インテルは10月6日、米本社よりエコ・テクノロジー部門 本部長のローリー・ワイグル氏が来日したことにあわせ、同社のグリーンITへの取り組みに関する説明会を開催した。Intelの持つテクノロジがどのように省エネや環境負荷低減に貢献できるかが紹介されたほか、Intel自身の環境への取り組みも合わせて説明された。

米Intel エコ・テクノロジー部門 本部長のローリー・ワイグル氏

ワイグル氏は最初に、人類が消費するエネルギーがどのくらい地球に負担を強いているのかを示したグラフを提示した。現在、1年間に地球1.5個分のエネルギーが消費されているとのことで、その量は将来にわたって増加傾向にある。地球の人口増加や新興国が先進国並の生活水準を求めるといったように消費傾向がこのまま続くと仮定すれば、21世紀半ばには地球2個分のエネルギーにまで増大するとグラフでは予想している。この状況を打開するには"行動"が必要とされるが、ワイグル氏は「スマートな行動」を提唱する。過去の生活水準に戻すことで解決するのではなく、テクノロジを活用することで、資源の消費を抑えつつ、生活はより豊かに保ちつつ環境負荷を軽減することができるというのだ。

テクノロジを活用した「スマート」な行動によって環境負荷を軽減しつつ豊かな生活を実現できる

さて、ITが地球に与える負荷は、負荷全体の2%であるという。こうして見ると小さな数字だが、同氏は2%という数字自体をエネルギー効率の改善で削減できるとともに、残りの98%部分の省エネに対してもコンピューティングを利用することで削減を手伝うことができると主張する。同氏はこれを「スマート・テクノロジー」と呼んでいる。同氏がスマート・テクノロジーの要素として挙げたのは、建物や家庭、水、災害等の異常事態、道路交通といった4分野。今回は特に建物や家庭について重点的に説明した。

ITはそれ自身の環境負荷を軽減するだけでなく、IT以外の部分の環境負荷軽減にも貢献する

スマート・テクノロジーの4分野

家庭におけるスマート・テクノロジーの鍵となる新デバイスとして同氏が挙げたのが「家庭内ディスプレイ(IHD)」だ。Intelは先日、IHDのリファレンスデザインを発表している。Atomをベースに家庭内における消費電力を視覚化、管理、そして削減するための表示デバイスだ。とはいえIHDをプッシュするものの、IHDでなくとも家庭内にはPCが浸透しており、PCのディスプレイや(PCと接続、あるいはPCを内蔵した)テレビなど、どのインタフェースでも構わないとし、さらにどのインタフェースにもIntel製品は入っているとし、家庭用エネルギー管理システムにIntelが大きく関与する姿勢を紹介した。

IHDを含む様々なデバイスによって、エネルギー消費量を管理するとともにその状況を利用者に伝える

次はオフィスでのスマート・テクノロジー。オフィスビル内の総エネルギー消費量の30%はテナント内の従業員の人々がコントロールできる部分とされる。この部分での省電力を実現するひとつの方法として挙げたのは、そのビル内で働く従業員に対してエネルギー使用量を伝える仕組みだ。そこでパリのあるビルで行われた「POEM(Personal Office Energy Manager)」と名付けられたプロジェクトについて紹介した。このPOEMアプリケーションの画面にはいくつかの花が表示されており、例えば、PCのパワーマネジメントをオンにし未使用時には省電力モードに移行するよう設定した際には、その行動が「良い選択肢」と解釈され画面上の花が咲き、逆に冬にオフィス内の暖房設定をあまりに高く設定したような場合は、非効率な選択として画面上の花は枯れてしまう、といったことが起こる。また、このPOEMではオフィス内の各所で用いられるPCをひとつひとつのセンサーとして利用できるとされる。ノートPCを持ち、オフィス外へと移動すれば、その間オフィスでは「利用者が不在」と感知し、照明を落としたりエアコンの温度設定を下げたりすることができるという。また、POEMでは「vPro」の管理技術も活用されており、電源のオン・オフに関わらずPCをセンサーとして活用できるとのことだ。

ビル内の従業員に自分の行動が環境に優しい選択なのか負荷を与える選択なのかという情報を花という生命に例えて伝える「POEM」プロジェクト

このほか、スマートグリッドにも触れている。スマートグリッドというと電力会社の管轄のように思えるが、ここにもIntelのテクノロジが関わる場所があるという。ワイグル氏はその例としていくつかの点を挙げた。まずは発電機のハードウェア。風力発電のタービンや太陽光発電のアレイでは一般的に10個ないし16個のマイクロプロセッサが利用されているとのこと。次は発電と充電、双方向で電流を扱うスマートグリッドで、高度なスマートグリッドではインテリジェンスなグリッド制御のためにサーバが必要になるとのこと。また、風力発電を効率化するために季節や時間による風をシミュレートする際にはHPCが活躍する。そして地域のスマートグリッドでも、例えば電気自動車を電池として活用するといった場合、その充電を電力消費のピーク時間帯から外すようなことが必要となってくるが、各コミュニティで異なるピーク時間帯を分析・制御する際にもまた高性能なプロセッサが必要になるとの考えを示している。

このほか、Intel自身の環境への取組に関する説明もあった。再生可能エネルギー(グリーン電力)の購入や自社でのソーラー発電、独自の温室効果ガス削減目標の設定、グリーンビル、ゴミ削減とリサイクル、製品自体の省電力化とリードフリーやハロゲンフリーといった環境負荷の軽減、そしてプロセッサ生産時には特に重要となる水の保全など。とくに興味深いのはIntel社員の行動喚起という点。社員が考えるエコ・アイデアプロジェクトや、環境保護問題の解決に取り組む社員チームへの表彰などが行われているとのこと。とくにここ3年は写真ひとりひとりの環境への取り組みを賞与にも反映させているとのことだ。こうしたプログラムはグローバルで行われており日本でも適用されるが、国内では特に燃費に優れる社用車の採用や、オフィス間の移動を抑制するためのビデオ会議、在宅勤務の仕組み、そして日本独特なものとしてインテルだけにとどまらないサプライヤーとの共同プログラムを挙げているとのことだ。