これまで遠藤教諭は、寸劇を活用した技術者モラルの学習に取り組んできた。

化粧品会社が売り出した新製品に対して、赤い発疹が出るという苦情が消費者センターに寄せられたというテーマで、企業のそれぞれの役職や立場で議論を戦わせる寸劇を生徒に行わせるというものだ。だが、シナリオ作成や役柄決定、演劇の練習などのほか、生徒の議論の修正なども必要になること、寸劇に参加する人数が限られることなど、時間や労力がかかる割には効果が少ないというのが実状だった。これを技術者モラルゲームに置き換えることで、生徒全員が同じ環境で参加でき、より効果的なシミュレーションが可能になるとする。

「PCによる授業は、自分自身が先に進めていかないと終わらない。人任せにはできなくなるため、本気で授業に取り組むことになる。また、個人によって設問を変更可能なため、理想的な個別学習を実現できる一方で、協同学習にも生かせると考えている。40人の生徒が高い意識を持って授業に参加することができるようになる」とする。

企業にありがちなシーンが示され、最適な行動を自ら判断する

ゲームの途中で、お互いのPCを見せあいながら、考え方を共有したり、意見を戦わせたりといったことも行っている。「企業においては、自分の意見が通るとは限らないということも体験できる」と、協同学習の成果を強調する。

技術者モラルゲームでは、タブレットPC「HP EliteBook 2730p Notebook PC」を活用している点も特筆できよう。質問に対して、ペンタッチで答えることでゲームの進行をスムーズにもできるほか、画面を回して、自分の状況を相手に見せて、意見をもらうといったことも行いやすい。

設問はペンでタッチして回答する形式としている

スクリーンをひっくり返してタブレットPCならではの使い方をする生徒たちが多い

「一般的なPCでは、机の向こう側の人に説明ができない。これらのゲームで相手を説得するためには、画面を共有する必要があり、話し合いや討議のツールとして、画面を倒して見せられるタブレットPCは有望なツールと考えている」と、遠藤教諭は語る。

スクリーンを別の生徒に見せて、意見を共有する生徒もいた

新たな教育ゲームの開発も進行中

現在、遠藤教諭は、新たな教育ゲームとして「企業内相互作用体験ゲーム」を開発しているという。

これは生徒が企業と消費者に別れてゲームを行うもので、「その過程において購買行動の誘発や、事件が起こった際の説得などの場面を設けている。このようなシーンで、画面を共有するなどタブレットPCならではの有効な活用方法を試行している」とする。

また、コンセプトマップ(概念地図)を描画させることで人間関係を整理。状況を把握させるという授業を行っており、この描画にタブレットPCを活用する準備を進めているという。「考えを一枚の図でまとめる訓練になるのがコンセプトマップ。PCを活用することで、ログが残り、思考過程を分析できる。これは紙ではできないことであり、きめ細かい指導をする上で、PCは非常に役立つと考えている」とする。

これらの経験をもとに、今後はその他の科目においてもタブレットPCを応用することを模索中であり、新年度には新たな教材を開発したいとしている。

科学技術高等学校は、ペンで入力したり、別の生徒と画面を見せあうことで情報を共有しやすいという、タブレットPCならではの活用にも力が注がれている。タブレットPCが生み出す教育成果が期待されるところだ。

技術者モラルゲームに続いて、タブレットPC「HP EliteBook 2730p Notebook PC」を使って技術者倫理調査も実施