KDDIは、モバイルWiMAXの事業化を目的とした「ワイヤレスブロードバンド企画株式会社」を設立、新たに割り当てられる2.5GHz帯の周波数帯による事業免許の取得を目指していくと発表した。新会社の出資者にはKDDIに加えて米Intel、JR東日本、京セラ、大和証券、三菱東京UFJ銀行が参画する。

新会社の社長となる田中孝司氏(一番左)と出資者の代表。左から京セラの中村昇会長、インテルの吉田和正共同社長、KDDIの小野寺正社長、JR東日本IT・Suica事業本部長・常務取締役の小縣方樹氏、大和証券グループ本社・取締役兼専務執行役の日比野隆司氏、三菱東京UFJ銀行常務執行役員・営業第二本部長の亀井信重氏

新会社は、18日時点の資本金は2億7,420万円で。KDDIがすべての株式を保有しているが、27日までに8億5,000万円に増資を行うとともに、KDDIの出資比率を引き下げる。増資完了時の出資比率は、KDDIが32.26%、インテル キャピタル、JR東日本、京セラがそれぞれ17.65%、大和証券グループ本社が9.8%、三菱東京UFJ銀行が5%となる。代表取締役社長にはKDDIの田中孝司氏が就任する。

現在総務省は、新たな無線ネットワークサービスの実現に向け、2.5GHz帯を開放する政策を進めている。そのうち、移動通信サービス向けに30MHz幅ずつを最大2社に割り当てる方針だが、既存の第三世代携帯電話サービスを展開する事業者とそのグループ会社以外が割り当て対象になっており、基本的には新規事業者の参入を促したい考えを示している。

それに対して既存事業者はいずれも割り当てに意欲を示しており、総務省が示したいわゆる「3分の1ルール」では、既存事業者の出資比率が3分の1以下の事業者であれば申請が認められているため、各社ともさまざまな企業との連携を図り、申請に向けた準備を進めているところだ。

今回KDDIでは、Intel、JR東日本らと共同で新会社を設立、申請の要件を整えたうえで、新会社で総務省に免許申請を行う考え。割り当てられる新規周波数帯では、国際規格IEEE802.16eにもとづくモバイルWiMAX技術を活用した無線ブロードバンドネットワークサービスを事業化する方針だ。

これまでKDDIは、携帯電話、無線LAN、モバイルWiMAX、固定といった複数の通信網を組み合わせた「ウルトラ3G構想」にもとづき、モバイルWiMAXの実験を2005年から行ってきた。標準化団体のWiMAX Forumのボードメンバーとしても参加しており、モバイルWiMAXに深く関与してきた。

モバイルWiMAXの特徴

WiMAXではForumが機器の認証を行い世界中で相互接続性が確保できるため、日本メーカーでも世界で製品を販売できる

モバイルWiMAXサービスを展開するために必要な2.5GHz帯の免許申請をKDDI1社で行うことはできないことから、Forumで付き合いの深いIntel、「鉄道のブロードバンド化」を目指し顧客へのサービス向上などを図りたいJR東日本、KDDIの筆頭株主の京セラらを引き込み、新会社が設立された。

顧客ニーズとデバイスの動向が一致しており、新会社ではモバイルWiMAXの市場の早期の創出を狙う

Intelでは、まずはノートPC、UMPCへのWiMAXチップ内蔵を進め、その後デジタル家電などにも拡大していく見込み

新会社には、これまでKDDIが培ったモバイルWiMAXの技術だけでなく、携帯電話事業で培ったエリア展開、通信品質などのノウハウを投入。WiMAX技術の旗振り役の1社でもあるIntelが参加したことにより資金面、事業面での体制を強化。さらに米国で2008年からモバイルWiMAXサービスを開始する予定の米Sprint Nextelと連携、国際ローミングの早期実現も可能にした点などを他社に対する強みとして挙げる。

Sprintとの連携による米国での国際ローミングを皮切りに、アジア、ヨーロッパでもローミングを実現していく考え

新会社の強み

設立会見では、免許申請前ということで詳しい事業内容などは語られなかったが、「日本におけるワイヤレスブロードバンド市場を創出する」「日本の情報通信市場の発展、活性化に寄与する」といった免許申請を意識したと見られるビジョンが示されており、10月12日までに総務省に申請を行う予定だ。

将来ビジョン