開発コード名)と呼ばれ、トライゲートトランジスタが採用される22nm製造プロセスの製品になるという。また一部パートナーに対してはMICソフトウェア開発プラットフォーム「Knights Ferry」(開発コード名)の提供が行われており、ユーリヒ総合研究機構(Forschungszentrum Juelich)、ライプニッツ・スーパーコンピューティング・センター(LRZ)、欧州原子核研究機構(CERN)、韓国科学技術情報研究院(KISTI)が同プラットフォームを使ってパフォーマンスとプログラミングの両面でのMICの有効性を確認したと発表している。実稼働マシンとしては来年ないし再来年以降での採用が最初となるとみられるが、すでにTop500ランキングに登場しているシステムの8割近くがIntelプロセッサを採用したシステムであり、今後もこの傾向は続く可能性は高い。

昨年11月に公開された「Knights Ferry」のサンプル拡張ボード

なおIntelによれば、現状でPFLOPSクラスに到達したランキングのトップマシン群は、2015年までに100PFLOPS、2018年には前述の1ExaFLOPS、2020年には4ExaFLOPSにまで到達することになるという。さらに1システムあたりのプロセッサ数は2013年までに100万個、2015年までにはその倍、2020年には800万個に達するという(現状の「京」はプロセッサコア数ベースで約55万個)。こうした問題の1つは電力効率で、例えば中国最速の「天河一号 A」がエクサフロップス級のパフォーマンスを実現するには1.6GW、約200万世帯分の電力を賄える消費電力に匹敵する。こうした問題を解決するのはスケーリングと同時に、新プロセス導入による消費電力の低減、エネルギー効率のさらなる向上といった複数の取り組みが必要となるようだ。