オンラインサービスとの統合という点では、Appleが「MobileMe」を投入してきたことも大きい。MobileMeは、実質的にはExchangeホスティングサービスであり、このようなサービスはむしろマイクロソフトからもっと早く出てきてほしいところである。

「MobileMeをAppleが提供したということは、メッセージングサービスが重要であることを彼らも認めたということだと思いますが、それは我々の得意なエリアですので、よくぞ入ってきてくれたという思いです。マイクロソフトでは、自社のサービスとして『Exchange Online』をワールドワイドで提供することを、海外では既に発表しています。メッセージングサービスにはしっかりとしたインフラ投資が必要で、マイクロソフトではこれまでケタ違いの額をつぎ込んできました」(同)

越川氏は、マイクロソフト自らが手がけるサービスでは、より堅牢で高機能なものが実現し、いずれそれがコンシューマーにとっても魅力的な形で使えるようになっていくと、今後の方向性を説明する。

「あくまで将来的なお話ですが、ExchangeのアカウントとActiveSyncができるだけでなく、ISPのメールなども統合的に表示したり、アカウントと連動した個人ポータルなども実現していきたいと思っています。マイクロソフト全社として取り組むS+S(Software plus Service)戦略の中で、我々が持っているテクノロジーの多くが今後ネットワークに上がっていくことになりますので、コンシューマー向けにも提供できることは多いと思います」(同)

Windowsでライフスタイルに"化学反応"を

9月末から開催される見本市「CEATEC JAPAN 2008」で、マイクロソフトはコンシューマー向けWindows製品の新展開について発表を行う予定だ。その中ではWindows Mobileも、Windows Vista、Windows LiveとともにWindowsブランドを構成する大きな柱のひとつに位置付けられている。

CEATEC JAPAN 2008事前説明会では、Windows Mobile、Windows Vista、Windows Liveを各デバイスブランドの上位概念として、「Windows」ブランドを打ち出す戦略が発表された。これまで個別に展開してきた、製品郡を統合し、シームレスなプラットフォームとして提供していくとしている

「携帯電話は、S+S(Software plus Service)を具現化するのにとても適したデバイスであると考えています。Windowsが一般のユーザーの"生活"に入ったときに、どういうライフスタイルの変化が起きるか、"化学反応"が起きるか、その一端をCEATECでお見せしたいと思います」(越川氏)

モバイルデバイスとサービスとの連携について、具体的な内容はCEATECでの発表を待つことになるが、そのイメージを越川氏は次のように説明する。

「iTunes StoreやGoogleの検索のようなものは既にありますが、どちらかというと、ダウンロードして個人的に利用する性質のものがモバイルでは多いと思います。我々は、携帯で取った写真をネットワークに上げて共有する、携帯をコミュニティデバイスとしてSNSなどを利用するといった、ダウンロードだけでなくアップロードを組み合わせたシナリオが、コンシューマーにとっては特に重要だと考えています」

くしくも、8月末にはAdobeが写真共有を中心としたオンラインサービス「Photoshop.com Mobile」を発表しており、今後Windows Mobile向けにクライアントソフトを提供していくとしている。ネットワークの向こう側にある機能とモバイル機器が連携することで実現されるというサービスの形は、確実に時代の潮流となっている。そこで、あらゆるアプリケーションに柔軟に対応できるWindowsであることが強みになるという。

「各社から次々にサービスやアプリケーションをご提供いただいているのは、我々のプラットフォームに対する期待が高いということだと思っています。そういった製品で付加価値を提供できるスペースは、通常の携帯電話よりWindows Mobileのほうが広いと考えています。他のオープンプラットフォームと比べても、Visual Studioを使っている開発者はAppleやAndroidよりは多いでしょうし、業務アプリもWindows Mobileのほうが多い。今後はコンシューマー向けにもサービスやコンテンツを提供していくとなると、そのような優位性が生きてくると思います」(同)